【フラット35】の優遇期間が終わる…どうすれば? 返済の選択肢をFPがシミュレーション

全期間固定金利の【フラット35】には、住宅の性能などによって当初5年間または10年間金利の優遇が受けられる【フラット35】Sがあります。借りた時期によっては優遇幅が大きく、優遇期間終了時に返済額が大幅に上がってしまう場合もあります。今回は、優遇期間終了後そのまま借り続けたほうがよいのか、それとも借り換えたほうが負担が減るのか、事例で比較してみましょう。

過去と現在の借り入れ金利を比較

リーマンショック後、2011年9月30日までに借り入れ申し込み、2010年2月15日以降に融資された【フラット35】Sは当初10年間1%の優遇がありました。当時の金利は1%の金利優遇があっても、団体信用生命の保険料も加えると1.9%程度でした。

10年後の優遇期間が終了してもそのまま借り続けていれば、金利は2.9%程度にアップしてしまいます。現在の【フラット35】は団信加入ありで金利優遇なしでも1.35%(2021年3月時点新機構団信付で最も多い金利)です。借り換えた場合1.55%も金利が下がります。【フラット35】から【フラット35】への借り換えも可能ですので、借り換えることで返済額を大幅に減らすことができそうです。

その後も、2015年2月9日以降2016年1月29日申し込み受付分までの【フラット35】Sは0.6%の優遇がありました。金利は1.5%前後でしたので、優遇期間が終了すると0.9%から1.5%に金利が上昇します。こちらも借り換えの検討の余地がありそうです。

いずれにしても、借り換えのメリットが出るかどうかは借り入れの現在残高、金利、残期間を確認することから始まります。手元に返済予定表を用意して現在の借り入れ状況を確認しましょう。

では借り換えるとどれくらいのメリットがあるのか、ここからは事例で比較してみましょう。

事例1 当初10年の優遇金利が終了後、1%金利がアップする場合

【借り入れ時の内容】

・借り入れ時期…2011年5月
・借り入れ額…4,000万円
・金利…2.988%(年利2.63%+機構団信0.358%)
・返済期間…35年返済
・優遇内容…当初10年間の優遇幅1%(1.988%)

【当初10年間の返済内容】

・毎月返済額…132,258円

・10年後の残高…3,118万円

【11年目以降の返済選択肢】

・11年目での残高…3,118万円

・返済の残期間…25年

・返済の選択肢
 (1)【フラット35】に借り換え(金利1.35%)
 (2)変動金利に借り換え(当初5年間0.5%、6~15年1%、16~25年1.5%)
 (3)借り換えなし

●返済額のシミュレーション結果

2011年5月の【フラット35】の金利は金融機関により2.63%から3.58%でした。もし一番低い2.63%で借りていても、当時の機構団信0.358%を上乗せすると実際の借り入れ金利は2.988%です。

当初10年間の1%優遇があっても借り入れ金利は1.988%で、優遇期間終了後には2.988%に跳ね上がってしまいます。毎月返済額も132,258円から147,664円と15,406円もアップします。優遇期間終了後もそのまま借り続けていると、1年間で約18万円、25年間では約462万円も返済額が増えてしまいます。

【フラット35】への借り換えは25年間で約755万円の差に

では、優遇期間終了時に【フラット35】に借り換えた場合はどうでしょう。現在の【フラット35】の金利は新団信の保険料を上乗せしても1.35%です。残り25年間を1.35%で借り換えた場合、毎月返済額は122,514円となり、借り換えしない場合との毎月返済額の差は25,150円、1年間では約30万円、25年間では約755万円もの差になります。

変動金利で借り換えた場合はどうでしょう。当初5年間0.5%、6~15年目は1%、16~25年目は1.5%と金利上昇した場合で試算してみました。借り換えた時の毎月返済額は110,586円と37,078円も少なくなります。借り換えしなかった場合との25年間の返済額の差は約944万円にもなります。

ただし、借り換えをするには事務手数料や保証料(【フラット35】は¥0)、抵当権の抹消や設定の費用などがかかります。また、変動金利で借りる場合将来の金利上昇によって返済額が上がる可能性もあります。しかし、こうした借り換えに関わる諸費用や金利上昇リスクを考慮する必要はありますが、いずれも借り換えのメリットはありそうです。

特に全期間固定金利での借り換えは、今後金利が上昇しても返済額は完済するまで変わりません。これからお子さんの教育費がピークになる家庭や、金利が上昇したときに繰り上げ返済する家計の余力がないといった場合は、全期間固定金利に借り換える、という選択肢も考えてみましょう。

事例2 当初5年優遇金利終了後0.6%金利がアップする場合

【借り入れ時の内容】

・借り入れ時期…2015年5月
・借り入れ額…4,000万円
・金利…1.948%(年利1.59%+機構団信0.358%)
・返済期間…35年
・優遇内容…当初5年間の優遇幅0.6%(1.348%)

【当初5年間の返済内容】

・毎月返済額…119,517円

・5年後の残高…3,537万円

【6年目以降の返済選択肢】

・6年目での残高…3,537万円

・返済の残期間…30年

・返済の選択肢
 (1)【フラット35】に借り換え(金利1.35%)
 (2)変動金利に借り換え(当初5年間0.5%、6~15年1%、16~25年1.5%)
 (3)借り換えなし

●返済額のシミュレーション結果

2015年2月9日以降に融資を受けた人で、2016年1月29日までに申し込みをして【フラット35】Sを借りた人は、当初5年間または10年間0.6%の金利優遇を受けています。

当初5年の優遇期間終了後にそのまま借り続けた場合、金利は1.348%から1.948%にアップし、返済額は毎月10,299円増えます。1年間では約12万円、残り30年間では約370万円も返済額が増えてしまいます。

金利上昇リスクを考慮しても、借り換えメリットあり

もし、当初優遇期間5年終了後に全期間固定金利1.35%の【フラット35】に借り換えると毎月返済額は119,539円で、そのまま返し続けた場合より毎月10,277円少なくなります。

事例1と同じ条件で変動金利に借り換えた場合を加えて、上記比較表の総返済額を比べると、そのまま返し続けた場合と比べて【フラット35】で借り換えた場合は約370万円、変動金利で借り換えた場合は約590万円少なくなります。こちらも借り換えの諸費用や変動金利の金利上昇リスクを考慮しても、借り換えメリットがありそうです。

まとめ

【フラット35】Sは借りた時期によって、当初10年間または5年間の金利優遇の幅が異なります。優遇幅が大きいときに借りていると、優遇期間終了後に大きく返済額がアップする場合があります。

【フラット35】の金利は2011年ごろまでは2~3%程度、それ以降も2015年ごろまでは1%台後半で推移していました。現在の【フラット35】の金利が1.3%程度で推移していることを考えると、残高や残期間によっては、【フラット35】から【フラット35】への借り換えでもメリットのある金利差です。

機構団信は2017年10月1日以降は従来の毎年1回大きな金額での特約料支払いから金利上乗せ型になっていますので、特約料に備えて資金を準備する手間や特約料の支払いができずに保障がなくなる心配がありません。

ただし、借り換えには事務手数料や保証料といった諸費用がかかります。最終的には諸費用を負担してもメリットがあるのかを、諸費用を含めた総返済額を比べて借り換えましょう。

低金利の変動金利で借り換えると、当初の返済額は大きく減らせますが、金利が上昇すると返済額も上がります。変動金利で借り換える場合は、残高や残期間、家計の状況などから、金利が上昇したときに返済が滞らないよう、余裕を持った返済計画を立てましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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