水回りの間取りは何を注意すればよい? 建築のプロが重要視する「洗濯動線」

一回当たりの滞在時間は短いものの、家族の出入りが多い水回り。家事の中で最も重労働だといわれる洗濯を行う場所でもあるだけに、動線を考慮したムダのない間取りで暮らしやすさを実現したいですよね。今回は気になる水回りの動線について、再生建築や新築を幅広く手掛ける渡邉明弘建築設計事務所主宰の渡邉明弘さんにお話を伺いました。

【コーナー別】水回りの間取りプランニング

洗面所

洗面所は、朝の準備から手洗い、風呂上がりなど一日の中で家族が何回も使用するスペースです。また洗濯機に置くことが多い場所でもあるので、洗濯動線の軸となる場所ともいえます。まずは今まで洗面所で何を行ってきたか、洗面所で何が行えたら便利なのかを改めて考えてみましょう。

浴室

浴室には浴室乾燥機をつけるのがおすすめです。浴室は洗面・脱衣室と接している間取りがほとんど。それは脱衣から入浴、着衣までのひとつの動線がスムーズだからにほかなりませんが、必然的に洗面・脱衣室と浴室乾燥機が直結することになります。洗濯機から洗濯物を取り出したその流れで洗濯物を干すことができれば、動線の上でも優秀な存在です。天気にかかわらず洗濯物を乾かせ、洗濯物を外に干したくない花粉の時期などにも重宝しますよ。

トイレ

トイレの位置は、リビング・ダイニングから見えないよう配慮しましょう。トイレが見える位置にあると、扉を開いたときに中が見えてしまい、例えば来客の際にお客さんに使いづらさを感じさせてしまうことになります。とはいえトイレは家の中でよく使うスペース。動線上の使い勝手を意識しつつも一歩曲がった場所に設置するなど、リビング・ダイニングの死角になるようにワンクッション置くのがおすすめです。

また、もし来客が多いお宅であればトイレを家族用・来客用で使い分けるという手も。その場合は、来客用トイレの中に手洗いスペースを設置するなどして、お客さんが洗面所に行かなくても済むように機能を分離させる工夫もできます。

洗面所と脱衣コーナー、一緒がいいの?別々がいいの?

洗面所と脱衣コーナーを一つにまとめるメリットは、一人で複数の機能を利用できることです。動線がコンパクトになることで、脱いだ服を洗濯かごに入れる、お風呂から上がる、体を拭く、洗面所に収納してある下着やパジャマを着る、バスタオルを干す、洗面所を使うという一連の動作が一カ所で済むので、面積もコンパクトに節約できます。

デメリットは、複数人での同時利用が難しいことです。家族が増えたり、異性の家族が大きくなったときなど、洗面所と脱衣コーナーが一カ所にまとまっていると使いづらくなったという声も聞かれます。また、来客の際にお客さんが使う可能性があることも考慮する必要があるでしょう。

逆に、洗面所と脱衣コーナーを別々に設けることによるメリットは家族が複数利用しやすくなること、デメリットは動線が離れてしまうことが挙げられます。

洗面と脱衣所をコンパクトにまとめた水回り(撮影:堀田貞雄/画像提供:渡邉明弘建築設計事務所)

「洗う」「干す」「たたむ」「しまう」 作業場間の移動をスムーズに

日本の家では、洗濯機を洗面・脱衣室に置くのが一般的です。ほかにもキッチンのそば、玄関、洗面台と一緒になったビルドインタイプ、広く設計した浴室に置くというケースなども考えられますが、大切なのは、洗濯機は「洗う」「干す」「たたむ」「しまう」の行動がスムーズに行える場所に設置するということです。

家事の効率化のポイントは、人と物の移動量を減らすことです。洗濯機の場所を軸に、洗濯機と物干し場の距離を短くする、物干し場としまう場所の距離を短くするといった具合に動線を一つひとつコンパクトにしていくことで、ムダのない理想の間取りに近づけることができます。洗濯は重労働。重くて大きいものを持ち運ぶ距離はなるべく短くしましょう。

洗面所の近くにサービスヤードを設置して物干し場にするのも一案です。サービスヤードやサービスバルコニーは、キッチンや洗面所につなげて家の外にちょっとした家事スペースを作り、洗濯物を干す場所などとして使えます。家は敷地境界から50センチメートル程度、離すことが設計上の基本ですが、設計の段階であらかじめ1.5メートル×1.5メートルほどのスペースを確保しておけばサービスヤードが作れます。サービスヤードは家の裏や脇に設置することが多いので、洗濯物が外から見えにくいという利点もありますよ。

キッチンや洗面所の外側にサービスヤードを設けて物干し場に(撮影:渡邉明弘/画像提供:渡邉明弘建築設計事務所)

ヒートショック対策もお忘れなく!

ヒートショックとは、急激な温度変化による血圧の変動によって起きる健康リスクです。特に入浴中に起きやすいため、浴室と洗面所は温度差が生まれないような工夫も必要です。浴室や洗面所にそれぞれ暖房機能をつけることもできますが、家自体の断熱性能を確保することも効果的です。

まとめ

水回りの間取りのポイントは洗濯動線。まずは「洗う」「干す」「たたむ」「しまう」という動きがどう循環するかを考えましょう。また、家族それぞれの通勤・通学時間や帰宅時間といったライフスタイルも大切な判断材料です。家を建てるにあたっては考えなければならないことが多く、何から始めたらいいかわからないという人も多いですが、水回りで人や物がどのように動いているかなど、まずは生活を具体的にイメージしてみることが必要です。

【取材協力】
渡邉 明弘さん
渡邉明弘建築設計事務所主宰
1986年福岡県出身。首都大学東京(旧東京都立大学)大学院・都市環境科学研究科建築学域を修了したのち、株式会社青木茂建築工房で経験を積む。2016年に渡邉明弘建築設計事務所を設立。個人宅の新築をはじめ、ビルやホテル、マンションの再生建築や内装設計など数多くの物件を手掛けている。「新築では得られない建築」をコンセプトに、既存が持つポテンシャルを最大化できるような建築デザインを目指す。
https://www.aki-watanabe.com/

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