2021年5月18日に家計調査(貯蓄・負債編)における2020年の年間平均データが総務省から公表されました。概要を紹介するとともに、主なポイントを見ていきましょう。

貯蓄残高(平均値)は1,791万円で2年連続の増加

まず、家計調査(貯蓄・負債編)によると、2020年の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値:2人以上世帯)は2年連続増加して、1,791万円(前年より36万円増加)でした。全体の中心である中央値でも、1,061万円(前年比28万円増)とコロナ禍でも貯蓄額は増加しています。

2月に公表されている家計調査(家計収支編)のの2020年平均によると、2020年の世帯主収入はコロナ禍の影響も受け、前年比1世帯当たり年間約7万6,000円減りましたが、一方で10万円の特別定額給付金もあり、可処分所得(=個人所得から税金や社会保険料などを引いた残りの使えるお金)は1世帯当たり年間約26万円増えています。

また、内閣府が公表した4~6月期の家計貯蓄率は21.8%(季節調整値)と1994年以降で最高となっていることからも特別定額給付金が、支出ではなく貯蓄に回っていたということが改めてわかりますね。

ただ、全体として見ると、貯蓄残高・貯蓄率は増加していますが、貯蓄現在高の階級別世帯分布では貯蓄現在高の平均値(1,791万 円)を下回っている世帯の割合は67.2%(前年は67.9%:2人以上の世帯)と平均以上の預金残高を持つ世帯は3割程度しかありません。依然として貯蓄できる世帯とできない世帯の二極化が進んでいる状況がうかがえます。

勤労者世帯の負債残高は減少したものの、純貯蓄額は減少

負債つまり借金についても見てみましょう。家計調査(貯蓄・負債編)によると、負債残高(平均値:2人以上の世帯のうち勤労者世帯)は851万円で、前年に比べて0.5%(約4万円)減少しています。

負債残高の年間収入に対する割合(負債年収比)でも前年に比べて1.2ポイント減少、 負債保有世帯の割合も54.3%と前年に比べ1.0ポイント低下しています。住宅・土地のための負債が前年比で 0.9%の減少していることから、コロナ禍で住宅購入の予算を減らしたり、あるいは購入を見送ったことが主な原因と考えられます。

勤労者世帯全体での負債残高は減少していますが、気になる点もあります。純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)も減っているからです。まず全体では、50歳以上の各年齢階級では貯蓄残高>負債残高ですが、50 歳未満の世帯では負債残高>貯蓄残高となっており負債超過状態です。なかでも注目したいのが、年齢階級別の純貯蓄額の変化で、

・40歳未満では、純貯蓄額が2015年の−334万円に対して2020年では−536万円
・40~49歳では、純貯蓄額が2015年の−44万円に対して2020年では−150万円

とマイナス幅が大幅に増加しています。特に勤労世帯でリーマンショックやコロナ禍に代表される、いわゆる世の中に不測の事態が起きたときの家計の余裕が大幅に減ってしまっているといえるでしょう。ここでも世帯での二極化が進んでいることがわかりますね。

家計の中のエンゲル係数は増加

家計の中の貯蓄・負債には直接関係ありませんが、家計の可処分所得が増え、コロナ禍で支出が減る中で、エンゲル係数が急上昇していることも注目です。エンゲル係数というのは、家計の消費支出に占める食料費の割合で、特に2020年には、対前年比2.1ポイント高と26.0%(「家計調査」勤労者世帯ベース)にも上昇しました。

これは定額給付金の支給で可処分所得が増えた一方で、旅行費入場・観覧・ゲーム代等の教養娯楽費交通費や宿泊代世帯主のこづかいスポーツ月謝等が減ったのが原因と考えられます。ただ、この点については、ワクチンが普及して通常の経済活動モードに戻るにつれて、通常に戻っていくと考えられます。

自分の家計の中のエンゲル係数の変化も調べてみると家計の消費傾向がわかって家計の見直しのヒントが見つかるかもしれません。

投資余力のある家計とない家計で、ますます資産額の格差が進む可能性も

家計調査では、世帯の投資動向も把握することができます。貯蓄の種類別現在高割合を見ると、貯蓄残高が低い階級では、普通預金等の割合が高くなっている一方で、貯蓄残高が最も高い階級の世帯での有価証券の割合は約2割と投資割合が高くなっています。
 
一般的に、景気悪化・相場の下落局面では家計に余裕がある世帯ほど将来の値上がりを期待して投資に回す傾向にあります。実際にコロナ禍では大手ネット証券会社の口座数が大幅に増え、つみたてNISAの2020年末時点の口座数は1年前から約60%増加、買い付け額も約131%も増加しており、コロナ禍による急落をきっかけに、株式など有価証券に投資をする人が増えていることがわかります。

コロナによる急落後、日経平均株価は30年ぶりに3万円台をつけるところまで、米国株式市場でもナスダックが過去最高値をつけるところまで急回復していることを考えると、すでに投資資産を保有している世帯やコロナ禍で投資余力があった世帯と投資余力がなく、預貯金や定期預金しか持たない世帯の資産額の格差がますます広がってしまう可能性が高いですね。これは家計に余裕がある世帯ほど、金融リテラシーが高い傾向にある点も関係しているでしょう。

家計調査などの統計データは直接、自分の家計の参考になるわけではありませんが、世の中の動向、経済的な背景を重ね合わせてみることで、今後の自分の家計や投資に対する行動のヒントが見つかるかもしれませんね。

参考:総務省「家計調査(家計収支編)調査結果」「家計調査(貯蓄・負債編)調査結果

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