コンクリート打ちっぱなし物件って実際どう? 建築士目線で注意点を解説

デザイナーズ・マンションなどに見られる、洗練されたコンクリート打ちっぱなし仕上げの住空間。コンクリートの持つ無機質な雰囲気に憧れますが、実際の住み心地が気になるところです。そこで今回はコンクリート打ちっぱなしの物件も数多く手掛けている一級建築士の小島広行さん(株式会社 デ・ステイル建築研究所)に、実際に住む場合のメリットとデメリット、また快適に暮らすために気を付けたいことを聞きました。

「コンクリート打ちっぱなし」とは

「コンクリート打ちっぱなし」とはRC(鉄筋コンクリート造)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)の建物の仕上げの一つで、床や壁、天井を構造体であるコンクリートそのままの状態で仕上げるものです。

マンションなどの集合住宅の場合、外壁や隣戸との境の界壁はコンクリートですが、専有部分内の間仕切り壁は石膏ボードを使い、壁紙や塗料による仕上げが施されています。つまり、「コンクリート打ちっぱなし」と表示されたマンションであっても、すべての壁ではなく一部の壁がコンクリート打ちっぱなしになっているということになります。
また外壁と内壁のいずれかを打ちっぱなし仕上げとし、外壁をタイル仕上げ、あるいは、内壁をクロス張りや塗装仕上げとする場合もあるそうです。

画像提供:デ・ステイル建築研究所

 

コンクリート打ちっぱなし物件のメリット

「内壁がコンクリート打ちっぱなしの場合、最大のメリットは意匠性の高さ」と語る小島さん。窓などの開口部を広く取れることに加え、仕切りや柱のないダイナミックなデザインも可能で、外観についても直線を多用した現代的なデザインや直線、曲線を組み合わせたモダンなデザインが可能。「コンクリートはアルミやステンレス、ガラスなどの素材と相性が良く、スタイリッシュな空間に住みたいという人に向いています」(小島さん)。
また、界壁や床をコンクリートにする場合は、遮音性に優れているため、シアタールームなどにも適しているほか、建築物として耐久性や耐火性も発揮するそうです。

画像提供:デ・ステイル建築研究所

 

コンクリート打ちっぱなし物件のデメリット

コンクリートは熱伝導率が高いため、デザイナーズ物件などに見られる外壁と内壁ともにコンクリート打ちっぱなし仕上げの場合は、どうしても外気の影響を受けやすく、夏は暑く、冬は寒くなる傾向にあるのだそう。さらに窓が大きい物件は、窓からも熱気や冷気が伝わるそうです。そのため、冷房も暖房も効きづらく、光熱費がかさむ場合があります。また、結露が起きやすいため、カビの原因になることも。「結露がある場合には、こまめに拭くなどの対策が必要となります」(小島さん)。

 

コンクリート打ちっぱなしの物件選びのポイント

一方で、コンクリートには熱容量が大きいという特徴もあります。この熱容量を活かすために、外壁の外側に断熱材を施し、外気との接触を断絶します。これを、外断熱工法といい、室内が温められれば、コンクリートが熱を蓄熱し、温もりある空間を演出するのだとか。冷房時も同様に、室内の冷えた空気を逃さないため、外断熱工法により、気温の寒暖のない快適な室内環境が可能となるそうです。

「コンクリート打ちっぱなしの物件を選ぶなら、外断熱工法かどうかを確認するのがおすすめです」(小島さん)。

 

コンクリート打ちっぱなしの住宅を建てる場合の注意点

さて、実際にマイホームをコンクリート打ちっぱなしで建てたいと思ったときに注意すべき点は何でしょう。小島さんによると、まずは「外壁」「内壁」のどちらを打ちっぱなしにするかを決めることから始めることがポイントとのこと。

どちらの場合も断熱施工することで快適な居住空間となるそうです。
内壁、外壁ともに打ちっぱなしにする場合、間に断熱材を挟んだ施工を行いますが、いずれかを打ちっぱなしにする場合に比べるとかなり費用が割高になります。

・「内壁」を打ちっぱなしにする場合

内壁を打ちっぱなしにする場合、居住空間のどの部分を打ちっぱなしにするかを決める必要があります。例えば、玄関ホールや階段などの共有部分やリビングのみを打ちっぱなしの内壁にし、寝室などのプライベートな空間はクロスや塗装などの内装を施す場合もあるそうです。

また、すべての間仕切りをコンクリートにしてしまうとリフォームが難しくなるため、部屋の用途によってはあえて間仕切りをコンクリートにしないほうが良い場合もあるのだとか。例えば、成長に応じて使い方が変化する子ども部屋などがそれに該当します。

さらに、木造と違い、内壁が打ちっぱなしの場合には、完成後に室内のスイッチ、コンセントの数や位置の変更、また水回りの設備の移動なども困難になります。そのため、「設計の段階で適切な場所や数などを決定しておくことが必要」とのことです。

画像提供:デ・ステイル建築研究所

 

・「外壁」を打ちっぱなしにする場合

外壁を打ちっぱなしにする場合、仕上げの段階でコンクリートの表面に被膜を作り、水が染み込むことを防ぐ「疎水材」を塗布することで、汚れを防ぎ、耐久性を高めます。

「疎水材の塗布は十数年に一度は行う必要があります。費用はメーカーや施工業者によってさまざまですが、平均すると1平方メートルあたり3,000円前後が目安となるでしょう」(小島さん)。

 

建築費用はどれぐらいかかる?

コンクリート打ちっぱなし物件の建築費用について小島さんは「一般的に木造住宅に比べ、1.5倍程度は必要と言われています。また工期も2階建ての場合で1年ほどかかることが一般的」と話します。

また、小島さんによると、「コンクリート打ちっぱなしの住宅を、と考えたときに最も重要なのが設計士や施工店選び」とのこと。

経験豊富で専門知識があり、コンクリ―トの特性を知り尽くした設計士であれば、施主の希望やライフスタイルを丁寧に聞き取ったうえで、断熱・結露対策といったリスクを回避しながら設計を行い、コンクリート物件の施工経験の豊富な工務店と連携しながら施工を行うことができると言います。

設計士や設計事務所などのホームページには過去に手がけた物件が掲載されていることが多いため、それを参考に選ぶのも一つの方法とのことです。

 

まとめ

デザインの自由度の高さやスタイリッシュなイメージから人気の高いコンクリート打ちっぱなし物件。一般的な木造住宅に比べ費用や工期もかかるので、経験豊富なプロとの出会いが理想のマイホーム実現のための第一歩と言えそうです。ホームページやSNS、住宅専門誌などで十分な情報収集を行うことから始めてみてはいかがでしょうか。

 

【取材協力】
小島 広行さん
一級建築士
株式会社 デ・ステイル建築研究所。全国各地で個人住宅から学校、公共施設までを幅広く手掛け、数々の建築賞も受賞。 「誰が住んでも変わらない汎用性のある家」ではなく、ほかの誰でもない、クライアントにとって最良の家を造ることを最優先とすることを大切にし、クライアントの人生と向き合い続けることが、建築を設計することにおいて最大のコンセプト。https://kojima-style.com/

 

 

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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