【部屋別の収納】後悔しない「収納プランニング」を建築設計のプロがアドバイス

家づくりで最も悩みどころなのが収納プランニング。一般的に、住宅で収納が占める割合(収納率)は10〜20%といわれています。しかし、せっかく家を建てるならたくさんの収納スペースを確保したいと考えてしまいがちで、収納を設ける場所や収納率に頭を悩ませている人も多いようです。収納プランニングではどのようなポイントに留意すればいいのでしょうか。今回は再生建築や新築を幅広く手掛ける渡邉明弘建築設計事務所主宰の渡邉明弘さんにお話を伺いました。

収納の基本は「適材適所」

収納プランニングでは、物をスムーズに出し入れできるかどうかを念頭に置いて考えましょう。部屋が散らかる原因は、収納の場所や使い勝手の不便さから、スムーズに物の出し入れができない状況にあります。毎日使う物なのか、月に数回なのか、ワンシーズンに一回なのか、頻度に応じて収納する場所を分けて整理することがポイントです。

たとえば、廊下など普段からよく通るような場所に収納スペースを確保して、使用頻度の高い物をしまっておくと取り出しやすくなります。一方で、使用頻度の低い物で動線を防いでしまうと物や人の流れが滞ってたちまち使いづらい収納に。また、年一回しか使わないような季節物が収納スペースを取ってしまうことも動線を滞らせる原因となります。動線をきちんと確保した上で、邪魔にならないような収納スペースを作ることが大切ですね。

さらに、収納の基本は「適材適所」です。たとえば避難用具であれば避難経路である玄関やベランダへのアプローチに収納しておくなど、その物に適した場所に収納するのがベストです。

プランニングに活かしたい、部屋別の収納の考え方

キッチン(台所)
キッチンの使用頻度は、実はご家庭によってさまざまです。共働きのご夫婦であれば平日は外食や惣菜がメインという人、また料理はほとんど調理家電に頼っているという人もいます。キッチン収納は、調理の頻度や調理器具の使用頻度によって、どれくらいのスペースが必要なのかを考える必要があります。

キッチン上部のデッドスペースには吊戸棚を作ることが多いです。この収納には観音開きと引き戸の扉、見える収納などが考えられますが、地震のリスクを考えると引き戸が安全です。また吊戸棚は、奥行きが深すぎると奥のものに手が届かなくなってしまいます。キッチン収納の基本は「上は浅く、下は深く」と覚えておくとよいでしょう。

新築の場合には、食器棚や冷蔵庫、炊飯器や電子レンジなどのキッチン家電がデッドスペースを生まないように設計段階からそれらの家具・家電に寸法を合わせます。もし家づくりを機に家電を新調する場合は設計の中盤までにはキッチンに置く家具・家電を決めておきましょう。

キッチン収納は「上は浅く、下は深く」を原則に(撮影:堀田貞雄/画像提供:渡邉明弘建築設計事務所)

リビング・ダイニング
リビングやダイニングには、備え付けの収納を作らないほうがいいかもしれません。その部屋で一番よく使うものを収納するのが「適材適所」ですが、家族やお客さんが集まるリビング・ダイニングはいわば共用スペース。収納はテレビ台や置き家具といった方法で確保ができるので、置き家具が置ける場所を広く取っておくとよいでしょう。

リビング・ダイニングは、備え付けの収納は控えて広々としたスペースを確保(撮影:堀田貞雄/画像提供:渡邉明弘建築設計事務所)

寝室・個室
家の中のプライベート空間である寝室や個室。個室は家族一人ひとりが落ち着ける空間なので、所持品の管理のしやすさ、整理整頓のしやすさなどにフォーカスして収納を考える必要があります。

子ども部屋と夫婦の部屋では、夫婦の部屋の収納を優先することをおすすめします。なぜなら子どもの持ち物は今後どれくらい増えていくのか、将来子どもが何に興味を持ち、何が必要なのかも未知数だからです。また、子どもは時がくれば独立して家を出ていくかもしれません。もちろん子ども部屋にも収納やクローゼットが必要ですが、もし夫婦の部屋か子ども部屋のどちらかにウォークインクローゼットを設置する場合は、夫婦の部屋に設置するとよいでしょう。

水回り(サニタリー)
サニタリーの収納で最も大事なポイントは、毎日使うバスタオルやパジャマ、下着をどこに収納するかという点です。バスタオルや下着を一番よく使うサニタリーに収納するのか、それとも一回一回それぞれの個室から持ちよるのがいいのか、これは各家庭によって、またご夫婦間によっても考え方が異なります。

賃貸の一般的なサニタリーは各家庭の多様なニーズに対応しているわけではないので、いざ家を建てるとなるとどういった水回りが使いやすいのか想像するのが難しいもの。サニタリーの使い方に関しては、家を建てる前にご家族で考えをすり合わせておくことをおすすめしています。

水回りに何を収納するか、家族で相談して決定を(撮影:堀田貞雄/画像提供:渡邉明弘建築設計事務所)

まとめ
住宅のなかで収納が占めるスペースは広いので、将来やライフステージの変化も想定した収納プランニングがしたいですよね。大切なのは、生活を具体的なにイメージすることです。よく使うものは何か、出し入れが頻繁なものは何かなど、普段は無意識に使用している持ち物を、この機に洗い出してみるといいでしょう。

収納の大きさや形は、ぜひ建築士にお任せすることをおすすめします。引き出し何個分、カラーボックス何個分など、なるべく数字にしてコミュニケーションをとることがポイントです。何をどれくらい入れるための収納がほしいのか、より具体的に伝えていただくことで、用途に応じた収納プランニングをご提案させていただきます。

【取材協力】
渡邉 明弘
渡邉明弘建築設計事務所主宰
1986年福岡県出身。首都大学東京(旧東京都立大学)大学院・都市環境科学研究科建築学域を修了したのち、株式会社青木茂建築工房で経験を積む。2016年に渡邉明弘建築設計事務所を設立。個人宅の新築をはじめ、ビルやホテル、マンションの再生建築や内装設計など数多くの物件を手掛けている。「新築では得られない建築」をコンセプトに、既存が持つポテンシャルを最大化できるような建築デザインを目指す。https://www.aki-watanabe.com/

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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