ダニ対策は「防除」がキーワード! 家で発生しやすい所と5つの対策

ダニは非常に小さく肉眼で確認するのは困難ですが、家の中でダニが発生するとアレルギーなどの被害を受ける可能性があります。

対策を適切に行うためには、ダニがどのような環境を好んで、どのような場所に発生しやすいかを把握しておくことが重要です。

この記事では、屋内に発生する主なダニ(室内塵性ダニ類)の種類、ダニが発生しやすい場所やダニ対策の手順などについて、東京家政大学の川上裕司先生による監修のもと解説していきます。

ダニの種類と被害

画像提供:東京家政大学 川上裕司先生

ひとくちにダニと言っても、その種類はさまざまです。

屋内に発生する主なダニの種類と発生時期を、以下に表でまとめます。

室内で発生する主なダニ

種  名

発 生 場 所

発 生 源(餌)

コナヒョウヒダニ

寝具,布製ソファー,

カーペット,粉製品

ヒトや愛玩動物のフケ・垢,食べ物カスなどの有機物,お好み焼き粉

ヤケヒョウヒダニ

同 上

同 上

イエササラダニ

寝室,リビングルーム

住宅内のハウスダストに

含まれる有機物

ミナミツメダニ

和室,ゴザ

イグサの畳に発生するイエササラダニやチャタテムシ

ケナガコナダニ

和室,粉製品

イグサの畳に発生するカビ,乾物・香辛料・パン粉・味噌・チーズなどの食品

屋内にいるダニのうち8割~9割近くは、ヒョウヒダニ類(コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニ)です。

ミナミツメダニは、東南アジア産のイグサと共に日本に侵入し定着したダニで、室内に生息するイエササラダニ、カザリとワダニ、ヒラタチャタテなどを捕食します。時にヒトを刺すことがあります(血液は吸いません)。

ダニの被害として代表的なものはアレルギーですが、アレルギーの原因となるのは主にコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニです。

ダニの発生時期

発生時期はそれぞれのダニによって異なりますが、ヒョウヒダニ類はほぼ1年中見られる室内塵性ダニ類の代表種です。

コナダニおよび、コナダニを捕食するツメダニは梅雨時や秋口あたりに主に発生します。

いずれのダニも高温多湿を好む傾向にあるので、ダニの発生を抑えたい場合は温度や湿度の管理が重要になるでしょう。

ダニの危険性

ダニの危険性も種類によってさまざまで、ヒョウヒダニはアレルギーの原因になるので、ダニアレルギーの方にとっては大敵です。

室内の有機物を餌にして繁殖するイエササラダニとカザリヒワダニは、直接人を刺すことはありませんが、掃除を怠ってハウスダストがたまると、イエササラダニなどが大発生して、二次的にミナミツメダニが発生しヒトを刺すことに繋がります。

また夏季から秋季は、野山でダニに刺されることにより起こる感染症に注意が必要です。病原体(リケッチア・ウイルス)を保有する「マダニ類」に刺されることで感染する「日本紅斑熱」や「重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)」、病原体(リケッチア)を保有する「ツツガムシ類」に刺されることによって感染する「つつが虫病」は、毎年感染者が出ています。

野山に行く時は「長そで・長ズボンを着用してできるだけ肌を露出しない」ことや「虫よけスプレーを活用する」ことを心掛けましょう。野外でダニに刺された、もしくは刺された可能性がある場合は、皮膚科などの医療機関できちんとした処置を受けるようにしましょう。

ダニはすぐそばに…発生場所を紹介!

ダニに注意するためには、ダニがどのような場所に発生しやすいかを知っておかなければなりません。

以下では、ダニが発生しやすい場所をいくつか挙げていきます。

寝具

寝具は、ダニが繁殖する条件がそろっています。すなわち、餌となるヒトのアカやフケがある。ヒトの寝汗で適度な湿気がある。潜り込んで産卵できる。言い換えれば、ダニにとって快適な環境です。

掛け布団、毛布などは週に1度は天日干し。

タオルケット、枕カバー、シーツは1週に1度洗濯・交換しましょう。ベッドは万年床ですので、要注意です。ベッドマットの位置を上下、裏表と2週間に1度はローテーションしましょう。オフシーズンで使わない寝具は、十分に天日干しした後、布団圧縮袋へ入れて、空気を抜いて保管しましょう。

カーペット

特に毛足の長いカーペットは、ハウスダストがたまりやすく、観葉植物を置いて水やりなどしていると湿気も溜まり易くなります。

吸引力が高く、排気口からアレルゲンとなるダニの糞が出ないサイクロン式掃除機を使って、3日に1度は掃除機をかけましょう。観葉植物を置いている場合には、晴天日に必ずベランダに出してから水やりを行い、2~3時間光合成をさせてから室内に取り込んでください。

水受け皿に常に水が溜まった状況はダニ繁殖の原因となるので厳禁です。

昔のように100%イグサの畳は激減し、現在では合板畳や、挙げ下ろしが楽な置き畳が主流となってきました。ダニ対策としては、畳の上に物を極力置かないこと、カーペットなどを敷かないことが肝要です。

また、畳の目に沿ってゆっくり掃除機をかけるようにしましょう。

ソファ

特に布製ソファは、寝具と良く似て、ダニの繁殖に適した条件がそろいやすいので要注意です。

ソファの隙間を、先細ノズルを取付けた掃除機で吸引するようにしましょう。ソファ上に、クッションやぬいぐるみを置いている場合、週に1度天日干しをしてから掃除機をかけましょう。

室内のダニ対策は環境改善とアレルゲン除去を意識的に行うことが大切!

 

害虫やダニの対策として、「駆除」という用語が使われることがありますが、農業分野や衛生管理分野では「防除」という用語が定着しています。「防除」とは「駆除」と「予防」を合わせた用語で、複数の方法を用いて発生させないことを目的とした対策法を意味します。

現代の住宅のダニ対策においても、「発生させない」ための対策が重要です。

ダニ対策は日常管理

現代の住宅で見つかるダニは「コナヒョウヒダニ」または「ヤケヒョウヒダニ」プラス1~3種類程度です。和室の減少と共に布団を敷いて寝る方が激減し、およそ70%の方がベッドを使用されているようです。また、マンションなどでは100%イグサの畳から合板畳を使うことが主流になり、ツメダニの被害も激減しました。

しかしながら、ダニによるアレルギー疾患は増加傾向にあり、子どもの二人に一人が何らかのアレルギー疾患をかかえており、中でもヒョウヒダニ類が引き起こす「鼻炎」、「喘息」、「アトピー性皮膚炎」は住宅内で起こるアレルギー疾患として最も注意すべき疾患です。

現代の高断熱高気密の住宅は、温度や湿度、餌、産卵場所などダニにとっても快適な環境であると言えます。そのため、ダニ対策は、一年を通じて日常管理が大切であることを先ず認識しましょう。

日常管理でおこなう5つの対策

一般住宅では、寝具、ソファ、カーペットで発生する「ヒョウヒダニ類」に主眼を置き、更にハウスダストを発生源とする「イエササラダニ」、「カザリヒワダニ」、「ホコリダニ類」の対策が大切です。

また研究で明らかになってきたアレルゲン昆虫「チャタテムシ類」の対策も行うとダニ対策にも有効です。

【対策1】吸引力が高く、アレルゲン粒子を排出しないサイクロン式掃除機での清掃

室内生物アレルゲンの最重要種である「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」は、生体だけでなく、糞と死骸の微細破片がアレルゲンとなります。そのため、アレルゲンを除去することを念頭に置いて、床のフローリング、ソファの表面と隙間、カーペット、畳などを十分吸引することが先決です。

サイクロン式掃除機は、排気口から微粒子(糞や死骸片・カビ胞子)が出にくい構造になっていますので、おすすめです。紙パック式掃除機を使用する際には、窓やドアを全開にして排気を屋外へ追い出す工夫をしましょう。

また、粘着式ローラーを併用すると微細粒子の除去に効果的です。

【対策2】ダニが潜り込める場所を極力減らす

現代の住宅は物品が多く、壁際の床に物が常時置いてある住宅がほとんどです。そのような場所はハウスダストがたまりやい上、掃除機掛けを怠ることが多く、引いてはダニが潜り込み、産卵して繁殖する場所となります。

収納を工夫して、床に極力物を置かないようにすると、掃除機掛けがしやすくハウスダストがたまりにくくなります。

【対策3】寝具とベッドの清潔管理を徹底する

ベッドは万年床です。布団のように上げて、天日干しすることができません。そのため、シーツと枕カバーは3日~7日に1度は必ず洗濯し、ベッドパッド、掛布団、毛布などは十分天日干ししてください。

ベッドは専用ノズルを付けて掃除機掛けを行い、2週間に1度は上げて、2~3時間立てかけましょう。そして、頭側~脚側~裏側~表側といった具合にローテーションを行ってください。その際、ベッドの下にたまったハウスダストの除去をお忘れなく。

【対策4】粉製品・乾物・調味料の管理を見直す

近年、開封後に常温保存しておいた「お好み焼き粉」や「パンケーキミックス」を食べた子供がアナフィラキシーショックを起こす事例が増えています。輪ゴムで止めただけでは、ダニは袋内に簡単に侵入して繁殖します。大量にダニを食べてしまった場合、小腸で吸収されて重篤なアレルギーを引き起こすので注意が必要です。

開封した後は、タッパーウェアに収納して冷蔵庫に仕舞うようにしましょう。乾麺や調味料を流し台の下のスペースに置くのは厳禁です。リビングルームで発生したダニを誘引することに繋がります。キチンと分類して収納ラックへ納めて上の棚に置くようにしましょう。

【対策5】本棚にたまるハウスダストを防止

本棚は盲点です。長く置いた本を開いたら、茶色のシミだらけという経験はありませんか? それは、耐乾性のカビの仕業です。そのカビを餌とするのが「チャタテムシ」で、チャタテムシが増えてくるような環境が続くと本棚の下の隙間にたまったハウスダストで「ヒョウヒダニ類」が大繁殖します。

掃除機に付属する適切なノズルを付けて、月に1度は本棚の掃除機掛けを行いましょう。

【監修者】
川上 裕司先生

博 士(農 学)
東京家政大学大学院・環境教育学科非常勤講師
法政大学国際文化学部非常勤講師
国立病院機構相模原病院臨床研究センター客員研究員
㈱エフシージー総合研究所 顧問

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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