「固定資産税」払い過ぎていませんか? 課税額が間違っていたケースと注意点

戸建て、マンションにかかわらず、住宅を購入すると、固定資産税が課税されます。毎年1月1日時点での不動産所有者が納税義務者です。固定資産税は地方税なので、各市町村(東京都23区内は都)から毎年4~6月ごろに納税通知書と振込用紙が郵送されます。しかし、通知書が届いたらそのまま支払っている人がほとんどではないでしょうか。税額が間違っていることもあるので、払い過ぎていた人もいるかもしれません。

不動産所有者の500人に1人、固定資産税額に間違い

2012年8月28日に総務省が発表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、2009~11年度の3年間で、税額修正した、つまり間違った通知内容のまま納めていた納税義務者が1人以上いた市町村は、調査に回答した自治体のうち97%に上りました。間違いの件数自体は少なくても、かなり多くの自治体で修正が発生していると考えていいでしょう。

出典:総務省「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」

この調査では、納税義務のある人の中で固定資産税額を修正した人の割合も出ており、土地・家屋ともに0.2%となっています。つまり、不動産を持っている人の0.2%、つまり500人に1人の確率で固定資産税が間違って課税されている、という意味です。

固定資産税の間違いを発見した場合、市町村に言えば、その税金は返してもらえます。さらに、固定資産税の間違いは、過去5年から最大20年までさかのぼって返してもうことができます。

税額を間違える原因の一つは評価額の誤り

自治体が固定資産税額を間違えてしまう原因の1つは、ベースとなる固定資産評価額に誤りがあるからです。評価自体の誤りと言ってもいいでしょう。
ここで固定資産税の決め方について説明します。

固定資産税額は、固定資産評価額を基に計算されます。

「固定資産税額=固定資産評価額(課税標準額)×税率(標準税率:1.4%)」

これが計算式です。

固定資産評価額は、家屋や土地の価値について自治体ごとの基準に基づいて評価した値です。家を購入した価格がそのまま評価額になるわけではありません。
各市区町村は、国土交通省が年に1度その土地の売買取引において適正とされる価格を定めた地価公示価格を基に固定資産評価額を決めており、その70%程度が固定資産評価額の目安となっています。

しかし、残念なことに、この固定資産評価額の誤りに気づくのは専門職である不動産鑑定士くらいであり、税理士でも評価額が正しいかどうかを判断するのは難しいといわれます。多くの税理士は、国税を中心に扱っているからです。

不動産鑑定士で北央鑑定サービス代表取締役の堀川裕巳さんに話を伺いました。

「評価の前提条件はたくさんあって、さまざまなところに間違いの種があります。隣の土地と倍違う、道路の向かいの土地と倍違う、ということはザラで、税額が隣同士で何百倍違ってくることさえあります。

たとえば、現在相談を受けているのは法人案件です。35,000平方メートルの敷地の中に、1,000平方メートル程度のゴルフ練習場の建物があります。固定資産評価基準では、その建物が立っている敷地とそれ以外を明確に区分できれば、建物部分は『宅地』で評価してもよいことになっています。明確に区分できなければ敷地全体を『雑種地』として評価しなければなりません。

その町では雑種地は、近傍宅地の半分で評価しています。最初に見た通知では半分(17,500平方メートル)が宅地になっていました。私のアドバイスでお客さんが聞きに行ったら、町側はいきなり宅地を3,000平方メートルまで下げてきました。これで税額が半分くらいになります。しかし、3,000平方メートルでもおかしいのですが」

固定資産税はその土地の利用のされ方や面積、建物が立っているかどうかなどによって税額が変わります。堀川さんが言う宅地や雑種地は、固定資産評価上の土地の用途による区分、すなわち地目と呼ばれるものです。土地登記簿上の地目に関わりなく、1月1日現在の地目によります。土地を取得したときに登記簿上が原野でも、その後宅地として開発されれば、地目が変わり、固定資産税額も変わります。

地方税法第408条には、「固定資産は毎年少なくとも1回は、実地調査しなければならない」という規定があります。しかし、自治体の人手不足もあって毎年の実地調査はほとんどされていないといわれています。

使える特例が適用されていないケースも

固定資産税額を算出する際、住宅用地には特例があります。これは、人が住むための土地であれば(200平方メートルまで)、通常の6分の1に固定資産税が軽減されるというものです(200平方メートル超の場合は3分の1)。

人が住むためというのは、自分が住むためであっても、他人が住むためであっても構いません。つまり、自宅の敷地でも6分の1ですし、賃貸用のアパートの敷地でも6分の1です。

一方で人が住むためではない土地として身近な例では、オフィスビルや駐車場があります。意外なことに別荘も人が住むための土地とは認められません。

何らかの理由でこの住宅用特例の適用対象から外れてしまうと、税額が跳ね上がってしまいます。堀川さんが指摘している、「地目」には注意が必要です。

昨年はコロナ禍で個人経営の店をやむなく廃業された人もたくさんいたと思います。店舗を廃業した場合も、住宅用地の特例を使える可能性があります。店舗兼住居住宅では固定資産税の計算方法が異なります。固定資産税の大きな特徴は、住宅用地に対する軽減が手厚いことです。市区町村には、住宅用地等申告書という書類を提出しないと、住宅用地の特例がされないまま、ずっと高い税金を払い続けることになってしまいます。

分譲マンションを購入した人も注意

登記簿上の土地面積のことを地積(ちせき)と言いますが、古くからその土地に住んでいる人は注意が必要です。明治時代の検地等の古い情報がそのまま登記されていると、実際の地積と登記上の地積が異なっていることもあります。実際の地積が登記上より小さい場合は払い過ぎている可能性があります。

分譲マンションに住んでいる人も評価の誤りと無縁ではありません。マンションの場合は敷地や建物全体の固定資産評価額を住戸ごとに按分することになります。住戸ごとの床面積を元に税額を算出しますが、この床面積が誤っていることがあります。これからマンションを購入する人は、仲介業者や売り主に固定資産評価額を聞いてみましょう。

神奈川県伊勢原市では1973年度から2015年度までの40年以上、分譲マンション22棟計600戸で床面積の計算を誤り、固定資産税と都市計画税を多く徴収していました。原因は、課税床面積に含まないバルコニーを誤って算入していたためです。伊勢原市は1986年度からの利息分を含めた計約1億4,580万円を住民らに返還しました。

なお、マンションにも軽減措置があり、新築の場合、5年間は税額が2分の1になり、さらに認定長期優良住宅の場合は軽減期間が2年間延長されます。こうした軽減措置も適用漏れになっていないか、納税通知書を確認してみましょう。

3年に1度行われる「評価替え」とは

今年2021年度(令和3年度)は評価替えの年です。

固定資産については3年ごとに評価の見直し、これを評価替えと呼びます。資産価格は変動するので、その変動に対応し、評価額を適正な均衡の取れた価格に見直すために行われます。本来は毎年度行われるべきものですが、膨大な量の土地や家屋を毎年見直すのは事実上不可能なので、3年に1度とされています。評価替えの翌年度と翌々年度は、基本的に評価額が据え置かれます。

固定資産税評価額に不服がある場合、自治体が認めなければ、各自治体に設置されている固定資産評価審査委員会に審査を請求することができます。これは原則として3年に1度の評価替えの年にしかできません。また、請求は納税通知書の交付を受けた日から、3ヶ月以内に行わなければなりません。

しかし、制度としては用意されているものの、ほとんど活用されていないのが実情です。

「不服の申し立てをするのは、10万人に1人いるかどうかです。審査の請求そのものは簡単です。申立理由として『評価額が高くて納得できない』と一言書けば済みます。賦課課税ですから、説明責任は課税側にある。自治体は適正に評価して評価額に間違いないということを説明しなければなりません。これを『弁明書』といいます。問題は、その弁明書を読んで納得できなければ、今度は納税者が『反論書』を書かなければなりません。これが専門的なので難しい。税理士でも難しいでしょう」(堀川さん)

堀川さんは、納税者が評価額の時価を争うのはハードルが高いので、納税通知書に少しでも疑問点があれば、取りあえず自治体の税務課に気軽に聞きに行くことを勧めています。

「評価額自体への不服申し立ては3年に1度しかできませんが、課税誤りは評価替え以外の年でも、いつでもできます。『この税額はどう計算されたのですか』でいいんです。評価の前提条件がちゃんとしているかどうかを聞くほうが効率的です。質問に対して丁寧にわかりやすく説明してくれればいいのですが、中には『計算は正しい』としか言わない税務課もあるので、そのときは困りますね」(堀川さん)

固定資産税はマイホームを購入したら、家計の事情に関係なく、毎年払わなければなりません。にもかかわらず、所得税や相続税のような国税には強い関心を持つ納税者は多いものの、地方税の固定資産税には関心が薄いのではないかと堀川さんは指摘します。

誤った税額を放ったらかしにしておくと、毎年毎年、過徴収が続くことになります。

<取材協力>
北央鑑定サービス株式会社
http://www.hok-s.co.jp/

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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