住宅を購入する際に住宅ローンを利用し、住宅ローン控除の適用を受ける方は多いでしょう。しかし、“副業と住宅ローン控除の関係”については意外と知られていないのではないでしょうか。副業と住宅ローン控除は一見全く関係がないように思われがちですが、内容を知っておくことで節税効果が大きくなる可能性があるのです。

今回は副業と住宅ローン控除について説明するとともに、両者の関係性についても詳しく解説していきます。

副業と住宅ローン控除をおさらい

副業と住宅ローン控除の関係について説明する前に、まずはそれぞれの内容について簡単に復習しましょう。

副業収入が年間20万円を超えると確定申告が必要

副業とは「本業を持っている人が、本業とは別に仕事をし、収入を得る」ことです。副業の内容に明確な定義はなく、仕事を行うことによって収入を得ていれば副業にあたるといっていいでしょう。

注意すべきは確定申告です。本業が会社員の場合、会社が年末調整をしてくれるので、通常は所得税や住民税などの税金の支払いに関して何か自分で税務署に対して申告することはありません。しかし、会社員であっても副業で稼いだお金が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。ただし、この年間20万円というのは収入ではなく「所得」のことで、「収入からその副業を行うためにかかった費用を差し引いた金額」のことをいいます。したがって、収入が20万円あっても副業に必要な費用が10万円かかったのであれば、副業の所得は10万円となりますので、確定申告の必要はありません。

住宅ローン控除は一定の要件を満たすと受けられる制度

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを新築・増改築した際に受けられる「住宅借入金等特別控除」のことです。住宅ローン控除を受けるには一定の要件を満たす必要があります。

たとえば、「特別控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であること」や「増改築等をした後の住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、その2分の1以上が自己の居住用であること」、「10年以上の住宅ローンを組んでいること」など、このほかにも細かい要件がいくつもあります。

これらの要件をすべて満たしていれば住宅ローン控除を受けられます。住宅ローン控除は最大10年間で、金額は毎年「住宅ローンの年末残高の1%」です。住宅ローン控除が適用されると、その金額が毎年の所得税から引かれるので節税になります。もし、住宅ローン控除額が所得税を上回っている場合、残額が住民税から差し引かれます。ただし、住民税から差し引くことができる金額には上限があることに注意が必要です。

仮に3,000万円の住宅を住宅ローンで購入し、初年度に300万円を支払ったとします。すると年末残高は2,700万円ですから、初年度の住宅ローン控除額は2,700万円の1%で27万円となります。その年の所得税額が仮に50万円だった場合、27万円が控除されて最終的な所得税額は23万円となります。

住宅ローン控除の最大控除額は年間40万円となっています。仮に年末残高が5,000万円だったとしても、1%の50万円ではなく上限の40万円が控除額となります。

なお、住宅ローン控除を受ける場合、会社員であっても初年度のみ確定申告が必要になります。

副業と住宅ローン控除の関係性

ここからは副業と住宅ローン控除の関係性について解説していきます。実は副業をしている人の方が、本業だけの人に比べて節税効果が大きくなる可能性があるのです。

その理由は、住宅ローン控除の対象に副業の所得税と住民税も含まれるからです。
具体的にシミュレーションしてみましょう。

ここでは、10年以上のローンを利用していて副業をしているAさんと、Aさん同様に10年以上のローンを利用しているが副業はしていないBさんで比較していきます。

・Aさん(10年以上のローン利用・副業あり)
本業、副業の税金・住宅ローン控除額は以下の通りです。
税金は所得合計から計算しますが、今回は分かりやすいよう本業・副業それぞれから発生したものとして表示しています。

【本業】        【副業】        【住宅ローン控除額】
所得税:10万      所得税:5万      27万
住民税:10万      住民税:5万

Aさんは10年以上の住宅ローンを組んでいるため、住宅ローン控除を受けることができます。
住宅ローン控除は、所得税→住民税という順番で控除が行われます。

1.所得税に対する控除

住宅ローン控除はまず所得税から差し引かれます。
本業と副業の所得税合計15万円に対し、住宅ローン控除額は27万円であるため、15万円全額が控除されます。

15万円-15万円=0円
所得税:0円
残りの住宅ローン控除額:12万円

2.住民税に対する控除

所得税を差し引いても住宅ローン控除額が余る場合、次に差し引かれるのは住民税です。
本業と副業に対して発生する住民税合計15万円から、1.の残りの住宅ローン控除額12万円が控除されます。

15万円-12万円=3万円

最終的にAさんが支払う所得税と住民税の合計額は3万円となりました。この3万円が特別徴収として、会社の給与から天引きされます。本来なら天引きされる所得税と住民税の合計金額は30万円だったわけですから、大きな節税効果です。

・Bさん(10年以上のローン利用・副業なし)
本業の税金・住宅ローン控除額は以下の通りです。

【本業】        【住宅ローン控除額】        
所得税:10万      27万     
住民税:10万      

1.所得税に対する控除

Aさん同様、本業の所得税から住宅ローン控除額を差し引きます。
副業をしていれば副業の所得税も対象となりますが、Bさんは副業をしていません。
本業の所得に対して発生する所得税10万円に対し、住宅ローン控除額は27万円であるため全額が控除されます。

10万円-10万円=0円
本業の所得税:0円
残りの住宅ローン控除額:17万円

今回のように住宅ローン控除額が残っている場合、次の対象は本業の住民税となります。

2.住民税に対する控除

本業の住民税から差し引きます。
本業の住民税10万円に対し、住宅ローン控除は17万円残っているため、その全額が控除されます。

10万円-10万円=0円
本業の住民税:0円
残りの住宅ローン控除額:7万円

これでBさんの所得税と住民税はどちらも0円になりましたが、住宅ローン控除額はまだ7万円残っています。しかし、もうBさんが支払うべき税金はないので、この7万円はどこからも控除することはできません。

「税金が0円になったのだからかまわないじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、Aさんと比較すると「副業をしていて収入が高ければ控除されるはずだった7万円を使いきれなかった」ともいえるのです。

住宅を自宅兼事務所として副業に使用する場合は注意が必要

個人事業主などの場合、自宅を事務所として使うことがあります。この場合、住宅ローン控除の申請には注意が必要です。

なぜなら、住宅ローン控除には「増改築等をした後の住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、その2分の1以上が自己の居住用であること」という要件があるからです。つまり、自宅兼事務所のうち少なくとも半分は居住用として申告していなければ住宅ローン控除は受けられません。また、半分以上が居住用だったとしても、事務所として使っている部分は住宅ローン控除の対象外になってしまいます。

一方で、自宅兼事務所の場合、家賃や水道光熱費を経費として計上できます。たとえば自宅の30%を事業用として使用しており、家賃が10万円だった場合、家賃の30%にあたる3万円を経費として計上できるのです。なお、持ち家の場合は家賃がかからないので、家賃を経費には計上できませんが、代わりに減価償却が可能です。

居住部分を増やして住宅ローン控除額を増やすと、経費として計上できる額が減り、事務所部分を増やして経費を増やすと、住宅ローン控除額が下がってしまうというわけです。

住宅を購入する場合は、これらの内容を慎重に検討する必要があります。たとえば住宅は完全に居住用として購入し、住宅ローン控除を100%受け、事務所は別に借りて家賃や光熱費を全額経費で計上するのも1つの方法です。あるいは自宅兼事務所として住宅を購入し、事務所部分の割合を10%に設定するのもよいでしょう。というのも、事業割合を10%以下にした場合は住宅ローン控除を全額受けられると所得税法で定められているからです。住宅ローン控除を全額受けた上で、10%分の経費を計上するというのも1つの節税対策です。

どのパターンがもっとも節税効果が高いのかは、場合によって異なります。住宅ローン控除の金額や事業の内容、事務所の必要性、もちろんお金の話だけでなく自分と家族のライフスタイルなども考慮した上で、最適な選択をしましょう。

まとめ

住宅ローン控除は様々な要件を満たした上で受けられます。住宅ローン控除は住宅ローンの年末残高の1%であり、本業と副業をあわせた所得税から差し引かれます。住宅ローン控除額が大きいと、本業の税金だけでは引き切れないこともあり、その場合は副業で収入を増やすことで結果的に節税につながるケースがあります。

副業をされていて住宅を購入される方は、本記事で説明した住宅ローン控除の制度をぜひうまく活用してみてください

【監修】
新井智美/トータルマネーコンサルタント

コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)を行う他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行うと同時に金融メディアへの執筆及び監修も行い、現在年間200本以上の執筆及び監修をこなしている。これまでの執筆及び監修実績 は1,000本以上。

公式サイト:https://marron-financial.com/

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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