4月から何が変わる⁉ 暮らしに関わる2021年度の改正点をFPが解説

もうすぐ4月、新年度が始まりますね。2021年1月からすでに変わっている制度などもありますが、新年度2021年4月からの暮らしに関わることにはどんな変化があるのでしょうか?

まず下記一覧にまとめてみました。

2021年4月から実施される暮らし関連の新たなこと(筆者作成)

このなかで、注目されている項目をいくつか紹介します。

1.消費税の「総額表示」が義務化

総額表示義務は、われわれ消費者が値札や広告により、商品を購入したり、サービスを選んだりする際、いくら支払うのかという「消費税額を含む価格」を一目でわかるようにして、価格の比較も容易にできるようにするためのものです。

実は、総額表示義務は2004年4月より実施されていましたが、2014年4月と2019年10月の、2度にわたる消費税率の引き上げに際して、消費税別価格のみの価格表示も認めるといった特例が設けられていました。

この特例が、2021年4月1日より廃止され、消費税総額表示が義務化されます。できれば計算が面倒な消費税8%のうちから義務化していただきたかったところです。

たとえば、本体10,000円の商品であれば、今後は

「11,000円」
「11,000円(税込)」
「11,000円(税抜価格10,000円)」
「11,000円(うち消費税1,000円)」
「11,000円(税抜価格10,000円、消費税1,000円)」

といった表示となり、「10,000円+税」「10,000円(税別)」「10,000円(本体価格)」といった表示がなくなり、わかりやすくなります。

この、総額表示義務の対象は、お店、Web、チラシ、新聞やテレビの広告などすべて対象です。すでに早くから消費税込みの総額表示にしている会社もありますが、この義務化を受け、「ユニクロ」や「GU」を展開する株式会社ファーストリテイリングは「本体価格」をそのまま「税込み価格」にする実質約9%の値下げを始めるなど、企業間での価格競争も起きているようです。

われわれ消費者としては、支払う価格が明確になって、値段の引き下げ競争というのはありがたいことですが、業者にとってはなかなか大変です。

2.教育資金…相続人ではない孫は相続税の2割加算の対象に

父母・祖父母・曾祖父母から資金の一括贈与を受けた場合、贈与される人1人につき1,500万円までは贈与税がかからない

子や孫・ひ孫に教育資金の一括贈与をする、という場合、一定の金額まで贈与税がかからない、という特例がありますが、「令和3年度税制改正」で、2021年4月1日以降の教育資金の一括贈与について、制度が一部改正されることになりました。

そもそも教育資金の一括贈与の非課税特例とは?

子や孫・ひ孫(前年の所得1,000万円以下かつ30歳未満)が教育資金にあてるために、父母・祖父母・曾祖父母から資金の一括贈与を受けた場合、贈与される人1人につき1,500万円までは贈与税がかからない、という特例です。この制度を利用する際には、金融機関と教育資金管理契約を結び、金融機関に専用の口座を作り、入出金や税務署への届け出は金融機関を通じて行います。

ちなみに、「教育資金」には、入学金・授業料・入園料・保育料等はもちろん、学習塾や習い事など教育を受けるために学校や事業者等に直接支払われるお金も含まれます(学校等以外のものに支払われるものについては 500 万円を限度とする等一定の条件あり)。

利用するにはちょっと面倒ですが、まとまった資金を非課税で贈与でき、子どもや孫の教育資金に使えるという点で、主に相続対策で活用されています。

なお、贈与を受ける人が、30歳に到達した場合(学校などへ在籍中の場合は40歳まで延長可能)、受贈者が死亡した場合、資金を使い切ってその口座の契約終了に同意した場合などでは、金融機関との契約は終了します。ただ、もし、契約終了時点で口座に残高があった場合(つまり贈与した資金を使い切れなかった場合)、贈与税の対象となる点には注意が必要です。

・贈与する人(父母・祖父母・曾祖父母)が死亡した場合は?

では、子や孫・ひ孫が教育資金を使い切る前に、贈与してくれた祖父母等が亡くなった場合にはどうなるのでしょうか。

原則、教育資金一括贈与から3年以内に贈与した祖父母等が死亡した場合には、その教育資金は相続・遺贈により受け取ったものとみなされて、相続税がかかります(ただし、受贈者が23歳未満、学校等に在学している場合、教育訓練給付金の支給対象となる教育資金を受けている場合には適用されません)。

実は、この制度、2021年の税制改正で適用期限が2023年3月31日まで延長されたのですが、同時にこの部分が、節税対策としてはうれしくない形に一部改正されます。改正点は主に以下の2点です。

(1)課税対象が拡大

(改正前)贈与者死亡前3年以内の贈与に関わる残額が相続税の対象
               ↓
(改正後)すべての贈与に関わる残額が相続税の対象

(2)相続税の2割加算が適用

相続税が加算される際、法定相続人ではない、孫・ひ孫の場合、「相続税が2割加算」

たとえば、祖父から孫が教育資金贈与の特例を使って資金の贈与を受けたとします。改正前の制度では、教育資金一括贈与から3年超経過して祖父が死亡した場合、たとえ、使い切れなかった資金があった場合でも、相続税は発生しません。

ところが、今回の改正で、使い切れなかった資金があった場合には、相続税が課税され、かつ、相続人ではない孫への贈与であるため、相続税が2割増しになってしまうのです。

孫のための教育資金が必要な際に、祖父母が認知症になってしまってお金を動かせなくなるケースもあります。相続対策やそんなケースに備えて制度の活用をするのは効果的ですが、2021年4月1日以降に孫やひ孫に対してこの制度を利用する場合には、口座に資金が過度に残らないよう、計画的に使うことも必要ですね。

なお、この2割加算については、結婚・子育て資金の一括贈与分の残額にも適用されます。

3.働き方改革に関すること

2021年4月1日より新たに70歳までの就業確保が努力義務化

働き方改革関連法の一つとして、2021年4月からは中小企業でも同一労働・同一賃金のルールが適用されます(大企業では2020年4月から適用済み)。

これは、正社員と、有期契約労働者やパートタイム労働者といった非正規社員との間の「理由のない待遇差は認めない」という内容のもので、待遇には、基本給、昇給、賞与、各種手当だけでなく、福利厚生などについても含まれているというのがポイントです。非正規社員の方にとっては朗報ですね。

さらにもう一つ、雇用延長に関する改正があります。現在、高年齢者雇用安定法では、原則65歳までの雇用確保を企業に義務付けていますが、2021年4月1日より新たに70歳までの就業確保が努力義務化されます。

対象事業主は、「定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主」「65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主」と現時点では限られていますが、70歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入などのいずれかの措置をとることが求められています。
 
実はこの制度改正の背景には、来年2022年4月に施行される年金繰り下げ受給年齢の引き上げ(現行の70歳までから75歳までに引き上げ)があります。70歳まで働いて、年金を5年間据え置いて増額し、75歳から受給してはどうでしょうか、という国のこれからの方針が反映されているといえるでしょう。

人生100年時代、公的年金だけでは悠々自適の暮らしは難しいなかで、なるべく長く働いて少しでも収入を増やす、というのは確かに一つの解決策ではあります。

何歳までどのようなペースで働くのかなど、働き方についてもじっくり考える必要がありますね。ちなみに、筆者は、頭と体が動くうちは生涯現役でいたいと思っています。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア