新型コロナウイルス感染症の感染防止対策として、急速に広まったテレワーク。従業員の多様な働き方に対応できると同時に、通勤時間や事務所維持費などを大幅に削減できることから、企業にもメリットをもたらしています。

テレワークのメリットが注目を集める一方で、テレワーク環境で働く労働者のメンタルヘルスの不調が顕在化しています。テレワークがもたらすメンタルヘルスの不調は、「テレワーク鬱(うつ)」と呼ばれ、対応に追われる企業も少なくありません。

本記事では、テレワークの弊害について調査データをもとに紹介し、対応方法を解説します。

テレワークによるストレス状況

テレワークによるストレス発生は、国内のさまざまな機関・研究所が調査を行っています。まずは、その調査結果を順番に見ていきましょう。

 

一橋大学イノベーション研究センター「新型コロナウイルス感染症への組織対応に関する緊急調査」を引用しARUHIにてグラフ作成

 

こちらは、一橋大学の研究者やHR総研などが共同で実施した「新型コロナウイルス感染症への組織対応に関する緊急調査」の結果です。2020年4月に、国内314社を対象として実施されました。

この結果、調査対象となった企業の84%が、従業員の一部または全員に対してテレワークを実施したと回答しています。

このように、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの企業でテレワークの導入が進みました。半強制的にテレワークの導入を余儀なくされた面もありますが、2020年6月に日本労働組合総連合会が調査した「テレワークに関する調査」によると、テレワークの継続を希望する人は全体の8割にも上るといわれています。

テレワークのメリットとしては、「通勤がなく、時間を有効利用できる」「服装が自由」「好きな時間に仕事ができる」などが挙げられます。テレワークは感染拡大防止に加え、生産性の向上などにおいて多くの人がメリットを感じているといえるでしょう。

一方で、テレワークはメンタルヘルスに不調をきたす社員の増加をもたらしています。

同調査では、全体の44%が「時間の区別がつけづらい」、9.7%が「24時間いつでも連絡が取れることに対するストレスやプレッシャーが大きい」をテレワークのデメリットとして回答しています。

出勤せずに自宅で仕事を行えるテレワークのメリットが、仕事とプライベートの境目をあいまいにし、ストレスを抱えている人も多いようです。

テレワーク鬱の予防策は?

テレワークは、総務省が推奨している働き方であり、企業現場に浸透する流れは今後も変わらないでしょう。

しかし、テレワーク鬱を防いで健康的に勤務をするには正しい対策を講じることが大切です。テレワーク時の働き方について、メンタルヘルス不調を避けるための予防策を紹介します。

定期的なコミュニケーション

テレワーク鬱は、孤立した環境が要因の一つです。そのため、オンラインツールなどを用いてスタッフと積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。

オフィスでは同僚たちと気軽に談笑ができますが、自宅では話せる人が身近にいないことも多く、メンタルヘルス不調に陥りやすくなります。また、上司や同僚とコミュニケーションを取る際も、テキストでのやり取りが中心になると、組織へのエンゲージメント(愛着)を感じにくいでしょう。

こうした問題を解決するために、定期的なオンライン会議を開いたり、スタッフ同士が1対1で会話する機会を設けたりすると良いでしょう。会議だけではなく、雑談の場をオンラインで設けるのもおすすめです。

顔を見て対話することで、自分や他人の健康状態の変化に気付ける上に、メンタルヘルス不調の予防にもつながります。

オンオフのメリハリを意識する

テレワーク鬱は、オンオフの切り替えをはっきりつけることでも予防できます。

具体的には、所定の休憩時間にメールをしたり、就労時間外に会社のシステムにアクセスしたりすることを控えることです。オンとオフをはっきりさせることで、メンタルヘルス不調のリスクを減らせます。

部下を持つ役職者や人事担当者であれば、従業員の勤怠管理を徹底し、無駄な残業防止や生産性の向上に取り組むことが重要です。

企業の朝礼や定期報告を伴う終礼を、決まった時間に実施するのも効果的でしょう。目的を持った定期報告の場をテレワークの勤務時間に組み込めば、仕事とプライベートの切り替えがしやすくなります。

 運動と食事も重要

テレワーク鬱をはじめとするメンタルヘルスの不調は、自宅など閉鎖的な環境がもたらす身体的ストレスが原因であると言われています。適度な運動や、栄養バランスの取れた食事をして生理的ストレスを改善することが、不調の解消に不可欠です。

特に、運動はストレス低減に大きな役割を果たします。スマートフォンやデジタル環境が心身に及ぼす問題点について指摘した、アンデシュ・ハンセン氏の世界的ベストセラー『スマホ脳』でも、「運動がストレスへのスマートな対抗策かつ、最善の方法だ」と説明しています[注1]。

ハンセン氏は、運動による大学生の集中力と不安度の変化を調べる実験を実施しました。その結果、週3回のランニングを2週間続けたグループは、不安の低減効果が最長1週間続いたとしています。

定期的な運動は体調を整えるだけではなく、心の健康にも効果があると言えます。テレワーク中も、健康的な食事や適度な運動を取り入れ、テレワーク鬱のリスクを減らすよう意識してみましょう。

まとめ

テレワークは、通勤時間の短縮や業務時間の効率化、オフィスコストの削減といったポジティブな側面がメディアで強調されています。しかし、ポジティブな側面の一方では、メンタルヘルスの不調というリスクを抱えることがわかりました。

たとえテレワーク中であっても、同僚とコミュニケーションを密に取り、勤務時間のメリハリを付け、出社して仕事をするような業務環境を整える必要があります。また、出かける機会が減る分、食事や運動にも意識を向けることも重要です。

厚生労働省や自治体、医療機関も、テレワーク鬱を防止するための情報を発信しています。それらの情報も参考にして、職場環境の整備に取り組んでみてください。

 

[注1]

スマホ脳(アンデシュ・ハンセン、久山葉子訳)|新潮新書

 

【監修者】
内科医・公衆衛生医師 成田亜希子さん

東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の医師。 国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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