2021年3月23日、国土交通省が「令和3年地価公示」を発表しました。それによると、全国全用途で6年ぶり、住宅地で5年ぶり、商業地で7年ぶりの下落となりました。コロナ禍の影響で全体的にダウンしているところが多いのですが、その変化の度合いは地域や用途によって異なるので注意が必要です。

一般の土地取引の指標になる地価公示

「地価公示」というのは、都市計画区域などにおける標準値の毎年1月1日時点の正常価格を、国土交通省土地鑑定委員会が判定・表示するものです。1970年に調査が始まり、2021年の今回の調査は52回目に当たります。

調査対象は全国の住宅地、商業地、工業地など2万6,000地点に及び、その結果は、一般の土地取引の指標となるもので、公共事業用地取得に当たっては、取得価格算定の規準とされます。

それだけに、今後の土地取引だけではなく、新築住宅価格、中古住宅価格などにも大きな影響を与えることになりますから、マイホームの取得を考えている人は、その結果に注目しておきたいところです。

参考:国土交通省「令和3年地価公示」

商業地に比べて「住宅地」の下落幅は小さい

その2021年地価公示、住宅地は5年ぶり、そして商業地は7年ぶりの下落となりました。

いうまでもなく、下落の最大の要因は2020年初頭から広がった新型コロナウイルス感染症の拡大です。世界的に経済・社会活動がストップし、ヒトやモノの動きが止まったのですから、それも仕方のないところでしょう。

2021年の地価公示の全国全用途の平均は前年比0.5%の下落です。2020年は1.4%の上昇でしたから、大きく変化しています。

ただ国土交通省の発表では、「地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なる」としています。全国一律に下がったわけではなく、用途や地域によってバラツキがあるということです。

用途の違いでみると、住宅地の全国平均は前年比0.4%の下落ですが、商業地は0.8%の下落でした。商業地の2020年は3.1%の上昇でしたから、差し引きすると3.9ポイントのダウンになります。それに対して、2020年の住宅地の平均は0.8%の上昇でした。そこから2021年は0.4%の下落ですから、1.2ポイントのダウンにとどまります。

需要に支えられた住宅地は下がりにくい

商業地は緊急事態宣言にともなう飲食店の営業時間短縮、インバウンド需要の消滅などで大きな影響を受けました。

東京圏では中央区銀座や台東区浅草、新宿区歌舞伎町などの調査地点で10%以上のマイナスを記録し、大阪圏では大阪市中央区道頓堀・宗右衛門町など、ミナミの繁華街の調査地点の多くが20%以上の下落になりました。

対して、住宅地は需要に支えられているので、商業地ほどの下落にはなっていません。東京圏で最も下がった調査地点でもマイナス8%台で、大阪圏はマイナス5%台でした。

コロナ禍で先行き不透明感が強いとはいえ、ワークスペースを確保できるひと回り大きな住まい、より安全・安心な住まいなどを求める動きが強まり、住宅は新築・中古、マンション・一戸建てにかかわらず好調に売れています。

そのため、不動産会社や個人の用地取得意欲が旺盛で、住宅地は商業地ほどには下がっていないのです。地価が下がれば、やがて住宅価格も下がるのでは――という期待はあまりできないかもしれません。

札幌、仙台、広島、福岡では依然として地価が上がっている

以上のように、コロナ禍の地価への影響は、用途による違いが大きいと同時に、地域別でも差があります。三大都市圏よりは地方圏のほうがコロナ禍の地価への影響が小さいのです。

先の図表1で住宅地の都市圏別の動きをみると、東京圏、大阪圏はともに0.5%の下落に対して、名古屋圏は1.0%と下落幅が大きくなっています。三大都市圏平均では前年比0.6%のマイナスです。

それに対して、地方圏は0.3%の下落にとどまっており、なかでも札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市については2.7%のアップになっています。

都道府県別の上昇率をみても、北海道と福岡県が1.5%の上昇率でトップにたち、仙台市のある宮城県が1.0%で3位につけています。

コロナ禍以降、地方への移住志向が強まっているといわれていますが、地方といっても、人口の少ないエリアではなく、三大都市圏並みに交通アクセスや生活利便施設が充実しているエリアが人気になっているのではないでしょうか。

東京23区でも港区と目黒区だけは下がっていない

では、三大都市圏は一律に下がっているのかといえば、そんなことはありません。

今回の地価公示に関して大手不動産会社トップは、

「中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた近郊の地点では地価上昇が継続するなど、根強いが需要がある」(東急不動産株式会社代表取締役社長・岡田正志氏)※同社プレスリリースより抜粋

「都心部及び近郊の交通利便性の高い住宅地や、地方主要都市では引き続き上昇が見られる」(野村不動産株式会社代表取締役社長・宮崎誠一氏)※同社プレスリリースより抜粋

とコメントしています。

東京圏における市区町村別の住宅地上昇率ランキング1位の千葉県君津市、4位の千葉県木更津市、5位の千葉県袖ヶ浦市は東京湾アクアラインで交通アクセスに恵まれているものの、地価や住宅価格は東京圏のなかではかなり安くなっているため注目度が高まり、地価が上がっている可能性があります。

同じように3位の埼玉県戸田市、6位の埼玉県川口市、埼玉県蕨市も東京に隣接する利便性の高いエリアにある割には地価や住宅価格の割安感があって、注目されています。

また、東京都区部の平均はマイナス0.5%で、23区中21区が下落しているのですが、港区と目黒区だけは0.3%のアップと、上昇を継続しています。住宅地として人気が高く、ともに区の面積がさほど大きくないこともあって、希少性の高いエリアといっていいでしょう。

コロナ禍が終息すれば地価上昇の可能性も

では、この先はどうなるのでしょうか。

最初の緊急事態宣言が発出された2020年前半には地方四市を除いて軒並み地価は下落していますが、第一波と第二波が過ぎ去って、比較的落ち着いた状態が続いた後半には、プラスに転じています。それでも年間ではマイナスなのですが、今後の地価動向は、善くも悪しくもコロナしだいということを示しているのではないでしょうか。

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)では、全国のモニター会員を対象に不動産市況取引DI調査を実施していますが、その1月調査に関して、同連合会会長の坂本久氏は、

「前回調査と比べて5.5ポイント改善され、コロナ禍の中、足元では確実な回復の兆しも見受けられるところである」(同連合会お知らせより抜粋)

としています。今後、コロナ禍が終息すれば地価は再び上昇に転じる可能性を示唆しているのではないでしょうか。

経済活動を着実に回復させることが重要に

そのため、一般社団法人不動産協会理事長で、三井不動産株式会社代表取締役社長の菰田正信氏は、今回の公示地価に関して、

「企業業績のばらつきや、個人消費や雇用にも弱さがみられ、先行きも不透明な状況である。感染防止策を徹底しながら、経済活動を着実に回復させていくことが重要だ」(同協会お知らせより抜粋)

とコメントしています。

社会の安全・安心のため、また地価や住宅価格の安定、そして住宅市場の活性化のためにも、国や自治体、産業界がコロナ禍抑制策を徹底すると同時に、私たち一人ひとりの自覚ある生活が求められているのではないでしょうか。

 

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