集合住宅の騒音トラブルを未然に防ぐ! 管理会社まかせにしない予防法

マンションなどの集合住宅では、さまざまな入居者間トラブルが発生しがちです。トラブルによっては解決までに時間がかかる場合もあり、できることなら巻き込まれたくないものです。入居者間トラブルの代表格といえば騒音問題。騒音問題の実態を知っておくと、トラブルの未然防止に役立ちます。本章では騒音問題についてとトラブルを未然に防ぐ方法について解説します。

入居者間トラブル最大の理由が「騒音」

マンションをはじめとする集合住宅では、分譲、賃貸に関わらず入居者間のトラブルが一定数起きてしまいます。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」には、マンショントラブルの発生状況が示されています。これによると、特にトラブルがないマンションは全体の2割程度しかなく、8割のマンションでは何らかのトラブルが発生していることがうかがえます。

入居者間トラブルにはさまざまなものがありますが、調査結果によると、最も多いのが「生活音」で38%を占めています。次いで「違法駐車・違法駐輪」が28.1%、「ペット飼育」が18.1%、「共用部への私物の放置」15.1%となります。

この調査は5年ごとに行われています。過去3回の調査を比較すると、生活音以外のトラブルは減少傾向にあるのに対し、生活音トラブルは最新の調査で増加に転じています。在宅ワークが推奨されるなか、日中も自宅で過ごす人が増えているため、騒音トラブルは今後ますます増加するかもしれません。

(出典)平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状

法的に問題となる騒音のレベルとは

通常の会話はおよそ50デシベル

日常生活を営むうえで、いっさい音を出さずにいることはあり得ません。ある程度の生活音はお互い様のはずです。しかし、音に対する感じ方には個人差があります。騒音問題の難しさは、ある人にとっては騒音に感じる音も、別の人にとってはそれほど気にならない場合があるなど、人によって不快感をおぼえるレベルが異なるところにあります。

では、どのようなレベルに達すると、騒音に認定されるのでしょうか。騒音が法的に問題となるレベルかどうかの線引きは、「社会生活を営むうえで我慢するべき限度」になります。その基準の一つに、環境省の「騒音に係る環境基準」があります。

これによると、「騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の健康の保護に資するうえで維持されることが望ましい基準」として、昼間の住宅地で55デシベル以下、夜間が45デシベル以下と定められています。ただし、この基準は用途地域や道路に面しているかどうかによって変わります。

住宅地の場合でも、2車線以上の車線を有する道路に面する地域は昼間が60デシベル以下、夜間が55デシベル以下になります。60デシベルの音がどれくらいかというと、走行中の乗用車の車内や1mの距離での洗濯機、掃除機、テレビ、トイレの洗浄音などが相当します。声を大きくすれば会話ができるレベルです。

50デシベルの音は、静かな事務所、家庭用クーラーの室外機、1mの距離での換気扇の音に相当し、通常の会話が可能なレベルです。40デシベルの音は、市内の深夜や図書館、静かな住宅地の昼に相当し、支障なく会話ができるレベルとなります。

(出典)環境省 騒音に係る環境基準について

騒音トラブルを未然に防ぐ

マンションでの騒音トラブルに巻き込まれないようにするために、物件選びをはじめ入居前に準備しておきたいことや注意点などがあります。とくに分譲マンションを購入した場合は、入居後に手放すのは難しいため、準備は慎重に行いたいところです。

建物の構造をチェック

集合住宅では、構造によって防音性に違いが出ます。物件を選ぶ際は、構造が「木造」「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」のどれにあたるのかを確認しましょう。一般的には後者に行くにしたがって防音性に優れているとされています。また、分譲マンションの場合は一般的な賃貸物件よりも壁や天井、床材にグレードの高い建材が使われることが多く、遮音性が高くなります。マンションを借りる際は、分譲マンションの賃貸物件を選ぶのもひとつの手です。

マンションの場合はほとんどが「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」になりますが、賃貸アパートの場合は「木造」「軽量鉄骨造」「重量鉄骨造」の物件も少なくありません。遮音性が低い物件では、騒音トラブルの被害者になる可能性だけでなく、加害者になる可能性もあるので物件は慎重に選びましょう。

角部屋や最上階を選ぶ

上階や隣室からの騒音に煩わされないように、最上階や角部屋を選ぶのも良いでしょう。また、エレベーターや階段付近などの部屋は、足音や機械音が響きやすいので、静かな環境を求める人は避けた方が無難です。逆に、子育て世帯やペットを飼っているなどで、自分たちが音を出す懸念がある場合は1階を選ぶことで下の階からの苦情を受けずに済みます。

内見の際に音の響きをチェック

物件の内見時に音の響きも確認を

賃貸物件や中古マンションの場合は、内見の際に上階や隣室からの生活音の状態を確認しておきましょう。玄関ドアやベランダ扉などの開閉音、階段や廊下の足音がどのくらい響くか、トイレや水回りの音なども可能であればチェックしておくと良いでしょう。マンション内の音だけでなく、近隣店舗や道路環境など付近の音の状況も確認しておきたいポイントです。また、内見は昼どきに行うことが多くなりますが、他の入居者が帰宅している夜の時間帯の様子も確認しておくことをおすすめします。

共用部分の管理状況をチェック

エントランスや駐輪場、階段、エレベーター、廊下、ゴミ置き場などの共用部分も忘れずにチェックしておきましょう。これらの共用部の清掃や整理が行き届いていない物件は、管理組合や管理会社、オーナーなどの管理体制が機能していない可能性があります。こうした物件では、入居後に騒音問題をはじめとする入居者間トラブルに巻き込まれた際に、きちんと対応してもらえないかもしれません。

仲介会社に質問する

不動産仲介会社の店頭や、内見時に物件の騒音対策について質問するのもおすすめです。過去および現在の入居者間における騒音トラブルの有無を確認することで、その物件の状況がある程度把握できます。すぐに回答が得られない場合があるかもしれませんが、仲介会社から管理会社やオーナーに確認を取ってもらって、納得の得られる回答を待ちましょう。中古マンションを購入する場合は、同様の確認を売主に行っておきましょう。

「ひとつ屋根の下で暮らしている」という気持ちを

日ごろの挨拶が円滑なコミュニケーションを生む

マンションやアパートなどを一般的に「集合住宅」と呼んでいますが、実は建築基準法では「集合住宅」という言葉はありません。建築基準法第2条では「共同住宅」と定められています。共同住宅に住むからには、住人たちは共同で生活しているという意識をもつことが必要です。

入居の際には上下階と両隣に挨拶をし、普段も顔を合わせたら挨拶するなど、近隣住人と円滑なコミュニケーションをとっておくことも大切です。良好な関係が築けている近隣住人は、災害時などに助け合える心強い存在にもなり得ます。基本的なマナーを守り、近隣住人と上手に付き合うことで、大きなトラブルに発展するリスクは減少します。

まとめ

騒音トラブルは、こじれてしまうと解決が難しくなります。上記を踏まえて、できるだけ騒音トラブルに巻き込まれないようにするのが一番です。集合住宅での新しい生活を快適に過ごしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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