体にやさしい「抗酸化工法」の家とは? シックハウス症候群にも効果期待

新築の家に住むことで心身に変調をきたす「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」が問題となって久しいですが、最近、体にやさしい家づくりの手法として、「抗酸化工法」という言葉を耳にした人もいるのではないでしょうか。住宅の新築やリフォーム時に導入することができるこの工法を確立し、普及に努めている、佐賀県佐賀市本庄町の「ASK株式会社」の佐々田共一さんに詳しくうかがいました。

抗酸化工法とはどのような工法?

「鉄が錆びたり、物が腐ったり、人が老いたりする原因の一つは『酸化』です。人や動物は体内の活性酸素が増えることで病気になったり、場合によっては正常細胞ががん化したりするとも考えられています。こうした錆・腐食・病気の進行を、『抗酸化溶液』と呼ぶ特殊な液体を使用して食い止める工法のことを『抗酸化工法』と呼んでいます」とメカニズムについて話す佐々田さん。

開発したのは、ASK株式会社・代表取締役会長でもある北海道白老郡白老町在住の一級建築士・會田伸一さん。
建築に使う土を模索中に、物を腐らせない液体を偶然発見しました。その謎を研究するうちに、特殊酵素(液体)の力で錆や腐食を防ぐ工法にたどり着いたそうです。

「この特殊酵素は、物質の酸化を妨げ、腐敗も雑菌の繁殖もさせない働きがあります。通常、タンパク質である酵素は、熱やpHにより変質しますが、抗酸化溶液であれば、建材のみならずセラミックを作る際に粘土に混ぜて高温で焼いても効果を持続することがわかっています。強力に、しかも長期間にわたり酸化を防ぐ化学反応を発揮し続けます」と佐々田さん。

このように、特殊な工具や技術を必要とせず、ローコストで高い効果を発揮しつつ、健康住宅の実現が期待できる画期的な方法として、全国に広がりを見せています。

“酸化”の一例:花が枯れる(左)。抗酸化工法の建物内では酸化が防げるために、色が鮮やかに残る(右)(画像提供:ASK株式会社)

抗酸化工法を導入するメリット

抗酸化工法を用いることで考えられるメリットとして注目すべき点は、シックハウス症候群(化学物質過敏症)の原因とされるトルエンやキシレン、ホルムアルデヒドなどの有害化学物質の分解除去が可能なこと。

また、結露やカビを防止し、たばこやペットのにおいといった生活悪臭を分解する効果もあるといいます。帯電防止効果やハウスダストの抑制効果によって床、壁、天井が汚れにくい、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる省エネ効果も高いなど、快適な住空間に必要な環境が「抗酸化工法」によって実現可能と佐々田さんは説明します。

さらに、床下のシロアリ、ダニやゴキブリ、蚊、蛾、ハエ、ネズミなどの害虫類が寄り付かなくなる効果が期待できることもポイント。施工時のメリットとしては、効果が通常施工の倍以上持続するのでメンテナンスコストが半減すること。また、吸着剤ではないので、効果が薄れず持続するといわれています。

また、分子間の結合力が強いため、接着・乾燥が早く工期が短縮できるほか、基礎コンクリートの強度も増すなど、効果だけではないコスト削減につながる特徴にも関心が高まっています。

施工例(画像提供:ASK株式会社)

「抗酸化工法」のタイミング

新築・既築を問わず、基礎や内装、家具処理、床材などすべての工程で導入できるのが「抗酸化工法」の大きな特徴。

たとえば基礎コンクリート工事では、生コンに抗酸化溶液を規定の割合で混ぜ、かくはん後に打設します。床、壁、天井の下地材では、「いきいきコート」という内装調湿材などを塗布します。使用する建材を抗酸化処理することで、大気中で揮発する化学物質を除去するだけでなく、湿度を調整する効果も望めるそうです。

そのほか、畳やカーペット、押し入れや家具などに塗布することで、害虫対策や結露、カビ対策などの効果が期待できるため、「全工程で導入を依頼されることが多い」と佐々田さん。

「他工法は完成しないと効果がわかりませんが、抗酸化工法は、抗酸化溶液を配合した日用品も作られているので、『消臭効果があるのか?』『省エネ効果があるのか?』『化学物質の分解消去ができるのか?』『化学物質過敏症の人でも住めるのか?』といった疑問を自分で試すこともできるのです」。

納得したうえで、予算に合わせて施工面積を選択できるのも勧めやすいポイントだと話します。

抗酸化工法資材を下地に塗布、壁材に混入するだけ。後は通常の作業でOK(画像提供:ASK株式会社)

抗酸化工法を用いた家づくりで、健康な暮らしを

実際に「抗酸化工法」の家に住むユーザーから、「すがすがしい空気の健康住宅になりました」という喜びの声を多く聞くと話す佐々田さん。

「建材に有害物質が含まれていることは知っていても、天然素材を使用すると大変なコストがかかり二の足を踏む方もいらっしゃいます。抗酸化工法なら、家具や家電など、建築後に設置する調度品からも、不安物質を取り除くことが可能。新築・リフォームが安価で済むうえ、環境浄化も期待できる夢の技術です」と胸を張ります。

住まいの問題を解決に導き、住む人々が健康に暮らせる技術。同時に、地球環境の浄化も可能にする未来がありそうです。関心がある人は、全国の施工店に問い合わせてみてはいかがでしょうか。簡単な施工指導で導入できるので、近隣の工務店などに導入を相談することもおすすめだそう。ぜひ「抗酸化」の力を実感してみてください。

【取材協力先】
ASK株式会社 代表取締役社長 佐々田 共一さん
1964年長崎県福江市(現・五島市)生まれ。大学卒業後、証券会社、外資系保険会社の営業を経験。抗酸化溶液の開発者・會田伸一氏と出会い、2007年、株式会社会田総合研究所(現・ASK株式会社)を設立。安全安心な家づくりから健康回復が実現できる家づくりまで幅広く取り組んでいます。
URL:http://www.aida-soken.co.jp/

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