自分や家族に適したライフスタイルを模索するなかで、「二地域居住」に注目する人が増えています。特に、新型コロナウイルスの流行を受けてリモートワークを導入する企業が増えてからは、アフターコロナ時代の働き方を見据えて二地域居住を選択する人も少しずつ増え始めました。この記事では、二地域居住とはどのような暮らし方であるかくわしく解説します。

二地域居住とは?

「二地域居住」とは、都市と地方の2つの拠点に住居を構えて生活することです。たとえば、もともと都市にある家で生活している人が、週末や長期休暇には地方にあるもう1つの家で生活するパターンが当てはまります。二地域居住は「二拠点生活」「デュアルライフ」「マルチハビテーション」と呼ばれる場合もありますが、基本的にはすべて同様のライフスタイルを表しています。

働き方改革や副業解禁などが叫ばれるようになり、二地域居住にも注目が集まるようになりました。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、リモートワークを導入する企業が増えたことも多くの人が二地域居住に興味をもつきっかけとなっています。

詳しくは後述しますが、二地域居住にはさまざまなメリットがあります。たとえば、多様な視点をもちながら、都市と地方の両方のメリットを自分自身のライフスタイルに活かすことが可能です。普段は利便性の高い都市で働いていても、仕事以外のプライベートな時間は地方でゆっくり過ごしてリフレッシュできます。

単に都市で生活し続けるよりも、心にゆとりのある毎日を送りやすくなるでしょう。一方で、移動のコスト時間がかかったり、2軒分の生活費用がかかるなどのデメリットがあることも踏まえなければいけません。

二地域居住は、本人だけでなく受け入れる地域にとってもさまざまなメリットがあります。地方では人口減少により、さまざまな課題を抱えているところも少なくありません。そもそも日本の人口は減少傾向にあるため、定住人口を増やすのは困難です。

しかし、二地域居住をする人が増えれば、1年のうち一定期間だけでも居住者を増やせます。そうなれば、人材の確保や経済の活性化も期待できます。地域コミュニティの維持にもつながるので、もともと地方に暮らしている人々も安心して暮らせる環境を実現しやすくなるでしょう。

二地域居住には国も注目しており、国土交通省による情報発信や調査にも力が入れられています。二地域居住の推進により地方の活性化を目指す団体や企業も増えており、二地域居住を希望する人々を支援しています。

二地域居住のメリット

二地域居住にはさまざまなメリットがあります。ここでは、具体的なメリットを3つ紹介します。

(1)都会の良さと地方の良さを楽しめる

都会と地方、両方を楽しめる

二地域居住は都会と地方の2箇所で生活するので、その両方の良さを楽しむことが可能です。

都会は便利で刺激も多いですが、忙しい毎日に疲れてしまう人も少なくありません。一方、地方はのんびりとした雰囲気でゆったり過ごせるものの、都会に比べると賃金が低い傾向があります。そこで、平日は都会で働いて週末は地方で過ごすことにすれば、一定水準の収入を確保しつつ心身にとって無理のないゆとりのある生活を実現できます。

平日と週末でまったく異なる場所にいると、生活にメリハリを作ることも可能です。都会と地方では雰囲気がまったく違うので、自然と頭のなかで感覚を切り替えられるでしょう。地方でリフレッシュし、都会では集中的に仕事に励むというスタイルを作れます。

(2)今の暮らしを維持したまま、新しい暮らしをプラスできる

都会の仕事と利便性を捨てる必要はない

二地域居住は、あくまでも都会と地方の両方で暮らします。完全な移住ではないため、都会の生活を維持したまま地方の生活も味わうことが可能です。地方の暮らしに興味があっても、収入面や利便性を考えると移住するのは難しいと感じている人も多いでしょう。二地域居住であれば都会と地方の両方で生活できるので、移住を諦めていた人でも理想に近い暮らしを実現できます。

また、都会では難しいと思っていたことも、地方では実現できる可能性があります。たとえば、地方は比較的土地の価格が安いため、広々とした敷地も購入しやすいです。理想的な住居を構えれば、家族の時間をさらに充実させられるかもしれません。

(3)多様な人たちとつながることができる

新しい拠点で生活を始めれば、新しい人間関係も得られます。それまで出会ったことのない多様な価値観に触れられる可能性が高いです。新しい気づきを得ると、自分自身が決断する際にも選択の幅も広げられます。新しく得られた考え方がその後の人生を豊かにするきっかけになるケースもあります。

また、多様な価値観を身につけられれば、仕事で役立てられる機会も多いです。ビジネスではさまざまな立場の人とやり取りしますが、人によってそれぞれ考え方は異なります。自分自身が多様な価値観に触れていると、どのような人とやり取りするときでも相手の気持ちを汲み取りやすくなります。斬新で画期的なアイデアを思いつくヒントになる可能性もないとはいえません。

二地域居住のデメリット

二地域居住にはたくさんのメリットがあるものの、デメリットといえる部分もあります。ここでは、二地域居住の具体的なデメリットを確認しておきましょう。

(1)移動のコストや時間がかかる

二地域居住を始めると、移動のための費用や時間がかかります。平日は都会、週末は地方で過ごすのであれば、毎週往復するための費用と時間が必要です。一度往復するだけならそれほど大きなダメージにならなくても、何度も往復するとなるとそれなりの負担になります。コストを優先すると移動時間が長くなり、結果的に地方でのんびりできる時間も少なくなる可能性があるでしょう。

また、急用が発生すれば、予定していたタイミング以外で移動しなければならなくなります。しかし、状況によってはすぐに移動できるとは限らないため、そのような場合にどう対応するかあらかじめ考えておく必要があります。

(2)2軒分の住まいにかかるコスト

2つの拠点で暮らすには、住宅や生活に必要な家財道具を2軒分確保しなければなりません。新しく用意するのは1軒分だとしても、住宅そのものを確保するとなると金銭的に大きな負担になります。もちろん、空き家を利用すれば、家賃を安く済ませられる場合もあるでしょう。とはいえ、それでも生活用品の費用や光熱水費はかかってしまいます。

また、長く住み続ければ、住宅のメンテナンスや家電の買い替えが必要になる可能性もあります。2軒分の住まいをどのように維持していくかについては、二地域居住を始める前によく考えておくことが大切です。

(3)意外と忙しい生活になるかも

二地域居住は活動的な人向き

二地域居住に対して、ゆったりとしたスローライフというイメージをもっている人は注意が必要です。地方に滞在できるのは週末のみなので、意外と時間がありません。地方でやりたいことが明確である人ほど、予定をこなすために忙しくなる可能性があります。

二地域居住は単にのんびりするというよりも、「アクティブ・レスト」と表現したほうが適しています。アクティブ・レストとは、体を動かして疲れをとる方法です。地方へ移動して積極的に活動することにより、都会で感じたストレスを発散するイメージです。

よって、単にのんびりするのが目的だと、二地域居住はあわない可能性があります。とはいえ、二地域居住では生活にメリハリを生み出せるので、少しの休息でもリフレッシュしやすくなります。

〈事例〉二地域居住支援に積極的な自治体・千葉県南房総市

南房総DIYエコリノベワークショップの模様(出典:NPO法人 南房総リパブリック)

いま、二地域居住を積極的に支援している自治体が日本全国に存在しています。そのひとつをご紹介します。

千葉県南房総市ではNPO法人 南房総リパブリックが主体となり、二地域居住に興味をもつ人を支援する取り組みを実施しています。豊かな自然が残る里山と、都市で暮らしている人々のつながりを育んでいます。

二地域居住のなかには、古民家の住居を希望する人が多いです。ただし、古民家は無断熱である場合がほとんどで、冬になると室内は外気と同じくらい寒くなります。二地域居住の希望者にとってはそれが大きなネックとなっていたため、DIYで断熱を施すためのワークショップを開催しています。

このワークショップは「南房総DIYエコリノベワークショップ」と題され、二地域居住を目指す参加者に対して3日間の座学とワークショップによる指導が行われました。2019年に実施された同イベントには20名の参加者が集まり、未来のライフスタイルを意識しながら実際に手を動かしてDIYによる改修を体験しています。省エネの観点も取り入れ、実際に南房総市で住居を構える際に役立つ知識を共有しました。この取り組みは、単に知識や技術を伝えるだけでなく、人と人とのつながりを作るきっかけにもなっています。

また、空き家を活用するためのプロジェクトも実施しており、空き家のオーナーの協力を得ながら有効活用を目指しています。東京大学大学院新領域創成科学研究科の清家研究室とも連携し、どのように空き家や土地を活用すべきか模索している最中です。

このように積極的な支援を行っている自治体は全国的に増えてきており、二地域居住を実現しやすい環境が整いつつあります。

参考:NPO法人 南房総リパブリック

まとめ

二地域居住に注目する人が増えており、これからは都心と地方の2つの拠点で暮らす人も増えていくと予想されます。ただし、二地域居住にはメリットとデメリットの両方があるので、まずはそれぞれについてきちんと理解することが大切です。そのうえで、新しい生き方の選択肢のひとつとして、二地域居住を実践してみてはいかがでしょうか。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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