【フラット35】の返済が苦しい… 3つの返済方法変更メニュー、注意点を解説

コロナ下で、主に対面接客の仕事をする人には大きな影響が生じました。なかには、マイホームの住宅ローンの返済に困ったという人もいるでしょう。住宅金融支援機構では、住宅ローンの返済が困難となった人に対し、 【フラット35】の返済方法の変更メニューなどを提示しています。実際に、どういった乗り切り方をした人が多いのでしょう。

まず、住宅ローンの返済方法をおさらいしよう

返済方法の変更について見ていく前に、まず、住宅ローンの仕組みについて整理しておきましょう。

住宅ローンを借りる際には、「借入額」「金利タイプ(変動型や固定型など)」「返済期間」「ボーナス返済の有無」などを選んで、返済プランを決めて融資を受けます。

返済期間は、住宅ローンでは一般的に「最長35年間」とされています。かつ、金融機関によって「完済時の年齢が80歳まで」などの上限を設けています。

また、ほとんどの人が「元利均等返済」、つまり元金と利息の合計を返済期間で均等に割って返済する方法を選んでいます。元金が多い返済当初は利息も多いので、当初の返済額の多くは利息の返済に充てられることになります。

住宅金融支援機構が提示する、返済方法の変更メニューは3つ

では、住宅ローンの返済が困難となった場合、どの部分の返済方法を変更できるのでしょうか? 住宅金融支援機構の変更メニューは、次の3つです。

出典:住宅金融支援機構ホームページより一部抜粋

1つめの「返済特例」はのちほど詳しく説明しようと思います。

2つめの「中ゆとり」は耳慣れない言葉かもしれませんね。「中ゆとり」とは、返済が厳しい一定期間(原則として最長3年間)だけは、返済額を抑える方法です。一定期間が終了すると、軽減した分はその後の返済額に上乗せされることになるので、今は返済が厳しいけれど、コロナ終息後には収入が戻るといった人には有効でしょう。

3つめの「ボーナス返済の見直し」を利用できるのは、ボーナス時に返済額を加算する返済方法を選んでいる人に限定されます。この見直しは、ローンの返済に困ったときに限らず、転職してボーナスの支給月が変わったり、勤務先のボーナスの額が変動したりしたときにも、利用することができます。

例えば、4,000万円のローンの75パーセント(3,000万円)を毎月返済で、25パーセント(1,000万円)をボーナス返済 としていたのを、ボーナス返済を取り止める(0パーセント)、あるいは10パーセントに減らすなどして、毎月返済分のほうを増やす方法です。業績の悪化でボーナスの支給額が減るという人には、効果的な方法です。

返済額を長く抑えられるのは「返済特例」。利用者が多いのは「中ゆとり」

先の見通しが立たないので、長期間で返済額を抑えたいという場合もあるでしょう。そうした人に有効なのが1つめの「返済特例」です。

例えば、元金均等返済で30年間の返済プランの場合、元金と金利の合計を30年間で均等割りします。これを45年間の均等割りにすれば、毎月返済額は下げられます。このように最長返済期間を超えるほど長い返済期間に変更するのが「返済特例」となります。

ただし、利用するには条件があります。次の3つの項目すべてに当てはまり、審査に通れば、「プラス最長15年」かつ「完済時の年齢上限が80歳」まで返済期間を延長することができます。

さらに、現に失業中である場合などでは、返済期間の延長に加えて、最長3年間まで元金据置期間を設定することができます。元金据置とは、元金を返済せずに利息だけを返済することで、返済額をかなり抑えることができます。

なお、返済が30年間の返済プランを最長の35年間に変更する方法は、通常の変更の範囲内で「返済特例」には該当しません。

では、具体例を見ていきましょう。住宅金融支援機構の例示した変更例は以下の図のようになります。

出典:住宅金融支援機構「オンラインプレスセミナー」資料より転載

例1が、当初の返済プランです。例2は、1年間の「中ゆとり」を利用した場合です。1年間の毎月返済額は、以前の9万9,378円から5万3,738円まで下がります。ただし、その後は10万1,797円に上がります。

例3は、「返済特例」で15年延長したうえに3年間の「元金据置」を設定した場合です。3年間は毎月返済額が3万9,077円まで下がり、その後も7万4,776円に下げることができます。ただし、返済期間が50年間になるので、完済予定の年齢が定年後まで延びる可能性があります。また、50年間利息がかかり続けるので、返済しなければならない利息額も増えます。当初のプランよりも約480万円増える試算となっています。

では、返済方法を変更した人はどういった変更をしたのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大して以降、毎月多くの返済方法の変更が承認されています。その内訳は、「中ゆとり」が8割強と最も多くなっています。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける一定期間だけ、返済額を軽減しようと考えた人が多いということでしょう。

グラフ提供:住宅金融支援機構

返済方法の変更をする際の注意点とは

とはいえ、「住宅ローンの返済が苦しくなった」から、即、希望する変更メニューが利用できるとは限りません。住宅ローンを貸している金融機関側も、この先の収入の見込みなども考慮して、住宅ローンの返済を続けられる方法を検討します。 金融機関側も、できるだけ返済を続けて完済してほしいからです。ここでは、住宅金融支援機構の変更メニューを紹介しましたが、金融機関ごとに個別の相談に対応しています。

また、変更メニューが承認されたとしても、返済期間が長くなったり、利息が増えたりする場合には、収入が戻ってから、返済期間を短縮したり返済途中で繰り上げ返済をしたりするなどで、返済方法を再度見直すことも必要です。

たとえ、返済方法の変更だけでは返済を続けることが難しいという場合でも、個人版民事再生法の適用などの選択肢が残されています。最もしてはいけないことは、目先の返済をするために高い金利のローンを借りてしまったり、金融機関に相談することなく滞納を続けてしまったりすることです。

金融庁も金融機関に積極的に相談に応じるように要請していますので、返済が苦しいと思った段階で、すぐに借りている金融機関に相談することをおすすめします。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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