工期大丈夫? マイホーム建築中の人が「緊急事態宣言下」で気をつけるべきポイント(前編)

1月7日、一都三県で緊急事態宣言が再発出され、14日には東海と関西を中心に7府県が追加対象となりました。そして2月2日に一部を除いて宣言の1か月延長が決定しました。緊急事態宣言は昨年4月に続いて2度目ですが、新型コロナウイルス感染拡大は、新築一戸建てなどの建築現場にも影響が出ています。

宣言下でマイホーム建築を経験するのは、ほとんど人にとって初めてのことです。

「大工さんや職人さんは建築現場に来てくれるのだろうか」
「建築現場でクラスターが発生したらどうなるんだろう」

という不安を持っている人も少なくないでしょう。

不動産コンサルティング会社・さくら事務所は、そうした不安を払拭すべく、宣言下で施主が確認すべきチェックポイントをまとめています。今回は前編としてこのチェックポイントの一部を解説していきます。

オンラインでの打ち合わせは可能かどうか

決めてない仕様があればオンラインでの打ち合わせに対応してもらえるのかどうか確認を

建築前はとくに、通常ならハウスメーカーや施工会社の営業および設計担当者と頻繁に打ち合わせをします。しかし、人との接触を控えなければならないために、そうしたコミュニケーションも減り、仕上表や仕様書など契約内容に関わる打ち合わせが先延ばしになってしまうかもしれません。

昨年4月の緊急事態宣言のときは、トイレ・キッチンなどの住宅設備や、サッシ・ドアなど建材が、中国から輸入できず、工期にも遅れが生じました。さくら事務所のホームインスペクター、田村啓さんは現状についてこう話します。

「前回とは違って、設備が入ってこないために工期が遅れるというのは出ていないようです。また、職人さんたちが一度現場を離れてしまう事態にもなっていません。そういう意味では、比較的順調だと思います」(田村さん)

とはいえ、引き渡しまでまだまだ時間があると油断するのは禁物です。

「工期上、後からでも間に合うものは後回しにすることが多いですね。中でも一番多いのはクロスや壁紙の種類などです。壁紙はかなり最後になりますし、品番や色などが変わっても費用は変わらないということもあって、後からということになりがちです」(田村さん)

新型コロナの感染状況はどう変わるかわかりません。大事な内装や性能スペックなどを慌てて決めることにならないようにしたいものです。

まだ決めてない仕様があれば、どこで打ち合わせをするのか、オンラインでの打ち合わせに対応してもらえるのかどうか、などを早急に確認するとともに、「決めなくてはいけないものは他にありませんか?」と積極的に担当者に質問しましょう。

なお、そもそも仕上表や仕様書が手元にない場合は、早急に作成を依頼します。

「行事」は実施すべきか、やめるべきか

新築の家を建てる過程では通常、地鎮祭や上棟式などの行事を行います。いずれも施主や工事関係者が参列して行うので、密の状態になる可能性があります。通常通り行うべきかどうか、近所の目を考えると悩ましいところかもしれません。

地鎮祭は建築工事が始まる前に行われるもので、土地を守る神様にその土地を使う許しを請い、工事の安全を祈願する儀式です。地鎮祭の主催は建築会社です。

上棟とは、柱や梁など建物の基本構造が完成し、家の最上部で屋根を支える棟木(むなぎ)と呼ばれる木材を取りつけることを指します。上棟式は、上棟までの工程が無事完了したことを祝して行う行事です。

地鎮祭や上棟式などの行事も、感染拡大防止を理由に中止にするケースが増えているといいます。

「地鎮祭や上棟式は、施主ご自身だけでなく、親御さんが重視していたり、こだわっているというケースもありますね。あと最近では、引き渡しのときにテープカットをする施主さんもいます。“インスタ映え”するということみたいです」(田村さん)

行事関連も大切ですが、より本質的・機能的なところでは、スイッチやコンセントの位置については早めに打ち合わせをしましょう。

「スイッチやコンセントは工事中に決めることがあります。例えば、扉を開けて『スイッチはここでいいですか』とか、『コンセントはカウンターのこの辺りにつきますけどいいですか』などのように、現場で打ち合わせすることが多くあります。それ故、とりあえず曖昧に決めておくこともあって、そういう決め事がなあなあにならないように確認しましょう」(田村さん)

突貫工事を避けるため進捗確認は頻繁に

コロナ禍の今は通常より職人の入れ替わりが発生する頻度は高くなる可能性

コロナ禍でなくて平時でも、職人が病気やケガで休むということはあります。戸建ての建築現場は手作業で工事が進むので、職人の数が揃わないと工期の遅れにつながるおそれがあります。

これまで多少体調が悪い程度なら作業していた職人でも、今は現場出勤を禁止されることもあります。
「職人さんの世界は高齢化が進んでおり、健康管理が厳しくなっています。高齢の職人さん自身が『複数の職人さんが入っている現場は遠慮したい』と申し出る場合もあります」(田村さん)

ビルの建設現場では作業員がコロナによる感染で亡くなった例はありますが、住宅建築の現場ではこれまで、クラスターが報道された例はありません。

今後、部品・建材を作る工場でクラスターが発生したり、人員削減をして出荷がいつもより遅くなったりすれば、工事の遅れにつながります。作業する職人が工事現場に着いても、使う建材や機器が現場に届いていなければ、工事を進めることはできないからです。

ある一つの工事が中止・休止になれば次の工事が行えず、工事全体が止まってしまうおそれもあるし、予定していた完成・引き渡しの時期に影響が出る可能性もあります。

そうした不安を払拭するためにも、不動産会社や施工会社、ハウスメーカーなどの担当者に、工程表通りの進捗になっているのかどうか頻繁に確認するようにしましょう。

そもそも工程表をもらっていない場合は、早急に依頼します。

もし工事が遅れていれば、遅れを見込んだ工事計画を立て直してもらわなくてはいけません。修正後の工程表を提出してもらうとともに、完成・引き渡し予定日が変わる可能性があるならば、必ず「覚書書」や「合意書」を取り交わしましょう。

全体の工事期間が当初の計画より短くなっていない?

工期が著しく短くなっていることがわかった場合、どのようにして遅れを取り戻すのか確認を

工事が一時止まっていたり遅れていたりしても、「引き渡しの時期は変わらない」と施工会社などから言われる場合があります。そういうときは、着工から完成までの全体の工事期間が当初の計画より短くなっていないかを確認します。

工法や規模にもよりますが、戸建て住宅は4~5ヶ月程度の工期を設定されていることが多く、途中の工事が遅れているのに引き渡しの時期が変わらなければ、結果的に工期が短くなっている可能性があります。

何かの工事を急いで行ったり、必要な検査を間引くというように、本来なら行うべき作業手順を省くことが前提になっているかもしれません。

「工事が遅れてしまっていても、3月の決算に間に合わせないといけないと施工会社が考えれば、何とかして引き渡しを遅れさせないというようなこともあります。そうすると突貫工事になってしまったり、他の職人さんが応援に行って現場が密の状態になってしまったりということが起きます。万が一、工期が遅れてしまうという場合は仕方ないので、できれば引き渡し時期を伸ばすという選択を考えたほうがいいでしょう。今は人が集中するような現場にはしないということのほうが大切です」(田村さん)

工期が著しく短くなっていることがわかった場合、どのようにして遅れを取り戻すのか具体的な方法を聞きましょう。初めに計画した引き渡し時期に固執して品質確保がおろそかになってしまっては本末転倒ですし、現場が密になってクラスターが発生すれば、それこそ大幅に引き渡しが遅れます。

体調不良や高齢の職人の外出自粛などで、急きょ代替要員を調達することになれば、腕の良し悪しによらず、工事内容の引き継ぎ不足による品質不良や施工ミスが起きる可能性は上がってきます。

「ややマニアックな話ですが、木造には在来工法かツーバイフォー工法が使われていますが、在来とツーバイの現場では、異なるルールがたくさんあります。ルールはツーバイの方が厳しいのですが、例えば、在来が得意な職人がツーバイの現場に行って、正しいルールに従って作らないと、耐震性能が設計通りに出ないおそれもあります。職人が入れ替わっている場合、工期だけじゃなくて、現場の品質というものも要チェックになってきます」(田村さん)

コロナ禍の今は通常より職人の入れ替わりが発生する頻度は高くなる可能性があります。健康や人との接触に配慮が求められる時期なので、突発的に人の変更があっても、事情を聞いた上で品質確保を第一に何事も冷静に判断しましょう。

参考:さくら事務所「コロナ禍に建築中の方向けチェックリスト」

取材協力
株式会社さくら事務所

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