2020年コロナ禍により急速に普及し始めたテレワーク。通勤ラッシュの緩和ぶりを見ても、オフィス街の人通りの少なさを見ても、かなり多くの人が在宅勤務をしているのは事実のようです。駐車場予約アプリakippaが2021年2月に実施した調査でも、57.4%が職場にテレワークが導入されていると答えています。(下記図参照)

出典:『テレワーク導入状況調査』駐車場予約アプリakippa調べ

テレワークをする場所は「自宅」という人が59.2%。カフェやシェアオフィスを利用している人もいるようですし、「その他」の中には、ワークブースや図書館などが含まれているそうです。

出典:『テレワーク導入状況調査』駐車場予約アプリakippa調べ

 
しかし、学校もリモート授業となり、家族みんなが自宅で勉強したり仕事をしたりしていたら、いろいろと困った状況が生じているのではないでしょうか?

そこで、いま話題となっているワークブースやサービスを、実際に足を運んで取材してきました。時代と逆行していますが、この目で見て体験してみないとわからない今急速に進みつつある働き方改革の実態をご紹介します!

コンパクトサイズの個室型ワークブース「テレキューブ」

昨年末、セブン-イレブン店内に設置されて話題となったのが、テレキューブサービス株式会社が展開する個室型ワークブース「テレキューブ」です。もともとは、東京オリンピックや大阪万博など大規模イベント時の混雑緩和のために、推奨されていたテレワークに向けに開発されたブースですが、コロナ禍で急激に設置台数が増えているそうです。

「2018年11月から実証実験を行い、2019年8月に会社を設立してオフィスビルを中心にサービス展開をしてきましたが、設置台数は当初の約40台から約130台と3倍強、稼働率も昨年2月から12月で約3倍になっています」(テレキューブサービス 事業推進 山本智さん)

新丸ビル地下1階に設置された9台は稼働率が非常に高いという

取材に伺ったのは、東京駅に直結している新丸ビル地下1階。東京メトロ丸ノ内線からすぐの、オフィス用エントランスは目の前にスターバックスがあり、人通りも多いため安心して利用できそうです。

「事前に会員登録をして予約を入れ、スマホでブースに表示されたQRコードを読み取ると扉が開き入室できる仕組みのため、利用中に誰かに扉を開けられる心配はありません。また、騒音や音漏れを遮断するために壁には防音材が使われていますが、天井からは音が入る構造となっているため緊急放送などを聞き漏らす心配はありません」(山本さん)

幅1,200×奥行1,200×高さ2,315mm。ソファは横にカバンを置けるほどゆったりしていて、足元にはキャリーバックも置ける。抗菌コートに換気機能もついて感染予防策もバッチリ

「利用料金は個人の場合275円/15分、利用時間は15分刻みで設定できます。法人向けサービスも展開していて、採用の際のリモート面接の場所として、学生に無料クーポンを配布する企業も登場しています」(山本さん)

取材してみて意外だったのは、ビジネス利用を想定したサービスにも関わらず顔映りが良いように照明が工夫されていた点です。これは、女子学生のなかで面接用の動画撮影やオンライン面談のニーズが高い大学で、サービス検討を行ったおかげだとか。

「テレキューブは当初、Web会議に加え移動途中での作業場所として、また声を出すプレゼンの練習などの利用を想定していました。しかしユーザーに利用方法を聞いていくと、例えば女子大学生の場合、就活に動画でエントリーすることもあり、動画映りが印象を左右するため配慮しなければならないというニーズがあった。そこで、当初はスマホホルダーとドーナツ型ライトを設置しました。現在は、それに改善を加え前面の壁の両端2ヶ所に、明かりの強さと色味を調光可能なライトを設置して、背面の壁に影を落とさないよう工夫したブースも設置しています」(山本さん)

東京駅丸の内南口にある商業ビル「KITTE」1階には2台設置

基本的にオフィスビルや商業施設などの建物内に設置されているため、常時強制換気にすることで施設の空調を利用しているとのことですが、エアコン設置タイプもあるそうです。
またモニターは付いていませんが、調光可能な照明で顔映りを気にすることなくWeb会議や面接に参加できるのは大きなメリットです。

JR東日本も駅構内で「STATIONBOOTH(ステーションブース)」を展開

ちなみにテレキューブの取材後、「稼働率が高いってホントかな~」と疑り深い筆者は、JR東日本のSTATIONBOOTHを、東京駅の横須賀線・総武線快速のコンコースまで確かめに行ってきました。平日の午後4時ころ、7台中なんと5台が使用中! KITTEに設置されたテレキューブも2台中1台が使用中で、正直ビックリしました。

東京駅、横須賀線・総武線快速のコンコースに置かれた7台のワークブースで空室を示す緑のランプがついていたのは2台だけ

「快適性と安全性を追求した富士ゼロックス「CocoDesk(ココデスク)」

東京メトロ後楽園駅構内に設置されたCocoDesk。撮影は平日午後4時半ころ使用中だった。幅1,950×奥行1,100×高さ2,393mm

コロナ禍以前から、働き方改革が進む中でオフィス以外のワークスペースのニーズの高まりを受けて開発されたのがCocoDeskです。エアコン、大型モニター、防犯カメラ、可動式チェア、足が伸ばせ背伸びができる広さ、人間工学に基づいた内部設計、集中しやすい照明など、快適性を追求したスペックの高さが特長です。
日本経済新聞社が主催する、国内で発売された主要製品やサービス2万点の中から選定される「2020年日経優秀製品・サービス賞 日経産業新聞賞」も受賞しています

「弊社では、2018年6月から2019年7月まで東京メトロと実証実験を実施しました。当初は天井もエアコンもなく、夏は暑く冬は寒い、駅の騒音が気になる、狭くて身動きが取れないといった利用者の声もあり、快適性を追求して改良を重ねていった結果、現在の仕様となったわけです。大型モニターも実験的に設置したところ好評だったため、常設としました」(富士ゼロックス アドバンスドインダストリアルサービス事業本部 谷口智郎さん)

利用者のほとんどが使用するという大型モニターと、バッグが置けるほど広いデスク。可動式チェアを採用しているワークブースはCocoDeskだけ

「弊社のサービスは2020年2月20日から本格始動しました。ただその後、緊急事態宣言が発令されたため1ヶ月ほど利用を停止し、その間に感染症対策を施しました。現在、サービス開始から1年で会員数は1万人を突破。利用者数もコロナ前に比べると18倍以上になっています」(富士ゼロックス アドバンスドインダストリアルサービス事業本部 山口晃さん)

CocoDeskは自動消火装置や防犯カメラの設置、扉には開閉時に通行者にぶつからないよう引き戸を採用するなど、きめ細やかな配慮が施されています。また、無線LANの認証方法を独自開発するなど、快適性へのこだわりも徹底しています。

「無線LANをご予約時間に快適に利用いただけるよう、弊社では無線LANの認証方法を独自開発しました。会員の方には、一人ひとりに個別のSSIDとPWを付与していますので、CocodDeskの会員様限定で、かつ、ご予約いただいた時間帯に、ブースに設置された無線LANに接続できるようにしています。そのため、他の方は接続できません。また、付与されたSSIDとPWはパソコンに一度設定すれば、どこのCocoDeskブースでもすぐに無線LANに接続でき、ご利用が可能です」(谷口さん)

防犯カメラと換気扇、スプリンクラーも設置されている。大型モニターにノートパソコンをつないで利用できる

住宅街の商業施設に設置したワークブースも好調

東京メトロの駅構内を中心に展開してきたCocoDeskですが、今後はコロナ禍での在宅ワーク増加に伴い、郊外の駅や家近の商業施設にも展開していく予定だと言います。
その第一弾として導入を決めたのは、神奈川県横浜市の住宅街にあるショッピングセンター「トレッサ横浜」です。

トレッサ横浜1階のフードコート至近に設置されたCocoDesk

「トレッサ横浜のCocoDeskは2021年2月8日にサービスを開始しました。住宅地に近接する商業施設であっても、ご自宅でのテレワークが難しいお客さまや就職活動中の大学生の方などにニーズがあるのではないかと思い、お客さまへのサービス向上の一環として導入を決めた次第です。在宅ワークをするお客さまが増えた影響か、どちらかと言えば平日のお客さまのご来場数が堅調な印象があり、人の流れが大きく変わったのを実感しています」(トレッサ横浜 運営部担当部長 道本貴俊さん)

「利用料金は個人の場合275円/15分で、15分単位で利用予約が可能です。トレッサ横浜の場合、都心部のブースに比べ休日の稼働率が高い傾向が見え、平日だけでなく週末のご利用も進んでいることが伺えます。またCocoDeskは快適性を追求したこともあり、平均利用時間は当初の想定より長く、1回1時間半ほどとなっています」(富士ゼロックス 山口さん)

オフィスに個室が出現! コクヨの「WORKPOD(ワークポッド)」

家でもなくオフィスでもない駅構内やオフィスビル、商業施設にワークブースが登場するだけでなく、オフィス内に設置できる個室ブースも登場しています。開発したのは、文具やオフィス家具でいつもお世話になっているコクヨです。

 

WORKPOD1人用/幅1100×奥行1100×高さ2309mm。上はソファータイプ、下はスタンディングタイプ。中に入ると外部の音や声はほとんど気にならないし、声が外に漏れる心配もない

「個室ブースの企画は、コロナ前から働き方改革として生産性や創造性を高める目的で商品化を進めていました。最近のオフィスは、オープンで境界のないレイアウトやフリーアドレスが導入され、カフェのような空間でリラックスしながら社員同士がコミュニケーションを高められる、社内の風通しを良くするといったメリットがあります。一方で、一人で仕事に集中したい、外部と込み入ったWeb会議をするのに声が外に漏れない個室が欲しい、またコロナ禍で感染症拡大防止というニーズが出てきたのです。しかし、会議室を新設するには大掛かりな工事や各法令対応などが必要になります。そこで、簡単に設置できる個室ブースを開発したわけです」(コクヨ広報担当 海老澤 秀幸さん)

2020年7月に発売した1人用ブース「WORKPOD」は、発売直後に100件以上の問い合わせがあり、現在まで想定を大きく上回る10倍以上の受注や引き合いが来ているといいます。

10月にはガラス越しに対面で話ができる1on1タイプも発表。インターフォンが設置されているため、マイクを通じて顔を見ながら会話ができるようになっています。

実際になかに座って話してみるとちょっと不思議な感じがしますが、計算上30秒ごとに空気が入れ替わる換気機能が作動しているため感染防止策の観点からみても安心です。

1on1タイプのWORKPOD。キャスター付き。床固定用金具付きで固定ができる(耐震試験実施済みのため床固定無しでも設置可)

「WORKPODはコクヨの社内にも設置しているのですが、人気が高いため1人の人間が長時間占有しないよう、みんながメリハリをつけて使用しています」(海老澤さん)

走るシェアオフィス、東急バス「Satellite Biz Liner(サテライトビズライナー)」

最後にご紹介するのは、まだ実証実験段階ではありますが、働き方改革に一石を投じるユニークな試みです。

平日朝9:05たまプラーザ駅南口から出発。 渋谷駅10:15着、終点の東京駅には10:45着

東急バスが、シェアオフィスバス「Satellite Biz Liner(サテライトビズライナー)」のサービスを展開するきっかけとなったのは、2019年初冬に行った、ハイグレード通勤バスの実証実験だといいます。東急電鉄が運行している田園都市線が非常に混雑していることから、快適な通勤環境を提供しようと無償で実証実験を実施。今年は有償で実証実験を行い、ニーズを探る予定だったといいます。

「2020年コロナ禍の発生により電車の混雑が緩和され、今やラッシュ時を除けば座って通勤することも可能となりました。そこで、テレワークが急速に浸透してきたのを受けて、バスに乗っている時間を勤務時間に組み入れるという、より効率的な働き方を提案してみることにしたのです。そのため、行き:たまプラーザ駅発9:05、帰り:たまプラーザ駅着17:35というタイムスケジュールで実証実験を行っています」(東急バス 経営企画室経営統括部次長 佐藤寛信さん)

Wi-Fiを搭載しているためネット接続も良好。車内は3分で換気できるほか後部にトイレも付いている。

利用方法は、東急が提供している移動やおでかけが楽しくなる総合サービス「DENTO(デント)」に会員登録してチケットを予約するだけ。交通系ICカードや現金による当日乗車も可能です。取材時の乗車人数は、乗客3名に東急バスの方2名、そして私の6名。車内ではビーズクッションがついた膝置きタイプのデスク「yogibo(ヨギボー)」を貸してくれるため、安定した環境でパソコンが使えました。また、静な車内に安定した走行、仕事に集中するにはうってつけの環境でした。

「実証実験は2021年2月16日~4月28日まで。今のところ1日の利用者数は一桁代ですが、SNSの反響を見ると『たまに利用するのはアリ』といった感じです。運賃が、たまプラーザ駅⇒渋谷駅で1,000円、東京駅までだと1,400円と電車よりも少し高いため、毎日の利用は現実的ではないかもしれません」(佐藤さん)

確かに、電車の運賃よりは750~950円ほど高いですが、子どもを幼稚園まで送ってからバスに乗って即勤務スタートできれば、通勤時間をムダにすることがありませんし、子育て中の人やテレワークで出社するのは週に数日という人であれば、ニーズはありそうです。

ちなみに、JR東日本でも2月に東北新幹線で「新幹線オフィス」の実証実験を実施。1日5便、1車両をオフィスとして利用可能にし、ヤマハが開発した雑音や音漏れを防ぐ音響サービスの導入によりWeb会議OK、という新しい試みを展開していました(※地震のため実証実験は見合わせとなったようです)。

『通勤時間を勤務時間に組み入れてOK』という時代が来る日は近いのかもしれません。

まとめ

今回ご紹介したサービスは、どれもコロナ前から立ち上がっていた企画でした。そこに、感染症対策を施し、働き方改革につながるサービスにするべく各社とも手探りでサービス展開している様子が伝わってきました。テレワークも、もともと東京オリンピック・パラリンピックの混雑緩和のために国を挙げて推進していたことが、コロナにより否応なく急拡大したというのが実状です

(※筆者担当記事「テレワークと道路利用の自粛は必須。東京2020問題を乗り切る方法とは」をご参照ください)。

国がどんなに旗を振って推し進めようとしても遅々として進まなかった働き方改革が、ここまで急速に進むとは正直驚きです。でも、やればできることがわかった以上、もう後戻りすることはないでしょう。あなたも働き方を見直してみませんか。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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