マンションの騒音トラブル、悩む前に知っておきたい予防法と対応策

家族構成や生活スタイルが異なる人たちが住む集合住宅では、騒音問題はつきもの。誰もが、ある程度の生活音は許容しながら暮らしているものと思いますが、許容を超えて「騒音」になった際に思わぬトラブルに発展する可能性もあります。騒音トラブルになってから悩む前に、まずは自分が騒音を発生する側にならないための対策でトラブルを予防しましょう。

騒音の基準は? 法律で違反と判断されるケース

生活をしていれば様々な音が発生し、どんな音も騒音になってしまう可能性があります。
子どもが駆け回ったり、泣き声や叫び声が響いたりする音や、ペットの鳴き声、楽器を演奏する音、音楽を聴いたり、テレビを観たり、ゲームをしている時の音、洗濯機などの家電製品を使う音など、音の原因はさまざま。

どのくらいの音量を「騒音」と感じるのかは人それぞれですが、1998年に環境庁(現在の環境省)が定めた基準値が一つの判断材料になるでしょう。住居専用地域の場合、「環境基本法」により以下のように定められています。

昼間(午前6時~午後10時)が55dB以下
夜間(午後10時~午前6時)が45dB以下

基準値を超えると、法律用語を用いれば「受忍限度を超える騒音」と判断され、不法行為とみなされる可能性があります。不法行為と認められれば法的に、損害賠償責任を負います。

ただし、騒音を規制する法律「騒音規制法」は音の発生源が工場の場合などを対象にしているため、生活音に対しては騒音と判断してもらえないケースも少なくありません。

詳しく読む:マンションの騒音トラブルで裁判まで発展するケースも! あなたはどう対応する?

自分たちが「音を出す側」にならないための対策

騒音トラブルは「音を出す側」と「音に悩まされる側」の両者が存在します。静かに生活を送っているつもりでも、気が付かないうちに自分が「音を出す側」になってしまう可能性もあるため、注意が必要です。

自分が騒音トラブルを起こさないためにできることを見ていきましょう。

1.1階に住む
ドタドタと歩いてしまうクセがあったり、小さな子どもがいて足音が気になったりする場合は、1階に住むとそれほど足音に気を使わなくて済みます。 

2.夜に音を出すことを避ける
夜遅くにテレビを見る場合は、イヤホンやヘッドホンをするなど、周囲へ配慮しましょう。テレビを壁から離れた場所に設置するのも良い手です。

3.掃除や洗濯は日中に行う
掃除機や洗濯機などを使用するときに発生する音が、人によっては気になってしまうケースがあります。家事はできる限り日中に済ませるよう心がけましょう。

4.日頃から近所付き合いをしておく
日頃から近隣の人とこまめにコミュニケーションを取り「音で気になることがあれば遠慮なく相談できる関係」を築いておくのが大切です。

5.スリッパを履く
簡単ながら効果が高い方法が、クッション性の高いスリッパを履くことです。足で直接踏むよりは、衝撃を吸収できるので「ズシズシ」「ドンドン」といった重量のある大人が歩く音のような重くて低い重量床衝撃音を抑えることができます。

6.カーペットを敷く
フローリングそのままの床は、音が階下に通りやすい状況です。子どもが室内で走り回ったり椅子から飛び降りたりすることが多いなら、カーペットを敷くのがとても有効な方法です。

7.防音グッズを購入する
ダイニングキッチンでキャスターがついていない椅子は、チェアソックスを付けるとよいでしょう。床と擦れる音が階下に響かなくなります。

詳しく読む:マンションでの“足音”の悩み。騒音を出さない・悩まないための対策法
詳しく読む:マンションの床は防音性が低い? 手軽に防音できる3つの方法

「防音工事」という手段も

騒音トラブルを避けるための手段として、防音工事があります。

床の仕上げ材を防音フローリングに貼り替える場合、1平方メートルあたり2万~2.5万円程度かかります。15帖のリビングルームは約25平方メートルですので、約50万円~63万円ほどになります。床材のグレード、撤去処分する元の床材の種類、大きな家具の移動の有無などにより費用は異なるため、きちんと見積りを確認することが大切です。

詳しく読む:マンションの騒音対策に家具の配置変更アリ。防音工事の方法や費用は?

どうしても夜の洗濯になってしまう…どうすればいい?

朝から夜まで働いている、共働きで忙しいという場合には、どうしても洗濯が夜遅くになってしまうという人が少なくありません。

マンションで洗濯機を使って良いのは、常識的には人が起きて活動している時間である「7~21時」のあいだだといわれています。よりトラブルを回避したいと思うのなら「8~20時」のあいだで洗濯機を回したほうが安心です。しかし、帰宅時間が遅い傾向にある都心部であれば、22時ぐらいまでは許容されるケースも多くあります。
大事なことは、周囲の生活リズムと合わせることです。周囲の人が寝ていない時間帯なら、洗濯機を回しても問題や迷惑になる可能性は低いでしょう。

詳しく読む:夜の洗濯機、マンションなら何時までOK?使用する際のマナー

楽器を演奏したい…確認することは?

集合住宅であるマンションの場合、リビングなどの専有部分である室内で演奏するから自由に好きなときに演奏できるというわけではありません。マンションでの楽器演奏に関するルールは、必ず管理規約で確認しておきましょう。

確認のポイントとしては、次の2つです。まず、演奏可能な楽器の種類です。特に明記されていない場合もありますが、特定されている場合はそれ以外の楽器は演奏できません。

そして確認すべきなのが演奏可能な時間帯です。特に禁止されることが多いのは、朝8時以前の早朝や午後9時以降の夜などです。仮に規約で可となっていても、音量が大きすぎないか、迷惑な時間ではないかなど、近隣への配慮は必要です。

詳しく読む:マンションでピアノを楽しみたい人が知っておくべき防音対策

楽器演奏ができるマンションの探し方

心置きなく自宅で楽器を演奏したいなら、楽器演奏ができるマンションに住むのも一つの手。楽器が演奏できるマンションには、「音楽演奏可」「音楽応相談」「音楽専門」「防音」の4つのタイプに分かれます。しかし、楽器演奏が可能になっているからといって、そのすべてのマンションに防音の設備が備わっているとは限りません。

楽器演奏ができるマンションを探すときは、できれば防音の設備があって、時間や音の大きさを気にせずに演奏できる物件を見つけたいものです。賃貸物件で楽器演奏可の物件を見つけるコツは、音楽大学の近くのマンションを探すこと。音大付近では、比較的容易に楽器演奏が可能な物件を見つけることができるでしょう。

詳しく読む:音漏れを回避! 楽器演奏ができるマンションの特徴と防音対策!

騒音トラブルに遭ってしまったら

隣人・近隣トラブルで最も多いのは、騒音に起因するものだといわれています。音を出している側は自覚がなくとも、受け手にとっては不快に感じている恐れも。お互いの認識が異なることから、解決が困難なトラブルのひとつといえます。

実際にトラブルが発生したときにはどこに相談すればよいのでしょうか。

・管理会社
お住まいが賃貸物件の場合は、まず管理会社に相談してみましょう。管理会社から、直接注意してもらったり張り紙をしてもらったりすることで、問題が解決する場合があります。

・役所・役場(生活課)
お住まいの自治体の役所や役場の生活課へ相談するというのもひとつの方法です。基本的には問題を解決するための助言がもらえるのみで、解決は自分で行う必要があります。

・町内会や自治会
市町村内の各地域に置かれている町内会や自治会の会長さんに相談するという手もあります。

・警察
これらに相談しても解決しない悪質なトラブルの場合は、最寄りの警察署に連絡してみましょう。騒音のトラブルの際には現場に駆けつけて注意してくれる場合もあります。

・弁護士
それでもまだ解決しない場合には弁護士に依頼することを視野に入れましょう。

詳しく読む:【どこへ相談すべき?】もしも「隣人・近隣トラブル」に遭ったら…

トラブルを避けるために。物件選びで気を付けること

トラブルを避けるためには、物件選びの段階でトラブルの原因となりそうな点がないかを確認することが大切です。

近所・隣人トラブルの有無を確認
不動産会社に、「過去にどのような近隣トラブルがあったのか、その際どのような人が関わっていたのか」、「現在の住人のあいだで近隣トラブルはあるか」を聞いてみましょう。

内見時に共用スペースや掲示板をチェック
内見の際は居室だけではなく、共用スペースの清掃状況や、近隣トラブルに関する注意喚起の張り紙がされていないか、掲示板も忘れずに確認を。管理が常に行き届いているのか、マナー違反の住人はいないかを判断しましょう。

騒音になりそうな原因はないか
ペット飼育や楽器演奏を許可している物件は、思わぬ騒音トラブルが発生する可能性があるため注意しましょう。

詳しく読む:ありがちな「近隣トラブル」の原因とは? 起きた場合の正しい相談先

まとめ

集合住宅で起こりやすい騒音トラブルは、自分が被害者にも加害者にもなり得る可能性があります。快適な環境で生活していくためにも、事前に確認するべきことを確認する、音を出さない対策をする、隣人と良好なコミュニケーションを築いておくなど、騒音対策を意識してトラブル予防を心がけることが大切です。

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