「定礎」の読み方と意味とは? マンションやビルの入り口で見るこの中には何が入っている?

ビルやマンション、学校などの大きな建築物を見てみると「定礎」と書かれた御影石や銘板(プレート)が設置されており、何と読むのか、設置されている理由などが気になっているという人も多いのではないでしょうか。

すべての建築物に設置されているわけではないため、何らかの法律に基づくものなのか気になるところです。

この記事では、定礎の読み方や定礎の中に何が入っているのか解説し、よくある疑問や質問にお答えします。

 

定礎とは

定礎(読み方:ていそ)とは「建築の着工に際して礎石を据えること」と小学館のデジタル大辞泉に記載されています。

具体的にはマンションやビル、学校といった比較的大きな建築物に対して設置されている御影石や銘板(プレート)を指します。定礎の設置場所は正面玄関付近や南東側が一般的で、腐食を防ぐために御影石やステンレス、銅といった素材でできています。書体や文字の大きさも、デザインもさまざまです。

定礎については特にルールが定められておらず、頻繁に設置するものでもないため、あえて個性豊かな定礎を設置する人もいます。その結果、今では個性的な定礎を探し求めるマニアも現れるようになりました。

定礎が設置されるタイミングは、建築の最後の日となるのが一般的です。定礎に記載されている日付は、竣工日、つまり工事が完了した日が記されています。

 

定礎を据える意味

画像は静岡県庁西館のもの

定礎に含まれる「礎」という漢字は「いしずえ」と読みます。礎とは、建物の柱や壁などの下に土台となる石を据えることや据えられている石そのものを意味します。

建築物に対して使用されていた言葉が、現代では物事の基礎となるものや基礎となる人などを表すようにもなっています。たとえば、「全国大会の常連校となった我が校の礎を築いたのは○○監督だ」という使い方です。つまり、建築物にとっての礎とは、建築物の基礎となる重要な石のことで定礎とは礎を定めるということを意味しています。

定礎を設置するという慣習は日本で生まれたものではありません。古代ギリシャや古代ローマでは、石を使った建造物を数多く建築しており、着工の際に建物の礎に印をつけて安全や繁栄を祈っていたと言われています。

日本でも開国によって、ヨーロッパのレンガ造りや石造りなどの文化が取り入れられるようになり、明治時代には定礎が行われるようになったとされています。

かつて建築の安全や繁栄を祈って建築の着工時に行われていた定礎ですが、現在の日本は建築の着工時に行われる地鎮祭が安全祈願の役割を担っているので建築前に定礎が設置されることはありません。

定礎を設置する定礎式は、着工時ではなく建築完了を意味する竣工時にしつつあるのが現状です。

 

定礎の中身

定礎はただの石またはプレートではありません。定礎には、定礎箱という箱が埋め込まれているケースが多く、定礎箱には以下のような資料が入っています。

・土地を守る氏神様のお札
・建物の図面
・会社の社史
・施主の名前
・建築会社名

何を入れなければならないという明確な決まりはありません。そのため、建築物が完成した思い出として、当時の新聞や紙幣・硬貨、写真などをタイムカプセルのように入れておくケースもあります。

定礎箱に入れたものはいつ見ることができるのでしょうか。実は定礎の中身を簡単に見ることはできません。定礎を見られるのは建物を解体するときだからです。

学校やビル、マンションなどの中には、修繕を経て100年以上残っている建物もあります。定礎の中身を見る機会はほとんどないでしょうが、定礎の設置されている建物を見かけたときは、記載されている日付を見ながら定礎箱にどのような思い出が封入されているのか想像してみるのも面白いです。

 

定礎についてのよくある疑問・質問

マンションやビル、学校などが近くにある場合には定礎を見かける機会もあるかもしれませんが、定礎について詳しく知る機会はそう多くはありません。

最後に、定礎についてもっと詳しく知りたい人に向けて、定礎についてのよくある疑問・質問にお答えします。

定礎に刻まれた日付は何を示している?

定礎に刻まれている日付は、竣工日を表していることが一般的。竣工日とは、建物の建築が完了した日のことです。

しかし、定礎に何を記載しなければならないというルールはないため、定礎に書かれている日付が従来通り建物の建築を開始した日(着工日)を表している場合もあります。

また、施主の名前や工事に携わった建築会社の名前が刻まれていることもあるのです。

定礎に対しての法律的な義務はあるの?

定礎に対しては法律的な設置義務がありません。また、定礎にどのような情報を刻まなくてはならない、定礎箱には何を入れなくてはならないといった決まりもないのです。

慣習的な意味合いから、定礎の設置や定礎式が行われています。

 

まとめ

定礎(読み方:ていそ)は「礎を定める」と書きます。

礎には本来物事の基礎となるものや基礎という意味があります。そのため、古代ギリシャや古代ローマでは、定礎式という建築工事の無事と繁栄を祈った儀式を建築工事の着工時に行っていました。

あくまでも慣習として定礎が残っているだけなので、特にルールが定められているわけではありません。個性豊かな定礎も多数設置されており、個性的な定礎を求めるマニアも現れるようになりました。

定礎の中には100年以上も前に設置されたものもあります。定礎に入れられている定礎箱の中には、当時の思い出が封入されているケースもあります。

定礎箱の中身は建物を解体するときにしか見られませんが、古い定礎を見かけたときにはどのような時代を駆け抜けてきた建物なのかを想像してみるのもおすすめです。

 

(最終更新日:2021.08.25)
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