日本では学生を援助するために国や自治体、民間団体によるさまざまな奨学金制度があり、2004年4月からは「高等学校等就学支援金制度」による奨学金支給も行われるようになりました。

返済が必要な奨学金を申し込むには、連帯保証人と保証人を立てる「人的保証」か、保証機関に保証してもらう「機関保証」のどちらかが必要です。連帯保証人や保証人になる場合は、返済義務や権利に違いがあることを理解する必要があります。今回は、奨学金の保証人について詳しく解説します。

奨学金には保証人が必要?人的保証や機関保証とは?

給付型の奨学金では保証は必要ありませんが、貸与型は返済義務があるため、保証を付ける必要があります。奨学金の保証には「人的保証」と「機関保証」の2種類があるため、それぞれの特徴をよく理解し、どちらかを選びます。それでは、2種類の保証について詳しく解説します。

奨学金の保証制度には人的保証と機関保証がある

貸与型の奨学金を申し込むためには、「人的保証」か「機関保証」のどちらかを選ぶ必要があります。人的保証とは、連帯保証人と保証人という2人の保証人を立てることです。一方の機関保証とは、一定の保証料を支払い、連帯保証人や保証人の代わりに保証機関に保証をしてもらうことをいいます。

奨学金の返済が滞った場合、人的保証では保証人や連帯保証人が代わりに奨学金を返済しなければなりません。

機関保証の場合は、保証機関が奨学生の代わりに残債を一括返済してくれます。そして、保証機関から奨学生に対して返還請求が行われることとなります。保証機関に一括返済してもらった場合でも、返済義務そのものが消滅するわけではないので注意しましょう。

人的保証と機関保証、どちらを選べばいい?

奨学金を申し込むときに、人的保証と機関保証のどちらを選べばよいのか迷う人も多いのではないでしょうか。2019年度のデータによると、人的保証を選択した人が43.7%、機関保証を選択した人が56.3%となっており、機関保証を利用する人が多くなっています。

機関保証を選んだ場合は保証料を支払う必要があり、毎月受け取る奨学金から差し引かれます。逆に、人的保証の場合は費用がかからないため、手取りの奨学金が多くなります。奨学金を借りる本人にとっては、人的保証のほうが金銭的な負担が少ないといえます。

ただし、人的保証の場合は、「保証人」と「連帯保証人」という2人の保証人が必要です。通常は、連帯保証人は親、保証人は親以外の4親等以内の親族がなりますが、保証人になってくれる人がすぐに見つかるとはかぎりません。もしも保証人となる親族が見つからない場合は、人的保証制度を利用することができないため、機関保証を選ぶことになります。

出典:文部科学省「独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業における保証制度の在り方について(中間報告まとめ)」

連帯保証人や保証人になる条件とは?

奨学金の連帯保証人や保証人は誰でもなれるというわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。それでは、連帯保証人と保証人それぞれの主な条件について詳しく解説していきます。

連帯保証人は原則として親がなる

連帯保証人は、原則として父親か母親のどちらかがなることとなっています。もしも父母がいない場合は、祖父母や曾祖父母、叔父や叔母など、4親等以内の親族が対象となります。

奨学金の連帯保証人になるには、次のような条件があります。

1.奨学生が未成年の場合は、親権者が未成年後見人であること
2.奨学生が成年者の場合は、父母または奨学生本人の兄弟姉妹、おじ、おばなどの4親等以内の親族であること
3.連帯保証人になる人が未成年や学生でないこと。成人していても学生の場合は、連帯保証人になれない
4.奨学生本人の配偶者でないこと
5.自己破産や任意整理など、債務整理中でないこと
6.貸与が終了する月の末日時点で、奨学生本人が満45歳を迎える場合は、連帯保証人が60歳未満であること

また、連帯保証人になるには、ある程度の収入や資産があることも条件です。連帯保証人は奨学生の返済が滞ったときに代わりに返済を行うことになるため、返済能力があることが前提となります。

保証人は原則として4親等以内の親族がなる

保証人とは、奨学生や連帯保証人の親が奨学金を返済できなくなった場合、代わりに返済を行う人のことをいいます。保証人は4親等以内の親族がなることとなっており、奨学生やその親と別生計である必要があります。また、「奨学金の申し込み時点で65歳未満であり、未成年や学生でないこと」と定められています。

そのほかにも、保証人に安定した収入や資産があること、債務整理中でないこと、奨学生自身が既婚者または婚約済みである場合は、その配偶者や婚約者でないこと、連帯保証人の配偶者または婚約者でないことなどが条件です。

奨学金の申し込みをするときには特別な書類は必要ありませんが、奨学金の返還誓約書を返送するときには、連帯保証人だけでなく、保証人の収入を証明する書類や印鑑登録証明書が必要となります。

出典:日本学生支援機構「人的保証制度」

連帯保証人と保証人の責任や権利の違いとは?

奨学金の人的保証に必要な「連帯保証人」と「保証人」では、責任や権利についていくつかの違いがあるため、それぞれの特徴をよく理解しておくことが大切です。それぞれの保証人の違いについて、詳しく解説します。

保証人には3つの権利が認められる

奨学金の保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」という3つの権利が認められています。

「催告の抗弁権」とは、奨学生本人に返済能力があるにもかかわらず、保証人に返済の請求がきた場合に「主となる債務者(ここでは奨学生)に先に請求してください」と主張し、一次的な支払いを拒む権利のことをいいます。

「検索の抗弁権」とは、保証人に請求がきた場合であっても、奨学生本人に返済資力があり、かつ本人からの回収が容易であることを証明できれば、債務の履行を拒否できる権利です。たとえば、「債務者には財産があるので、自分より先にまず債務者の財産を差し押さえてください」などと主張することができます。

「分別の利益」とは、保証人が複数いた場合、借金全額を返済するのではなく、保証人の数で分けた分だけを返済する権利です。

奨学金では「保証人」と「連帯保証人」の2人の保証人がいることから、「分別の利益」に照らし合わせると、保証人の支払い義務分は2分の1のみとなります。

連帯保証人には債務を全額返済する責任がある

奨学金の連帯保証人には、保証人に認められている3つの権利が認められていません。そのため、奨学金の返済を請求された場合は、請求どおりに利息や延滞金を含めた全額を返済する責務を負います。

たとえば、連帯保証人は、保証人と違って「奨学生本人にまず請求してください」等と主張することはできません。また、奨学生本人に返済能力があった場合でも、返済請求があった場合は拒むことができず、支払いをしなければならないこととなっています。

また、連帯保証人には「分別の利益」も認められていません。このことから、奨学金の全額請求があった場合は、2分の1ではなく全額を返済する義務を負います。

このように、連帯保証人の責務は、保証人に比べるとかなり大きいことを覚えておきましょう。

奨学金の返済でトラブルになるケースも…

奨学金の返済でトラブルになるケースとしては、就職や転職がうまくいかなかったり、体調を崩して働けなくなったりして、奨学生が返済できなくなる場合が挙げられます。

奨学生が返済できないときには、まず連帯保証人である親に請求がいきます。しかし、親が自己破産などの理由で返済できないときは、最終的に保証人が請求されることとなります。

保証人には「分別の利益」があるため、全額の債務の2分の1しか返済義務がありません。しかし、それを知らずに請求に応じて全額返済してしまい、後に半分の返還を求めて裁判になったケースもあります。このように、奨学金の返済でのトラブルも増えているため注意が必要です。

保証人には一定のリスクがありますので、機関保証の保証料を支払うことを申し出たりして、角が立たないように保証人を断ることも一つの方法です。

奨学金の人的保証は廃止も検討されている

奨学金を申し込むには「人的保証」もしくは「機関保証」のどちらかが必要ですが、人的保証では返済をめぐるさまざまなトラブルが発生しています。

このような状況を踏まえ、日本政府は「人的保証」を廃止し、「機関保証」に一本化することを検討しています。機関保証のみにすることで保証人の負担を減らし、債権を確実に回収することが目的です。

ただ、機関保証のみになった場合、奨学金を申し込むすべての人に保証料の負担が発生してしまうという問題があります。たとえば、2020年度の保証料を見ると、大学院以外の第二種奨学金(有利子)において、毎月60,000円を6年間借りた場合の保証料は毎月約3,000円となっています。このように機関保証は保証料が大きく、学生の負担が増えてしまう点が問題視されています。

また、「機関保証」では、保証機関が一括返済を行った後も奨学生の返済義務が残りますが、「保証機関に保証してもらった場合は、返済義務がなくなる」と勘違いしている人も一定数います。このようなことから、奨学金の利用者に「機関保証」に対する理解を深めてもらうことも課題の一つとなっています。

出典:独立行政法人日本学生支援機構「2020年度 保証料月額(目安)」

まとめ

奨学金を申し込むときには、保証人を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を支払って保証してもらう「機関保証」のどちらかを選ぶ必要があります。

人的保証では「保証人」と「連帯保証人」の2人が必要ですが、返済の義務や権利に大きな違いがあります。奨学金の連帯保証人や保証人になるときには、それぞれの責任の範囲をよく理解し、慎重に考えて決めるようにしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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