もともと静かなブームが続いている平屋住宅ですが、このところのコロナ禍でいっそうの盛り上がりを見せているようです。若い世代向けのデザイナーズ平屋を思わせるおしゃれな住まいも増え、平屋の賃貸まで登場しています。いまなぜ平屋なのでしょうか、これからもブームが続くのでしょうか――。

着工戸数減少のなかで平屋だけは伸びている

ほとんどの住宅メーカーは大都市部の狭い土地を有効に活用するため、2階建てから3階建て、4階建てへと高さを競っていますが、その一方で、郊外や地方を中心に平屋の住まいにも力を入れています。

たとえば、大和ハウス工業には「xevoΣ(ジーヴォシグマ)平屋暮らし」、積水ハウスには「HIRAYAの季(とき)」、住友林業には「GRAND LIFE」などがありますし、最近は平屋の専門メーカーや平屋を専門に紹介するポータルサイトなども増えています。

国土交通省の「建築着工統計調査」を見ると、年間の新設住宅着工戸数は2008年には約109.4万戸だったものが、2020年には約81.5万戸まで減少していますが、そのうち平屋は図表1にあるように、着実に増加しています。この8年間で実数では1.5倍に、居住専用住宅に占めるシェアは1.6倍に増えているのです。

出典:国土交通省「建築着工統計調査」

平屋は自然災害にも強い

全体の新設住宅着工戸数が大幅に減少するなかで、なぜ平屋だけ増えているのでしょうか。それには、さまざまな要因が考えられます。

何よりもワンフロアなので、上下階への移動がなく、高齢者や小さな子どもにもバリアフリーな住まいになります。洗濯物を干しにベランダに行く必要がないなど、家事動線も効率的です。同じフロアでの生活なので、家族のコミュニケーションが増えますし、ウッドデッキなどで庭と地続きのようになり、開放感があり、自然を感じやすい住まいになります。

さらに、2階、3階がない分、補修費用なども少なくて済みますし、1階だけなので地震の時にも揺れにくく、台風などの強風にも強いといった構造面での特徴もあります。

特に、このところは毎年のように大規模な地震や風水害に襲われていますから、平屋への注目度が高まるのも当然かもしれません。

平屋のイメージを一新する外観デザインも

さらに、2020年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大の影響で在宅勤務が増え、通勤をさほど気にしなくてよくなったため、郊外や地方の住まいへの関心が高まり、都心に比べて広い敷地を取得しやすくなりました。

平屋で一定の床面積を確保するためには、敷地の広さが不可欠ですが、郊外や地方ならそれが可能になりますし、在宅勤務に欠かせないワークスペースを作りやすくなります。

平屋の一戸建てといえば、どちらかといえばリタイア後の隠居所のようなイメージがありましたが、こうした変化から若い世代にも関心が高まり、それに対応するため、さまざまな平屋の新商品が登場するようになっています。

デザイナーズ住宅のようなおしゃれなデザインの平屋から、賃貸住宅向けの平屋まで登場しているのです。

大開口でリビングと庭が一続きに

衣類や生活雑貨などで若い世代を中心にファンが多い無印良品(株式会社良品計画)では、「無印良品の家」として、関連会社の株式会社MUJI HOUSEが、「木の家」「窓の家」「縦の家」「陽(よう)の家」の4つの提案を行っていますが、そのうち「陽の家」が平屋住宅になります。

写真にあるように、無印良品らしいシンプルで上質な外観デザインで、最大の特徴は庭に面して大開口のサッシが設けられ、庭がリビングと地続きのようになるという点です。本来は室内で行われる営みを太陽の下で行えるようになるということから、「陽の家」というネーニングになったようです。

無印良品「陽の家」日本テーマパーク開発株式会社のプレスリリースより

昼は日差しを楽しみ、夜はバーベキュー、キャンプ気分などを楽しめます。ウッドデッキを掘り下げれば、室内の囲炉裏のようになり、ウィズコロナの時代、家族や親しい友人たちとたき火に癒されるというのもいいのではないでしょうか。

参考:日本テーマパーク開発株式会社「無印良品の「陽の家」が日本初の貸別荘として那須ハイランドにオープン

スタイリッシュな外観デザインの平屋

アイダ設計「オープンテラスのある平屋」外観

注文住宅から分譲住宅まで手がけるハウスメーカーの株式会社アイダ設計でも、平屋住宅に着目しているようです。

2020年の秋には平屋の受注が前年の1.8倍に増えたこともあって、2021年に入って新商品「オープンテラスのある平屋」を投入しました。写真にあるように、若い世代を意識、直線を利用したスタイリッシュな外観デザインになっています。

リビングを中心にした間取りで、一部を勾配天井にしているため、天井高が高く、開放的な空間になります。室内外をつなぐオープンサッシによって、テラスをリビングの延長としてアウトドアリビング的に多目的に活用できます。

平屋だと、どうしても防犯面での不安が出てきますが、この「オープンテラスのある平屋」では、防災安全複層ガラスを採用しています。合わせガラスを用いた防犯タイプのLow-E複層ガラスで、通常のLow-E複層ガラスに比べて破壊されにくく、断熱性能などにも優れているそうです。

参考:株式会社アイダ設計【公式】オープンテラスのある平屋

ニューノーマルに対応した平屋の賃貸

アパートの供給戸数・管理戸数トップの大東建託株式会社では、平屋戸建て賃貸住宅の「cocoDaTe One’s(ココダテワンズ)」の試行販売を行っています。

コロナ禍で、若い世代を中心に一戸建て志向が高まっていますが、一戸建てでも、少人数世帯なので2階はいらない、平屋で十分と考える人が増えています。また、持ち家でなくてもローンや税金などの負担がない賃貸でOKという人たちの増加もあって、市場ニーズは十分という判断になったようです。

大東建託の「cocoDaTe One’s(ココダテワンズ)」

大東建託としては初の平屋戸建賃貸住宅商品で、ディンクスや小さな子どものいるファミリーからシニアまで、幅広い層をターゲットにしています。そのためさまざまライフステージの人たちに受け入れられやすい、家族みんなが集まるリビングを中心とする「センターリビング」の間取りを採用しています。

可動式建具の「アートパネル」によって空間を仕切ることで、1LDKを2LDKにすることなどが可能で、在宅勤務に不可欠なワークスペースを確保できます。ウィズコロナ、ポストコロナのニューノーマルにも対応できる新たな形の賃貸住宅になりそうです。

参考:大東建託株式会社「平屋戸建賃貸住宅「cocoDaTe'One's」(ココダテワンズ)」の試行販売開始

平屋が選択肢のひとつになる時代に

こうした平屋住宅のブームのなかで、さまざまな企業が登場しています。

たとえば、平屋専門のモデルハウスを各地に展開するケイアイスター不動産株式会社、平屋専門店の「みんなの平屋」など、各地で平屋専門のビルダー、工務店が増えています。また、平屋住宅専用サイトの「e平屋net(イー平屋ネット)」など、平屋中心に情報提供するポータルサイトも増加中です。

冒頭で触れたように、大手住宅メーカーも平屋に力を入れるようになっていますから、さまざまな商品が増え、情報も豊富になり、平屋住宅市場が拡大しそうです。

これからマイホームの建築、購入を考えている人は選択肢の一つに加えてみてはどうでしょうか。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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