神棚は家に設置するべき? 設置場所と注意点について

神棚は一般家庭から企業のオフィスまで多くの場所で設置されており、日本人にとって身近な存在とも言えるでしょう。

しかし、神棚を設置する意味や祀り方のルールは意外と知られていません。自宅に神棚を置いた方がいいのか? 設置する場所や置き方は?と様々な疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、神棚の基礎知識から実際の設置方法・祀り方まで、神棚に関する様々な知識をご紹介します。これから神棚を設置しようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

神棚とは?

神棚とは、神道における日本古来の八百万(やおよろず)の神々を祀る棚を指します。「古事記」にも神棚の記述がありますが、一般的に普及し始めたのは江戸時代以降と考えられています。お伊勢参りなど伊勢信仰が盛んになり、伊勢神宮のお神札を祀ることが一般的に普及。家庭でもお神札を祀る棚として広まったのが現在の神棚の原型と言われています。

なぜ神棚を設置するのか

神棚を家に置く理由は諸説ありますが、一般的には家内安全、商売繁盛、無病息災などを祈願することです。もしくは神社でいただいたお神札を祀る場所がないなどの理由で祀る設置するケースも多いです。神棚は、自宅や家庭に小さな神社を設けるようなものですので、毎日の平穏を祈願することで心の拠り所にもなるのではないでしょうか。

神棚は必ずしも必要なものではありませんが、神様を身近に感じ、日々のご加護に感謝することができるでしょう。

神棚を設置する際の注意点

神棚は、設置する場所やお神札の並べ方にも決まりがあります。また、一度設置したら終わりではなく、日々のお参りやお供え、定期的なお神札の交換なども必要となります。

神棚を設置すべき場所は?

神棚を設置する場所は、明るく清浄で、目線より高いところが良いとされています。本棚やタンスの上をきれいにして、お祀りするのも良いでしょう。

上階があれば、できるだけ人が踏まない場所を選びましょう。そういった場所がない場合は、家族が集まりやすく、日当たりや風通しの良いリビングが適しています。

檜の雲板のイメージ

また、マンションなど、上階に人が住んでいる場合は、神棚の上部に「雲」や「天」と書いた紙や「雲板」と呼ばれるものを貼ります。これは、神棚が家の中で最も高い場所にあることを示すもので、「これより上には何もありません」と神様に伝え、お許しをいただきます。

ちなみに昔は、2階建て以上の建物が少なく平家が多かったためこのような慣習はありませんでした。近年はマンションなどの集合住宅が増えているため、神棚を購入する際に雲板がセットとなっている場合も多くなっています。

また、神棚を置く理想の方角は「東」や「南」です。理由は太陽の昇る東と、神様が向かわれる南を吉方としているためです。

神棚を設置する手順や注意点

神棚と祭具の設置例

現在は住宅の多様性に合わせて、様々なデザインの神棚もあり、祭具も一様ではありません。神様の祀り方も時代とともに変化しているのです。神棚を購入する際に、設置の手順や祭具の説明もありますが、一例を紹介します。

神棚を設置する際は、まず「1:棚板」を取り付けます。その後、社殿をかたどった「2:宮形(みやがた)」を用意し、そこにお神札を納めます。宮形の左右に対となるように「3:榊(さかき)」を供えます。榊をみずみずしい状態に保つには、「4:榊立て」の水をこまめに取り替えるようにしましょう[注1]。

  • ● 向かって左側:水(6:水器)
  • ● 中央:米またはご飯(7:高月)
  • ● 向かって右側:塩(7高月)

御神酒(8:瓶子)もお供えする場合は、純米酒が望ましいです。また、お供えは横一列に並べるのが望ましいとされていますが、もし十分なスペースがなければ、二列にしても問題ありません。

この例の他に、しめ縄、真榊(まさかき)、灯籠、篝火(かがりび)などの祭具・神具を祀る例もあります。ご自宅の間取りに合わせて、設置場所や神棚の種類を選ぶのが良いでしょう。

お神札の種類と並べ方

お神札の並べ方にも、決まりがあります。横並び3枚のお神札を納める「三社造り」と、3枚を重ねるタイプの「一社造り」の2種類です[注2]。それぞれのタイプの並べ方は、以下のとおりです(上画像は一社造り)。

<三社造りの並べ方>

  • ● 中央:神宮大麻(日本国民の総氏神さまである、伊勢神宮のお神札)
  • ● 向かって右側:地元の氏神さまのお神札
  • ● 向かって左側:崇敬している神社のお神札

<一社造りの並べ方>

  • ● 一番手前:神宮大麻
  • ● 2枚の間:地元の氏神さまのお神札
  • ● 一番奥:崇敬している神社のお神札

お参りの手順と注意点

神棚にお参りをする際は、「二礼・二拍手・一礼」が基本の作法です。平穏な生活に感謝し、家族の健康を祈ります。より丁寧にお参りする場合は、「神棚拝詞」を奏上することもあります。

お供えの水を交換したり、軽く拭き掃除をしたりして、常に清浄を保つことも大切です。お神札も同じ物を何年も祀り続けるのではなく、毎年お正月に取り換えるのが美しい風習とされています。

お役目を終えたお神札は、一年間お守りいただいた感謝の気持ちを込めて氏神さまにお納めします。

神棚封じってなに?

神棚を設置した後、身内に不幸があった際は、神棚全体を白紙で覆い隠す必要があります。これは、「神棚封じ」という行為で、神棚に死忌が及ばないようにするものです。気を落とす「気枯れ」が「けがれ」に通じているという考えに由来します。

神棚封じの方法は地域や神社によって異なりますが、代表的な慣習は以下の通りです。

  • ● 故人との関わりがない第三者の手によって行う
  • ● 神棚封じの期間中(故人との親密度により1〜50日間)は毎日の拝礼も慎む
  • ● 忌が明けたら白紙を外し、礼拝・お供えを再開する

自分が住んでいる地域にはどういった慣習があるかも知っておくと、いざという時に役立つでしょう。

まとめ

神棚は「近くで神様が見守ってくれている」「今日も見えない力を与えてくださっている」と心の大きな支えになってくれるものです。慌ただしく過ぎる日々の中で数分でも向き合う時間を取ることで、心を落ち着け、整え、今があることに感謝できるでしょう。

最近では洋室に調和するおしゃれなデザインの神棚や、壁掛け式で省スペースの神棚も販売されているので、インテリアやライフスタイルに合った神棚を探すのも良いかもしれません。

「神棚について解決したら仏壇のことが気になり始めた」という方は、こちらの記事もご参考ください。神棚と同じく、進化し続けるモダン仏壇の詳細に迫ります。

参考記事:マンションのリビングでも違和感なし。進化を続ける“モダン仏壇”最新事情

 

[注1]

京都神社庁「【毎日のおまつり】お供えの仕方」

[注2]

東京神社庁「お神札のまつり方」

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