【FP解説】住宅に関わる費用どこまで見ていますか? 「購入するまで」と「保有しているとき」の費用目安とは

住宅を購入する際には、土地や建物の代金以外にもさまざまな費用がかかります。購入後に保有する際も同様です。これから住宅を購入する方は、かかる費用を見誤らないよう、しっかり押さえましょう。

住宅を購入する時にかかる費用は?

住宅を購入する際にかかる費用は、物件価格と諸費用に大きく分けることができます。物件価格は頭金(自己資金)と住宅ローンで支払うため、実際には、頭金+住宅ローン+諸費用の3つに分けられます。

頭金と諸費用は、現金で支払うことが多いため(一部、住宅ローンに組み込んで借りることもできます)、しっかり準備しておく必要があります。

頭金(自己資金)

住宅を購入する際に、現金で支払う分を頭金(自己資金)といいます。手付金がそのまま頭金という場合もあります。頭金なしで物件価格をすべて住宅ローンで支払うことも可能ですが、借り入れが大きくなるほど毎月の返済額や、借入額に応じてかかるコストなどが大きくなります。また、頭金の割合によって選べる住宅ローンも異なってきます。最低でも1割の頭金を用意するのが理想と言えます。

住宅購入時の諸費用(タイミング別)

住宅購入時の諸費用を、時間の経過ごとに整理してみました。物件の種類(マンションか戸建てか)や新築か中古かでかかる場合とかからない場合があります。

ここからはタイミング別にかかる費用を見ていきましょう。

タイミングその1…申し込みから売買契約時にかかる費用

不動産購入の申し込みから売買契約時にかかる費用には次のようなものが挙げられます。

▼申込証拠金
新築マンションの購入申込時にかかる費用で、戸建てでも求められる場合があります。金額は数万円から10万円程度で、その後、売買契約を結ぶ場合は手付金にあてられます。申し込んだものの購入をやめた場合は返金されます。

▼手付金
売買契約時に物件価格の10%程度(話し合って決めます)を支払います。売買契約締結後に買い主側からキャンセルする場合、手付金は戻りません。

▼売買契約書の収入印紙(印紙税)
売買契約書に収入印紙を貼って支払う税金。物件価格が1,000万円超5,000万円以下は2万円、5,000万円超5,000万円以下は6万円です。

▼仲介手数料
中古住宅(マンション・戸建て)のほか、新築戸建ての一部でかかる手数料で、仲介する不動産会社に支払います。400万円超の物件では、「(物件価格×3%+6万円)×1.1」(消費税10%含む)が仲介手数料の上限額です。売買契約時には一部を支払い、引き渡し時に残額を支払います。

(〇かかる、△かかることもある、-かからない)

タイミングその2…引き渡し時にかかる費用

住宅ローン契約から引き渡し時までにかかる費用には次のようなものがあります。

▼住宅ローン契約書の収入印紙(印紙税)
住宅ローンの契約時に貼付する印紙。借入額が1,000万円超5,000万円以下は2万円、5,000万円超5,000万円以下は6万円です。

▼残金の支払い(住宅ローンなど)
物件価格から手付金を差し引いた残代金を住宅ローンまたは現金で支払います。なお、新築マンション、新築戸建て、中古でも業者から購入する場合は、建物部分に消費税がかかりますが、通常、販売価格に含まれています。

▼住宅ローン事務手数料
住宅ローンの契約を結ぶときの手数料。金融機関や住宅ローン商品で異なり、33,000円など固定のほか、「借入額の2.2%」など割合でかかるものがあります。

▼住宅ローンの保証料・保証事務手数料
住宅ローンを借りた人が一定以上の延滞をする事態になったとき、保証会社が金融機関に一括返済をします。この保証のためのコストが保証料で、住宅ローン額や返済期間で異なります。保証料が不要な住宅ローン商品もあります。保証会社が完済後は、保証会社へ返済が始まります。保証料も一括払いと金利上乗せの2タイプがあります。

▼団体信用生命保険料
住宅ローンの利用者が死亡・高度障害状態になったときに、残債を保険金で支払うための生命保険です。追加で保険料がかからないものも多いですが、【フラット35】では表示されている金利とは別に、金利上乗せでかかります。最近は、がんや3大疾病、8疾病、就業不能など特約の保障も広がり、金利の上乗せがあるものも増えています。

▼火災保険・地震保険料
火災保険の加入は住宅ローンの契約でマストとなっている場合がほとんどです。地域や物件の種類・構造、広さ、期間などにより保険料も異なります。また、家財の補償を付けたり、地震保険に加入したりすると保険料が上乗せになります。

▼固定資産税・都市計画税精算金
1月1日時点の不動産所有者に対してかかる税金で、購入時点からの分を売り主に支払って精算します。減額される措置もあります。

▼登録免許税・司法書士費用
住宅が自分のものになったことを証明するため法務局に権利の登記申請を行う必要があります。登録免許税や雑費、登記を依頼する司法書士の報酬がかかります。また、住宅ローンを利用するには抵当権の設定の手続きも必要です。司法書士の費用は1件につき5万~8万円ほどです。

▼仲介手数料(残金)
前述の仲介手数料の残代金を支払います。

▼その他
表には入れていませんが、新築マンションで共用部分の大規模修繕のための「修繕積立基金」が数十万円かかる場合があります。

(〇かかる、△かかることもある、-かからない)

タイミングその3…引き渡しから入居までにかかる費用

引き渡しから入居までにかかる費用として、次のようなものがあります。

▼リフォーム工事費(行う場合)
中古で購入した場合、リフォームを行うケースもあります。新築でも、作り付けの家具を設置する工事を行うなどもあり得ます。高額になりがちなリフォーム資金は事前に予定しておかないと資金計画に影響が出ますので注意しましょう。

▼家具家電等
新居への引っ越し代や家具・家電・インテリアなどの購入費は、一般的には住宅ローンの借入額に含めることができないので、自己資金に余裕を持って準備しておく必要があります。

▼引っ越し費用
新居に引っ越すための費用も、業者や荷物の量、依頼するサービスの内容によっては高額になる場合もあります。あらかじめ確保しておくようにしましょう。

▼その他
表にはありませんが、新築戸建てを購入する場合、自治体によっては新たに上下水道を利用する費用がかかる場合があります。

(〇:かかる、△:かかることもある、-:かからない)

保有しているとかかる費用

最後は、保有している間にかかる費用です。

▼不動産取得税
不動産を取得すると半年後くらいにやって来るのが不動産取得税です。マイホームの場合の目安は固定資産税評価額の3%程度で、条件に合えば軽減を受けられる場合もあります。まとまった金額となる可能性も高いので確保しておくことが大事です。

▼住宅ローンの返済(住宅ローン利用者)
住宅ローンが実行されると始まるのが返済です。30年、35年と長い付き合いになりますが、しっかり返していきましょう。

▼固定資産税・都市計画税
1月1日時点の不動産所有者に対してかかる税金です。毎年、5月ごろに計算書や払込書が郵送されます。

▼管理費・修繕積立金(マンション)
マンションでは共用部分の管理・清掃などのコストとして管理費がかかり、修繕計画に沿った修繕積立金も発生します。両方で月2万~3万円、規模やグレードなどによってはそれ以上かかることもあります。専有部分のリフォームも中長期的にかかります。

▼修繕費(戸建て)
戸建ての場合は、屋根や外壁のメンテナンスなどを10~15年に1回は行います。また中長期的にリフォームを行う費用などがあるので、積み立てなどで準備をしておきましょう。

▼その他
マンションの場合、駐車場や駐輪場を契約する場合はそうしたコストも発生します。マンション・戸建て共に、少額ですが、町内会費などがかかることもあります。

(〇かかる、△かかることもある、-かからない)

住宅購入時に現金はどれくらいを用意したい?

諸費用は、新築マンションでは物件価格の3~7%、中古マンションでは6~9%、新築・中古の戸建てでは7~10程度を見込んでおきたいもの。

中古の場合は不動産会社に支払う仲介手数料がかかるため高くなっています。リフォームなどを行えば、さらに上乗せになります。戸建ては新築でも仲介手数料がかかることがあり、また、戸建てならではの費用がかかることがあることから、高めになっています。

諸費用の一部は住宅ローンに上乗せをして借りることもできますが、現金で負担する分も多いことから、頭金1割分と合わせて「物件価格の2割程度」は現金を用意した状態で家を購入するのが理想といえます。コロナ禍の折、できるだけムリのない住宅購入にしたいものです。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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