季節の変わり目に「体調不良」なぜ? 医師監修による免疫力の知識とおすすめ食材

体調不良が生じる原因はさまざまですが、季節の変わり目は身体に様々な異常が生じるとされています。免疫力の低下もその一つであり、体調不良を起こしやすくなる方も少なくありません。

今回は、免疫力に関する基礎知識や、免疫力向上に役立つおすすめの食材、理想的な生活習慣について解説します。

免疫力って何? 季節の変わり目の何が影響しているのか

自律神経の乱れは免疫力の低下につながるだけでなく、体調不良を引き起こす

免疫力は私たちの身体を守る力のことです。そのため免疫力の高さは人の身体の状態に大きな影響をもたらします。免疫が具体的にどんな働きをしているのか、なぜ季節の変わり目になると免疫力が低下しやすいのか、気になる情報をまとめました。

免疫の働き

免疫とは、体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する防御システムのことです。

免疫は大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。

自然免疫とは、人体に生まれつき備わっている免疫システムのことで、体内に侵入した異物を食べる能力に優れたマクロファージを筆頭に、がん細胞やウイルス感染細胞などを発見し攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞などが代表的な担い手として挙げられます。

獲得免疫は、体内に侵入した病原体の特徴を見極め、効果的な戦い方を学び記憶することで、次回同じ病原体に遭遇した際、すばやく的確な攻撃を仕掛ける免疫のことです。

生まれながらに備わっている自然免疫とは異なり、後天的に獲得する免疫なので、一度体内に侵入した病原体に対して攻撃を仕掛けることはできませんが、自然免疫では排除しきれない病原体が現れた際、優れた働きを発揮します。

自然免疫と獲得免疫は相互に作用し合って病原体の侵入を防いでおり、これら免疫が正常に機能することで、病原体への感染を予防できるのです。

季節の変わり目に免疫力が低下する理由

免疫力は常に一定を保っているわけではなく、自律神経が正常に機能しているかどうかによって大きく左右されます。

自律神経とは、効果神経と副交感神経の2つから成る神経のことで、血圧や血糖値を調整したり、食べ物の消化を促す役割を担っています。

免疫システムのひとつである白血球は血液に含まれていますが、自律神経が乱れると白血球の働きを悪くするステロイドホルモンが多く分泌されるようになります。その結果、免疫力の低下につながります。

自律神経が乱れる原因は複数ありますが、そのうちのひとつが気温の寒暖差と気圧変動です。

通常、人の身体は交感神経と副交感神経をうまく切り替えて気温差や気圧の変動に対応しますが、短時間で気温や気圧が変化する季節の変わり目は、自律神経の切り替えがスムーズにいかず、交感神経と副交感神経のバランスが乱れやすくなります。

自律神経の乱れは免疫力の低下につながるだけでなく、疲労やだるさ、慢性的な眠気などの体調不良を引き起こすため、人によっては日常生活に支障をきたすこともあります。

免疫力向上におすすめの食材

たんぱく質は免疫物質の生成に欠かせない栄養素

ウイルスや細菌といった異物の侵入を防ぐ免疫物質を作るには、食事から摂取する栄養素やエネルギーが必要になります。

また、摂取した食べ物を消化する腸には、全身の免疫細胞の約7割が集中しているといわれており、規則正しく、栄養バランスの良い食事で腸の環境を整えることが、免疫力の向上につながります。

では、具体的にどのような栄養素を摂れば免疫力を効率的にアップできるのでしょうか。

ここでは、免疫力向上に役立つ栄養素と、代表的な食材を2つに分けてご紹介します。

たんぱく質

三大栄養素のひとつであるたんぱく質は、筋肉や内臓のもとになる重要な栄養素であると同時に、免疫物質の生成に欠かせない栄養素でもあります。

たんぱく質は肉類や魚類、豆類、乳製品、卵などさまざまな食材に含まれているので、日常の食卓に取り入れやすいでしょう。なお、肉類や魚類からたんぱく質を摂取する場合は、脂肪分の過剰摂取に注意が必要です。

肉類なら脂肪分の少ない赤身肉や、高タンパク・低カロリーの鶏ささみなどを積極的に摂取するのがおすすめです。

魚類も、脂肪分の少ない白身魚を意識的に摂取したいところですが、魚類の脂肪分はDHAやEPAなど健康維持に役立つ良質な脂ですので、肉類ほど脂肪分に気を遣う必要はないでしょう。

豆類は植物性たんぱく質の含有量が豊富な大豆、乳製品は低脂肪の牛乳やヨーグルトなどを中心に摂取すると、効率的にたんぱく質を摂取できます。

ただし、たんぱく質を過剰に摂りすぎると腸内の環境がかえって悪くなることもありますので注意が必要です。

乳酸菌・食物繊維

小腸や大腸では多くの免疫に関わる物質が作られています。乳酸菌などの善玉菌や、食物繊維は腸内環境を整え免疫細胞の産生を促す効果が見込める栄養素です。乳酸菌は、納豆、チーズ、ヨーグルト、味噌、漬物などの発酵食品に、食物繊維は野菜を中心にきのこ、根菜類、海藻類などに多く含まれます。

ビタミンA(βカロテン)・ビタミンB2

βカロテンはカロテノイドという色素成分の一種で、体内に入るとビタミンAに変換し、免疫力を高める栄養素として活用されます。

一方、水溶性ビタミンの一種であるビタミンB2には、皮膚や粘膜を正常に保つ作用があります。ウイルスや細菌は目・鼻・口などの粘膜から侵入するため、ビタミンB2が不足するとウイルスや細菌が侵入しやすくなります。

βカロテンはにんじんやほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜に。ビタミンB2はうなぎや豚レバー、納豆などの食材に多く含まれています。

理想的な生活習慣

ウォーキングや寝る前のストレッチなど、軽めの運動を定期的に行うことが大切

季節の変わり目に陥りやすい免疫力の低下を防ぐには、食事だけでなく生活習慣を見直す必要があります。

特に日常生活で意識したいのは、良質な睡眠と適度な運動です。

質の良い睡眠は、乱れた自律神経を整えると同時に、リンパ球(白血球)の増加や粘膜などの細胞の成長・修復などにもつながります。

ただ睡眠時間を長くしても睡眠の質は上がりませんので、早寝早起きを心がける。就寝前にスマホやパソコンを使わない。起きたら日光を浴びるなど、睡眠の質を向上する工夫を採り入れましょう。

適度な運動は筋肉の増量につながり、血液のめぐりを良くする効果が期待できます。

運動によって血行がよくなると、自律神経のバランスも整いやすくなりますので、季節の変わり目に起こる気温・気圧の変動にもうまく対応できるようになります。

運動といっても、激しいスポーツを行う必要はなく、ウォーキングや寝る前のストレッチなど、軽めの運動を定期的に行うことが大切です。

日頃運動不足の人がいきなり激しい運動をすると、心身に負担をかけて逆効果になってしまうおそれがありますので、無理のない範囲で体を動かすよう心がけましょう。

まとめ

気温や気圧が変動しやすい季節の変わり目は、自律神経のバランスが乱れやすく、免疫力が低下しやすい傾向にあります。

免疫が低下するとウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、感染症に罹患するリスクが高まります。また、自律神経の乱れは精神的、身体的に様々な不調を引き起こします。

季節の変わり目になると、毎回風邪を引く、体調が悪くなる…という悩みを抱えている方は、今回ご紹介した内容を参考に、食生活や生活習慣を見直して免疫力の向上を目指しましょう。

 

【監修者】
内科医・公衆衛生医師 成田亜希子さん

東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の医師。 国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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