部屋の「色」だけでも暮らしが変わる!? 色彩効果を意識した部屋づくり

空間の印象を大きく左右する要素である「部屋の色」。新しく家を購入する、または模様替えをしてがらっと部屋の雰囲気を変えたいときには、色選びが大切です。しかし、どのような基準で色を選ぶのが良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。

わたしたちの在宅時間は1年間で250日近くになると言われています。それだけ長い時間過ごす場所だからこそ、脳と身体に与える影響や気分などの効果も気にして部屋の色を選びましょう。

本記事では、代表的な色ごとに、その特徴と脳に与える色彩効果を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

赤色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●アドレナリンを分泌して「闘争モード」にさせる
●気分をポジティブにさせる
●食欲を刺激する
●時間を速く感じさせる
●覚醒を促し、集中力と理解力を高める
●危険、緊張感を与える

「情熱の赤」と言われるように、赤色は見る人に情熱的でポジティブな活力を与えます。アドレナリンを分泌させて興奮を高める、血圧を上昇させる、脈を速くさせるなどの効果によって見る人を「闘争モード」にします。また、食欲が増す、時間が速く過ぎていくように感じさせるなどの効果もっています。

一方で、危険な印象や緊張感、暑苦しさを感じさせる点には注意しましょう。赤色から受ける興奮状態が長時間続くと、脳や体が疲れやすくなってしまいます。また、「闘争モード」であることで、家族などとの言い争いが起こりやすいといったネガティブな側面も持っています。

青色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●リラックスさせ、創造力を高める
●食欲を抑えて、食べ過ぎを防ぐ
●ストレスを抑制する
●時間を速く感じさせる
●睡眠を促進する
●体温を下げて発汗を抑える
●孤独や冷たさを感じさせる

クールな印象を持つ青色は、セロトニンの分泌を促進すると言われています。緊張やストレスを軽減させ、気分を落ち着かせる効果が期待できるでしょう。また、入眠を促進し、精神と身体に心地よい休息を与えてくれます。

そのほか、食欲をコントロールして食べ過ぎを防いだり、体感温度や心拍数を下げて発汗を抑えたりする効果も持っています。

一方、ネガティブな色彩効果としては、寒々しい感覚や高ぶった興奮を抑える、活力的な気分を盛り下げてしまうことが挙げられます。

黃色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●明るく、楽しい印象を与える
●空間の暗さや陰りを軽減する
●緊張をほぐし、気分を和らげる
●頭の回転を早くし、運動神経を活発にさせる
●食欲を刺激する
●見る人の注意を引き、安全性を高める
●目立つ一方、感覚疲労を招きやすい

黄色には、楽観的な気分を促してポジティブで楽しい気分にする効果があります。言語を司る左脳を活性化させることによって、会話のコミュニケーションや読書などの効率を高めます。

さらに、消化器系を刺激して食欲を増進、集中力を高める、運動神経を活発にさせるといった身体の機能改善にも効果的です。

一方、看板や標識、信号機にも用いられているように、黄色は見る人の注意を引き、危険を予測させます。また明るさの裏返しとして、感覚疲労を引き起こすこともあり、イメージ的には子供っぽい印象を抱かせることもあります。

緑色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●ストレスを減少させる
●神経の緊張を緩和し、気分をリラックスさせる
●眼球へ与える負担や疲労を軽減する
●身体の疲労回復に役立つ
●持久力を高める
●癒される反面、意欲が湧きにくくなる

森林や山といった自然の景色を連想させる緑色は、安心感を与えて気持ちをリラックスさせる効果を持っています。さらに、ストレスを軽減したり、神経系統の緩和などによって体調を整えたりする効果も実験で確認されているのです。

また、緑色は「可視光線」と呼ばれる人間が認知できる色のうち、ちょうど真ん中の波長にあたるため、「もっとも眼球に負担なく見ることができる色」と言われています。

ただし、癒しを与える緑色はさまざまな部屋に取り入れやすい反面、緊張感をほどき精力的な活力も鎮静してしまいます。そのため、緑色を取り入れる部屋は使い分けが必要です。

白色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●清潔、爽快な印象を与える
●空間を広く見せる
●きれいに保とうと意識させる
●眼が疲れる傾向にある
●完全な純白は緊張感を与える

白色は清潔で爽やかな印象を与えます。ごみや汚れが目立ちやすいため、「汚してはいけない。清潔な状態を保ちたい」といった感覚を抱かせるのが特徴です。

また、すべての色要素が混ざりあった白色は、もっとも明るい「膨張色」であるため、部屋を実際よりも広く見せる効果があります。

ただし、完全な純白はかえって落ち着かなさや緊張感を与えたり、眼を疲労させてしまったりするので要注意です。若干黄みがかったオフホワイトなどの色が使用されています。

黒色の主な心理効果は、下記のとおりです。

●高級感、落ち着いた大人の雰囲気、重厚感を与える
●洗練され、締まった印象を与える
●自信を与える
●暗さ、不安感を感じさせる

落ち着いた大人の雰囲気のある黒色は、自信を持たせる効果があります。最高ランクを示す「ブラックカード」にも黒色が使われているように、洗練されていて威厳があり、高級感のある雰囲気を持たせます。

また、すべての色の中で明度のもっとも低い黒色は、「収縮色」の性質を持っており、実際の大きさよりも締まった印象を与えます。さらに、組み合わせたほかの色の色彩効果を引き立てるともいわれています。

落ち着いた印象と同時に暗い印象や不安感を与える側面も持っているため、黒色を取り入れる割合には注意が必要です。

まとめ

色が人間の脳に与える効果はすべてが良いものばかりではなく、注意が必要な側面もあります。部屋の色を考える際、すべてを同じ色に揃えようとする必要はありません。

「寝室では気分を落ち着かせたい」「食卓では食欲を高めたい」など、どんな場面でどんな色彩効果を得たいかを考えて、場所や家具ごとに色や割合を変えてみるのも良いでしょう。

ご自宅での過ごし方を具体的に思い浮かべながら、自分のライフサイクルにもっとも合う部屋の色を決めてみましょう。

【監修者】
南 涼子さん
一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会代表理事 健康検定協会理事
1997年色彩検定一級試験に合格後、色彩専門家として高齢者や認知症に対応する色彩の研究に取り組み、高齢者施設・医療施設、製品のカラーデザインと監修を手掛ける。2000年から現在まで「健康と色彩」「介護と色彩」「医療と色彩」等をテーマとした全国各地での講演、講座、執筆を行う他、各大学、専門学校の講師を務める。TV、ラジオ、新聞、雑誌など各メディアでも活躍中。

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