新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、感染対策のためにマスクや消毒液を使うことが日常になりました。そこでよく耳にするようになったのが、「除菌」「抗菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」といった言葉です。

どれもウイルスや細菌に効きそうですが、どのような違いで使い分けされているのでしょうか。この記事では、それぞれの言葉の意味や効果の違いを詳しく解説します。意味と効果を正しく理解し、今後のウイルス・細菌への感染対策にお役立てください。

言葉の分類と製品表示について

感染症対策として使われる主な言葉は、「除菌」「抗菌」「殺菌」「滅菌」「消毒」の5つです。

ウイルスや細菌などの病原体に対する効果で分類すると、大きく「菌を減らす」「菌を殺す」の2種類に分かれます。

また、これらの言葉は製品によって該当するもの、該当しないものもあるのです。お店に入るときに吹き掛ける消毒液、電車内などで見掛ける抗菌済みの文字など、身近な製品にこれらの言葉を耳にしますが、どのように使い分けされているのか見ていきましょう。

ウイルス・細菌への効果は2パターン

ウイルス・菌への効果は、「減らす」「殺す」という観点で考えます。菌を減らすということは、そこに存在している菌の数を減らすが、ある程度の数の菌は残るということです。一方、菌を殺すということは、そこに存在する菌をゼロの状態にすることを意味します。

菌を減らす効果と同じカテゴリーに分類されるのが、「菌の増殖を抑制する」効果でしょう。これは、そこに存在する菌を今の数より増やさないことを意味します。

これらを踏まえると、ウイルス・菌対策に使われる〇〇菌という言葉は次の2つのグループに分けることができます。

  • ●菌を減らす/増殖を抑制する:除菌、抗菌
  • ●菌を殺す:殺菌、滅菌、消毒

この2パターンの分類によって影響するのは、これらの言葉が「どのような製品に使えるのか」という点です。

製品によって使える言葉が異なる

菌を減らすことと菌を殺すことは大きく意味が異なるため、厚生労働省や製品の業界団体が製品によって規定を設けています。

菌を殺す効果を意味する「殺菌」「滅菌」「消毒」は、薬機法(旧薬事法)で定められた「医薬品」または「医薬部外品」に該当する製品にのみ使える言葉です。

医薬品はその品質や有効性、安全性を厚生労働省に認められ、治療や予防を目的に使用されます。医薬部外品は医薬品と同じく厚生労働省の認可が必要で、人体への作用が緩和なものと定義されます[注1]。医薬品には消毒液など、医薬部外品には一部のエタノール消毒薬や薬用せっけん、薬用歯磨きなどが該当します[注2]。

医薬品、医薬部外品に該当しない製品は「雑品」という扱いになり、菌を減らす意味の「除菌」や、増殖を抑制する意味の「抗菌」という言葉が使えます。雑品には、洗剤や漂白剤などが該当します[注3]。

除菌効果を訴求した製品が増えた一方で、生活者がどの製品にどれくらいの除菌効果があるのか分かりにくいことが問題視されています。そのため、日本石鹸洗剤工業会 (JSDA)では、「台所用洗剤」「住宅用洗剤」「洗濯用洗剤」の3つのカテゴリーで、「除菌の表示基準」を設けました[注4]。

菌を減らす、抑制する「除菌・抗菌」

厳密に言うと、洗剤や漂白剤などに使われる「除菌」と「抗菌」の言葉は、それぞれ意味が異なります。具体的な意味や定義を確認しましょう。

「除菌」とは

「除菌」は物体や液体といった特定の環境から微生物細胞を取り除く、もしくは数を少なくすることを意味します。このため、フィルターやろ過などによる洗浄処理なども除菌に含まれます[注5]。

菌を除去するという意味では、手や体を洗うこと、食器を洗うことなども除菌です。除菌作用をうたう洗剤を用いると、高い除菌効果が期待できる可能性があります。

「抗菌」とは

「抗菌」は、微生物細胞を殺菌・除菌・滅菌・増殖阻害する状態を意味します[注5]。あらかじめ菌がすみにくい環境をつくり、菌の増殖を抑制することが抗菌の定義です。経済産業省では抗菌加工を施した製品の「抗菌」という表現について、「製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」としています[注6]。

菌を殺す「殺菌、滅菌、消毒」

医薬品、医薬部外品の製品に使われる「殺菌」「滅菌」「消毒」についても、それぞれ具体的な意味や定義を確認しましょう。

「殺菌」とは

「殺菌」は文字通り、菌を殺すことを意味します。しかし、殺す病原体の対象や殺した程度を意味の中に含まないため、一度殺しただけでも殺菌という言葉が使えることがネックになる言葉です。

たとえば、特定の環境にいるすべての微生物細胞のうち1種類を殺して、ほかの種類の微生物細胞が生きている場合でも、殺菌と定義できます。このことから、殺菌は感染症対策の有効性を保証したものではないと言えるでしょう[注3]。

「滅菌」とは

「滅菌」は、すべての細菌を死滅させることを意味します。菌への対策としては、最も強い対応です。

人体(生体)に対して行うと、体の細胞もすべて滅菌することになり現実的ではありません。したがって、器具に対して使われる言葉となります。

「消毒」とは

「消毒」は、物体や生体に付着した有害な病原性微生物を死滅または除去して、人体に無害な状態にすることを意味します。

殺菌、滅菌は微生物細胞をなくすことが目的ですが、消毒は人体に無害な状態にすることを目的に、手段として微生物細胞をなくすという違いがあります。

まとめ

除菌、抗菌、殺菌、滅菌、消毒、どれも似た言葉に聞こえますが、その意味や使われ方は大きく異なります。私たちの生活の中でウイルス・菌対策が必須となったからこそ、それぞれの言葉の意味を正しく理解することが大切です。

どのような意図で製品に使われているのか確認し、自分に最適な菌対策グッズを取り入れてみましょう。

【監修者】
内科医・公衆衛生医師 成田亜希子さん

東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の医師。 国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。

[注1]

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第2条および2項)

[注2]

医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について|厚生労働省

[注3]

どこがどう違うのか…「滅菌」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語|日本石鹸洗剤工業会 (JSDA)

[注4]

台所用・住居用洗剤の除菌標記について|日本石鹸洗剤工業会 (JSDA)

[注5]

知っておきたい殺菌・除菌・滅菌技術

[注6]

抗菌加工製品ガイドラインのフォローアップ結果について|経済産業省

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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