【2020年版】毎月の返済額、頭金の割合は? データで見る住宅ローン事情

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界経済は大きな打撃を受けました。年が明けて日本では2回目の緊急事態宣言が発出されたこともあり、依然として経済環境は厳しいままです。その結果、年収やボーナスが減ってしまった人もいるでしょう。しかし、そのような状況下でも住宅ローンを組んで住宅を購入した人たちもいます。コロナ禍に揺れた2020年、住宅ローンにはどのような傾向があったのか。実際のデータから見てみましょう。

20代から50代までは一定の傾向が存在する

アルヒ株式会社が保有する2020年の住宅ローンに関する匿名加工データを見ながら、コロナ禍における住宅ローンの傾向を見出していきたいと思います。

住宅ローンを組む際に気になるのが、「毎月の返済額は月収の何パーセントぐらいを目安にすればいいのか?」そして、「住宅購入金額のうち、何%ぐらいを頭金として用意すればいいのか?」という2点かと思います。今回はその2点について、さまざまな観点から分析していきます。

まずは年代ごとに見てみます。下図は縦軸に「月収に占める毎月の返済額」、横軸に「住宅購入金額に占める頭金の割合」をとって、年代ごとにマッピングした図になります。

アルヒ株式会社のデータを基に株式会社マネネが作成

20代から50代までは一定の傾向が存在することが分かります。若いほど住宅購入金額に占める頭金の割合は低く済む一方で、月収がまだ高くないために月収に占める毎月の返済額の割合が高くなっています。しかし、60代になると頭金はさらに多く用意しなければいけないと同時に、月収に占める毎月の返済額の割合も50代どころか40代よりも高くなっています。これは60代になるとすでに現役を引退していたり、仕事を続けていたとしても再雇用ということで現役時代の月収の半分程度の給料で働くことになるからなのです。

住宅購入時に出ていく現金を低く抑えたいのであれば、若い時に住宅ローンを組むほうがよいということが上図からは読み取れます。

戸建とマンションでは新築と中古のローンに違い

住宅を購入する際、戸建とマンションのどちらにするか。そして、新築と中古のどちらにするか。これも1つの迷う点かと思います。そこで、先程と同じグラフの形式で、「戸建/マンション」と「新築/中古」という区分でマッピングしてみましょう。

アルヒ株式会社のデータを基に株式会社マネネが作成

グラフからいくつかの傾向が確認できます。1つ目は、戸建の場合は住宅購入金額に占める頭金の割合が低いということです。戸建の場合は新築と中古に大きな差がありません。一方で、マンションの場合は中古にするか、新築にするかで頭金の割合に大きな差が生じることが分かります。

2つ目は、月収に占める毎月の返済額の割合という観点で見ると、新築戸建がほかの3つよりも頭一つ抜けて高くなるということです。住宅の種類を戸建にするか、マンションにするかは必ずしも経済的な条件だけで決めるものではありませんが、経済的な条件を重視する場合は上図が1つの参考になると思います。

南関東では東京だけが異質

最後に同じグラフで住宅のある場所を都道府県別でマッピングしてみましょう。全都道府県だとグラフが複雑になりますので、南関東4都県で見てみます。

アルヒ株式会社のデータを基に株式会社マネネが作成

このグラフにおいて、東京で住宅を購入すると頭金もそれなりに用意する必要があり、毎月の返済の負担も大きいということがよく分かりますが、それはイメージ通りで意外感はないでしょう。このグラフから読み取れる面白い傾向は、神奈川、埼玉、千葉の3県においてはいずれも住宅購入金額に占める頭金の割合は同程度であり、毎月の返済負担が神奈川から順に埼玉、千葉と小さくなっていくということです。

上図からも分かるように、東京都内で住宅を購入する場合はそれなりの経済力が求められます。そこで、勤務地は都内であっても生活の拠点となる住宅は周辺の県で購入するという人は多くいますが、神奈川県が最も人気があるのでしょう。私は埼玉県出身ですが、池袋・新宿・渋谷は電車一本で行けますので、勤務地が山手線の西側にある場合は埼玉県も狙い目になるかもしれません。

新しい生活様式によって常識が変わるかも

これまで2020年のデータを3つの観点から見てきて、いくつかの傾向を確認できましたが、このまましばらく新型コロナウイルス問題が収束せず、新しい生活様式が多くの人に定着した場合、2021年のデータはさらに大きく変化していく可能性があります。

総務省が発表した住民基本台帳に基づく2020年の人口移動報告によれば、東京都は転入者数が転出を上回る「転入超過」が3万1,125人となりました。この結果だけを見れば、依然として東京一極集中か、と思うかもしれませんが、規模自体は前年より縮小していますし、月別で見ると7月から6ヶ月連続で転出が上回っています。この変化はまさに新型コロナウイルス問題の影響によるものです。

経団連が発表した2回目の緊急事態宣言下のテレワーク実施状況に関する調査結果によれば、テレワークが困難な製造現場などの従業員を除く出勤者数の削減割合は、宣言下の11都府県で65%となっていますから、このままテレワークが定着して政府が掲げる目標であるテレワーク率7割が達成されれば東京都内の住宅需要が低下し、一方で周辺の県における住宅需要が高まっていく可能性があります。

当然ながら、需要が高まれば供給量が増えない限りは価格が上昇していきますので、このまま新しい生活様式が普及して定着すると仮定するのであれば、今のうちに南関東3県に住宅を購入するというのも1つの考えになるでしょう。

調査概要
調査方法:住宅ローン専門金融機関ARUHIの【フラット35】融資実行データより抽出
調査対象期間:2020年1~12月
対象エリア:1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)
居住区分:自己居住用
※年収は主債務者のみの平均(収入合算は含まず)
(最終更新日:2021.04.05)
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