私たちの生活の周りには、たくさんの虫=害虫が隠れています。見た目だけでも不快感が生まれる害虫ですが、人体に影響を及ぼす場合もあります。

では家の中に発生する害虫は、いったい何者なのか。屋内に潜む害虫の種類や特徴、人への影響について紹介します。

そもそも害虫とは?

害虫とは、人間の生活に直接的または間接的に害を与える虫を指す言葉です。害の種類によってさまざまな分類に分けられていますが、なかでも衛生害虫・食品害虫・不快害虫は家の中で見かける可能性のある身近な害虫です。

病気を媒介!? 「衛生害虫」とは

人間や動物に、病気の原因である病原体を媒介したり、アレルギー症状を引き起こしたりするなど、衛生上の損害を与える害虫を衛生害虫と言います。衛生害虫の中には、デング熱など命に関わる病気を媒介する虫も存在し、国や自治体でもその危険性を注意喚起しています。

食品に混じって… 「食品害虫」とは

穀物や乾燥食品、お菓子など、さまざまな食品に被害を与えるのが食品害虫です。家の中での発生はもちろん、食品工場・倉庫でも多く発生し、異物混入といった社会問題になるケースもあります。

不快極まりない、「不快害虫」とは

人間や動物に対し害を与えることはありませんが、見た目や大量発生による気持ち悪さ、ほこりまみれの不潔感など、人に心理的な害を与える虫を不快害虫と言います。もちろん人によっては不快に感じない虫もいるため、不快害虫を明確に定義するのは困難です。

家に発生する衛生害虫

刺されないことが重要な対策

代表的な衛生害虫は、蚊やダニ類です。夏季に蚊に刺される機会は増大し、肉眼で確認するのが困難なダニは害を受けて初めてその存在を認識するなど、その危険性を理解していても対策を相当練っておかないと防ぎ切ることはできません。

深刻な感染症を媒介する蚊 

世界には約3,000種類もの蚊が存在し、日本には約100種類の蚊が生息していますが、人を刺すのは約30種類です。

なかでも身近な蚊として発生するのは竹藪、墓地や住宅地の屋外に生息するヤブカ属と、家の周辺や屋内に侵入するイエカ属です。この2つの属の中でも、ヒトスジシマカ・ヤマトヤブカ・アカイエカが国内に広く生息しており、都会にあるビルの地下ではチカイエカも生息しています。

蚊の被害といえば、刺された際のかゆみが挙げられますが、注意すべきは刺されることで発症する感染症です。国内感染が報告されている、蚊が媒介する感染症は日本脳炎とデング熱があります。

日本脳炎は深刻な急性脳炎を招く危険性があり、全世界では年間3万〜4万人の患者が報告されている感染症です。国内ではワクチンの定期接種により1966年をピークに減少し、現在の発症件数は毎年10人以下です。高齢者や小児は日本脳炎発症後の重症化リスクが高く、後遺症が残る危険性があるためワクチンにより予防することも大切です。

デング熱は2014年の夏に70年ぶりに国内感染が発生し、162人の患者が報告されました。その際の媒介蚊は、私たちの身近に発生するヒトスジシマカであり、蚊の危険性が改めて広く認知された出来事でした。急激な発熱や頭痛、関節痛、嘔吐(おうと)などインフルエンザに似た症状を示すデング熱には、具体的な治療法やワクチンが存在しません。「病原体を媒介するヒトスジシマカに刺されない」ことが重要な対策なのです。

通年で発生するダニ類 

多くの害虫は夏に増殖活動が活発になりますが、室内性のダニは、人間により空調管理された空間に生息することから、発生時期は各家庭の生活様式によって傾向が異なります。

チリダニは通年で寝具やカーペットに発生します。人間がチリダニのフンや死骸を吸い込むことで、ぜんそくやアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患を引き起こすことがあります。

肉眼でも確認できる大型のマダニは、日本紅斑熱やライム病などの感染症に加え、近年増加しているSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の原因になり得るので注意が必要です。発熱や嘔吐などの症状に加え、致死率が6~30%と高く、その治療法やワクチンはいまだ確立されていないので、非常に危険な害虫です。マダニは、屋外で人を刺し、付着したまま屋内に侵入することもあります。 マダニも蚊と同じように、刺されないことが重要な対策となります。

家に発生する食品害虫

食糧や豆類を備蓄・長期保存していると大量発生も!

食品害虫の被害は、大量発生による不快感はもちろん、発生する食品害虫に寄生する別の虫が人体に害をもたらす場合もあります。

まずは日本に広く分布する一般的な食品害虫を把握しましょう。

米や麦に発生するコクゾウムシ 

コクゾウムシは米(玄米)、小麦や大麦、トウモロコシなどの貯蓄する穀物に発生します。成虫はゾウの鼻のような長い口を持ち、食材に穴を開けて卵を産み付ける習性があります。

被害は穀物への食害のみで、人を刺したり病気を媒介するといった害はありません。ただし繁殖力が強いため、いつの間にかコクゾウムシが湧いているケースが多く、穀物の貯蔵には注意が必要です。

豆類に発生するマメゾウムシ 

マメゾウムシはラッカセイ・エンドウ・ソラマメなどの豆類に卵を産み付けます。かえった幼虫はその豆を栄養分として成長していきます。

食糧や豆類を備蓄・長期保存している場合、気づいた時にはマメゾウムシが大量発生し、食い荒らしてしまうこともあります。万が一、マメゾウムシを口にしても人体には無害です。ただ、想像してみてください。豆の袋を開けた瞬間、マメゾウムシが大量発生している地獄絵図を……。

家に発生する不快害虫

臭いを放つカメムシが洗濯物についたら…

不快害虫の対象となる害虫はさまざまですが、なかでも群れをなして小さな隙間からも侵入するアリと、嫌な臭いを放つカメムシについて見ていきましょう。

多くの仲間を引き連れるアリ

屋内に侵入するアリは、なんでも餌にする「雑食性」と、蜜や砂糖など糖分を含むものを餌にする「吸蜜性」の2つに分類されます。多くのアリは春から夏にかけて行動が活発になり、基本的には24時間活動するため、アリの侵入を誘う餌になる物質の処理には十分な注意が必要です。

アリは腹部からフェロモンを分泌して仲間を集める特性があります。仲間の出すフェロモンをたどっているため、アリは行列になるのです。

アリはドアの下や換気扇フードの小さな隙間からでも侵入してきます。また、たとえマンションの高層階に住んでいたとしても、壁や換気口から侵入する可能性もあります。

そのため、小さな隙間を埋めて侵入経路を絶つよりも、まずはアリの侵入を招く蜜や砂糖といった餌の処理を徹底しましょう。

自身が死んでしまうほど強烈な臭いを放つカメムシ

カメムシは一年を通して現れますが、成虫を見かけるのは主に7~10月です。嫌な臭いが不快なカメムシですが、その臭いは、密閉された空間で臭いを放ったカメムシ自身が死んでしまうという実験結果があるほど強烈です。

カメムシは暖かい場所と白い色や光に集まる習性があるため、ベランダに干してある白い洗濯物は、カメムシがよく寄ってきます。

カメムシは後胸部の第3節の腹側(真ん中の足と後ろ足の付け根辺り)に、臭いを出す臭腺があるため、腹部に手が触れると臭いが付きます。カメムシを駆除するときは、刺激せずに腹部に触れないよう、テープを使いましょう。

まとめ

イヤ~な害虫は、侵入を防止するのはもちろん、増殖しないような環境づくりが重要です。

害虫による人への影響は、病気の媒介や不快感を与える心理的な害などさまざまです。まずは今回紹介した、家の中に発生する代表的な害虫の特性を把握し、それぞれに適した対策を講じましょう。

【監修者】
白井良和さん

害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役。医学博士。
1994年、京都大学農学部農林生物学科(昆虫学研究室在籍)卒業。
1996年、京都大学大学院農学研究科農林生物学専攻博士前期課程(昆虫学研究室在籍)修了。 1996年、殺虫剤メーカー研究部研究員(ゴキブリベイト剤の開発)。
2001年、富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程(感染予防医学教室在籍)修了。
博士論文は「蚊の吸血誘引に関する総合的研究」。
2001年3月、害虫防除技術研究所設立。
2002-2004年、東京都の害虫駆除会社にて、ネズミ、ゴキブリ、蚊、ハチ、ダニ、樹木害虫などの害虫駆除業務を行う。 2003年12月、蚊駆除業務を柱に有限会社モストップを創業。
現在では、ECサイトで害虫対策商品販売、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験ほか害虫試験、書籍の出版、テレビ・ラジオ等のメディア協力、YouTube動画配信、Web記事の監修等を行っている。

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