国の調査で改めて「中古の戸建て」ブームが浮き彫りに、価格や広さに注目

国土交通省では毎年住宅を買った人たちを対象に、「住宅市場動向調査」実施しています。このほど、その2020年度の調査結果が公表されました。それによると、中古住宅は新築住宅に比べて価格が安く、広い住まいを手に入れることができることが改めて浮き彫りになっており、コロナ禍で広い戸建てへの関心がさらに高まりそうです。

2019年度には中古戸建て価格が過去最高に上昇

2021年4月28日に発表された「令和2年度住宅市場動向調査」。標題は「令和2年度」(2020年度)となっていますが、調査対象になったのは2019年度(令和元年度)に住宅を取得した人たちです。

その結果について、国土交通省ではその特色として次の3点を挙げています。

1.購入価格は「既存戸建住宅」が2001年度(平成13年度)の調査開始以来、過去最高となり、その他住宅では「既存戸建住宅」以外は、前年度と比較し概ね横ばい

2.住宅選択の理由について「分譲マンション」では「住宅の立地環境が良かったから」を選択する割合が前年度の調査に引き続き、高水準で推移

3.設備等の選択理由について「分譲戸建住宅」「分譲マンション」および「民間賃貸住宅」では「間取り・部屋数が適当だから」を選択する割合が最も高かった

中古戸建ては新築より25%ほど安く買える

三大都市圏で住宅を取得した人たちの購入価格の平均は図表1にある通りです。土地を買って注文住宅を建てた人が5,359万円で、年収倍率6.67倍と最も高く、次いで分譲マンションが4,639万円、5.28倍で続いています。

それに対して、「既存(中古)戸建住宅」は2,894万円、2001年度(平成13年度)の調査開始以来過去最高に上昇しています。しかし、それでも注文住宅や分譲マンションに比べると格段に安く、年収倍率も3.81倍にとどまっています。

同じ戸建てでも「分譲戸建住宅」いわゆる建売住宅は3,826万円で、年収倍率は5.31倍です。中古戸建てなら、新築戸建てに比べて24%ほど安く手に入れることができます。注文住宅の5,359万円に比べると46%も安くなります。

中古の戸建て住宅なら年収倍率も低く、購入後の住宅ローンの返済負担もかなり軽くなるのではないでしょうか。

出典:国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査」

中古戸建て選択理由のトップは価格の安さ

この「中古戸建住宅」と、新築の「分譲戸建住宅」の選択理由を見ると、両者の違いが浮き彫りになります。図表2が住宅の選択理由を複数回答で聞いた結果をグラフにしたものです。

「分譲戸建住宅」では、「新築住宅だから」が64.4%のトップで、次いで「一戸建てだから」が61.7%で続いています。3位は「住宅の立地環境が良かったから」の46.4%でした。

それに対して、中古戸建住宅では、「価格が適切だったから」が56.0%のトップで、以下「一戸建てだから」の47.2%、「住宅の立地環境が良かったから」の45.5%が続いています。中古住宅では、何より価格が適切であること、つまり安くて買いやすいことが選択に当たっての最大のポイントになっているといっていいでしょう。

出典:国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査」

価格の安い住宅だからこそ広さを求める傾向に

価格以外の住宅の設備等に関する選択理由にも、図表3のような違いがあります。

新築の「分譲戸建住宅」では、「間取り・部屋数が適当だから」が68.0%のトップで、「住宅の広さが十分だから」が57.6%の2位です。

対して「中古戸建住宅」はトップが「住宅の広さが十分だから」の78.0%で、2位に「間取り・部屋数が適当だから」が74.0%で続いています。

新築、中古ともに部屋数や広さが重視されている点は同じですが、その割合が特に中古住宅で高くなっています。特に「住宅の広さが十分だから」は「中古戸建住宅」のほうが、20.4ポイントも高く、新築に比べて価格の安い中古だからこそ、一定の広さを求めたいという思いが透けて見えないでしょうか。

新築なら延床面積90平方メートルしか求められなくても、中古一戸建てなら100平方メートル、110平方メートルが可能になるかもしれません。

出典:国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査」

中古の土地面積は新築より60平方メートル近くも広い

実際に仲介市場で取引されている戸建ての土地面積を比較しても、両者の違いは明らかです。図表4は、首都圏の仲介市場で取引されている中古住宅の新規登録物件の土地面積の推移を示しています。

常に「中古戸建住宅」のほうが土地面積が広く、その差は2014年度には70平方メートル以上に達しました。その後はやや縮小しているものの、20年度でも57.92平方メートルの差があります。

これは土地面積ですが、建物面積についても、20年度の平均は新築が97.59平方メートルに対して、中古は108.86平方メートルと、中古のほうが11平方メートル以上も広くなっています。

築年数にもよりますが、中古の戸建てを取得する場合には、リフォームを前提にしている人が多いはずですが、土地や建物の面積が広い中古戸建てなら、リフォームの選択肢が多く、新型コロナウイルス感染症拡大下のニーズにも対応しやすいのではないでしょうか。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」

土地・建物が広い戸建てならコロナに対応しやすい

新型コロナウイルス感染症拡大下で、住まいの広さの重要性が改めて認識されるようになっているのは周知の通りです。

在宅ワークの増加で、住まいの中にワークスペースの必要性を感じる人が増えていますし、家族全員が住まいの中で過ごす時間が長くなって、趣味やフィットネスなどのスペースも欠かせません。

そうしたスペースがなく、狭い住まいで家族が四六時中鼻を突き合わせていると息が詰まりますし、家族のコミュニケーションが損なわれ、最悪の場合には家庭内暴力、コロナ離婚などという事態に発展しかねません。社会的な緊急事態が、家族にとっても緊急事態になりかねないのです。

広い戸建てなら増築や建替えの可能性も

でも、価格が安くて広い住まいが手に入る中古戸建てなら、リフォームによって家族それぞれのスペースを確保できる可能性が高まります。

土地の広い中古の戸建てであれば、増築の余地があるかもしれませんし、将来的には建て替えもしやすくなるでしょう。

ウィズコロナだけではなく、ポストコロナをにらんでも中古戸建てのメリットは大きく、ますます注目度が高まりそうです。

(最終更新日:2021.06.07)
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