町内会(自治会)のあり方が問われる時代に! 運営方法の見直しも必要?

町内会(自治会)への加入を当たり前のことと考える人がいる一方で、加入することに消極的な人もいます。会費の支払いや役員・当番の活動などを考えると、確かに負担になるかもしれません。ただし、加入して活動に参加することで得られるメリットがあることも事実です。今回は、町内会(自治会)の実情について、今後のあり方も含めて解説します。

改めて問われる町内会(自治会)の必要性

ライフスタイルが多様化する現代社会では、町内会(自治会)のような地域団体の必要性を疑問視する人も増えているようです。ここでは、町内会(自治会)への加入状況について解説します。

都会では町内会(自治会)へ加入しない人も多いのが実状
町内会(自治会)は地域の住民で構成された自治組織で、住民の交流や災害時の助け合いなどを目的とした活動を行います。地域で行われる夏祭りや運動会、防災訓練などに参加したことがあるという人も多いでしょう。

しかしながら、近所付き合いが少ない都会では、町内会(自治会)に加入しない人が増えているという実情があります。たとえば2015年に発表された「東京の自治のあり方研究会」の調査結果では、東京都33区市町村の町内会(自治会)加入率は、2003年から2013年の10年間で約61%から約54%へと減少していることが明らかにされました。

出典:「東京の自治のあり方研究会 最終報告」(2015年発表)

会員になるとイベントの準備に駆り出されたり、ゴミ捨て場の清掃当番が回ってきたりします。会費を支払わなくてはならないため金銭的な負担もありますし、役員になれば定期的な会合にも出席しなくてはなりません。「負担が大きい」「メリットがない」といった不満も多く、加入世帯数の減少により解散するところも出ているほどです。

参考:東京の自治のあり方研究会「最終報告」

そもそも町内会(自治会)へ加入する義務は?
そもそも地域の町内会(自治会)には必ず加入しなくてはならないのでしょうか。

町内会(自治会)は任意団体です。加入の義務はありませんし、強制されるものでもありません。ただし、加入するのが当たり前といった風潮が強いところでは、加入を断ったがためにトラブルに発展したというケースもあります。そのため、加入が任意であることを知らない人や、あまりメリットは感じないものの拒否できずに加入したという人が多いのが実態です。

マンションの住人も町内会へ加入すべき?
災害時の備えや周辺住民との交流のため、マンションの管理組合が町内会に加入するケースがあります。規模の大きなマンションでは、マンションの住民だけで自治会を組織することも珍しくありません。

しかしながら、町内会(自治会)への加入は任意であり、住民のなかには加入したくない人もいて、加入をめぐりトラブルになることもあります。実際に、加入を希望していないとして町内会費の返還を求めて訴訟を起こした事例がありました。このケースでは、マンションの管理費の一部が町内会費の支払いにあてられていたため、管理組合側に返還が命じられています。

関連記事:マンション居住者には必要? 自治会の特徴と加入するメリット

町内会(自治会)へ加入するメリットとは?

町内会(自治会)での活動を負担に感じて加入に消極的な人もいますが、加入することで得られるメリットは少なくありません。ここでは、どのようなメリットがあるのかを具体的に紹介します。

地域の人と交流できる
町内会(自治会)の活動目的の一つが、地域住民の交流です。お祭り・運動会・餅つきなどのイベント、防犯パトロールや清掃などのボランティア活動で顔を合わせているうちに親しくなり、個人的に交流が始まることもあります。近所に知り合いができると困ったときに相談に乗ってもらえることもあり、心強く感じるでしょう。

回覧板が回ってくるので地域の情報を得やすいこともメリットです。交流のなかでは、自治体が発行する広報からは得られない身近な情報が得られることもあります。

防災や防犯活動に参加できる
防災・防犯活動も町内会(自治会)で行う活動の一つです。防災訓練や防犯パトロールなどに参加するうちに防災・防犯の知識がつき、自然と意識が高まるでしょう。活動を通じて顔見知りも増え、いざというときに協力しやすい関係を築けます。子どもや高齢者の見守りボランティアにも参加でき、地域に貢献できます。

また、子育て世帯や高齢者世帯、一人暮らしの女性は不審者情報なども気になるところではないでしょうか。こうした情報は学校、保護者のネットワーク、町内会(自治会)から回ってくることがあるため、加入していると早めに情報が得られます。

災害時の助け合いにつながる
災害時には住民同士の助け合いが欠かせません。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、救助された人のおよそ8割が家族や地域の人に助けられたことがわかっています。大規模な災害が発生した直後は公共の支援が届きにくいだけでなく、情報が混乱しやすい状況です。普段から町内会(自治会)を通じた交流があれば、避難所や支援などの情報を共有しやすくなります。お互いの顔や名前がわかるため、災害弱者の避難活動や負傷者の救出などもスムーズです。

町内会(自治会)にはさまざまな課題もある

町内会(自治会)は、戦前から続く地域住民の自治組織制度です。時代の変化に伴い、現在ではさまざまな課題を抱えていることは否定できません。なかでも代表的なものとして、次の3つの課題が挙げられます。

町内会(自治会)の活動を負担に感じる人が増えている
共働き世帯の増加により、仕事と町内会(自治会)活動の両立に負担を感じる家庭が増えています。役員や当番が回ってくると、平日の夜や週末に開催される会合に出席したり、当番の業務をこなすために時間を割いたりしなくてはなりません。休日にはイベントの準備や運営に駆り出され、からだを休める時間や家族や友人と過ごす時間が少なくなるなど、プライベートが削られることを不満に感じる人もいます。

高齢者や非加入世帯の増加により、活動の担い手が減っていることも課題の一つといえるでしょう。同じ人に負担が偏るようでは、いずれその人も退会を選ぶかもしれません。そうなるとますます加入世帯が減り、一人一人の負担が増えるという悪循環に陥ります。

町内会(自治会)がトラブルの原因になることもある
住民の交流や助け合いを目的とするはずの町内会(自治会)がトラブルの原因になることもあります。具体的には、知らないうちに役員にさせられたり、高額な入会金や寄付金を求められたりといったことです。また、加入を断ったらゴミ集積所の使用を制限されてしまったという例もありました。

規模や活動内容は町内会(自治会)によって異なるため、新しい住民は戸惑いを感じることもあります。「加入が当たり前」と考える古くからの住民と、「加入は任意」と考える新しい住民の意見の相違が、トラブルにまで発展することもあるようです。会費の支払いを負担に感じる人も多いため、会費の額は適切か、活動内容が会費に見合っているかなども見直していく必要があるでしょう。

運営のしかたが時代に合わない
昔からのやり方を継続しているため、会合の進め方や会計処理が非効率というケースもあります。インターネットやSNSで情報共有できる時代に、回覧板や会報などは不要という声は少なくありません。個人情報の扱いも昔と今とでは大きく変わりました。昔ながらのやり方ではムダが多く、役員や会員の負担になってしまいます。時代に合った運営方法を考えていかなければ、加入を希望する人はますます減少し、町内会(自治会)を継続していくことが難しくなるでしょう。

今後の町内会(自治会)のあり方について考えよう!

町内会(自治会)には魅力やメリットがないと思われがちですが、住民同士で助け合い、住みやすい町にするためには必要な組織です。これからも継続していくために、町内会(自治会)は今後どうあるべきかを考えてみましょう。

明確なルール作りをする
これといった取り決めがなく、「以前からそうだったから」という理由だけで活動している場合には、規約や会則を定めて明確なルールを作りましょう。お金の管理を徹底するためには会計規則も必要です。規約や会則を決定する際には、総会を開催し、会員の総意を得る必要があります。トラブルになりがちな役員の決め方や会費の使いみちなど丁寧に話し合い、不平等感のないルールを作っていくことが大切です。このようにしてルールを明文化しておけば、新しく役員になる人や新規加入する人も安心して活動できます。

役員の負担を軽減する
仕事や育児・介護などの事情で、「役員の仕事ができない」と申し出る世帯もあるでしょう。だからといって役員を免除すると、他の会員が不公平感を感じてトラブルになる可能性があります。役員を選出する際には、各家庭の事情を考慮しつつ、不公平感のない決め方をすることが大切です。事情があってもできるだけ運営に参加できるよう、会合の時間をずらしたり、自分のペースでできる業務を引き受けたりといった工夫をしてみましょう。負担が偏ることのないよう、一つの役を複数人で担当するのもよいかもしれません。

無理のない範囲で活動する
町内会(自治会)では、運動会や夏祭り、清掃活動、防災訓練、親睦旅行など、さまざまな行事を行います。長く続けてきた行事でも、高齢化や人口減少などによって参加者が少なくなっていないでしょうか。町内会(自治会)の活動は、地域住民の協力で成り立つものです。人手も資金も限られているため、無理のない範囲で行うことが大切です。

任意団体である町内会(自治会)には、「こうしなければならない」という決まりはありません。行事の内容は時代に合わせて見直し、場合によっては開催自体を取りやめる必要もあるでしょう。代わりに新しいイベントを考えたり、重点目標を決めて力を入れたりなど、柔軟な活動を行ってみてください。

まとめ

町内会(自治会)への加入は任意であり、加入する・しないは個人の自由です。ただし、地域での交流や防災・防犯など、加入することで得られるメリットもあります。

会費の支払いや役員になったときの負担を考えて加入しない世帯も増えていますが、住みやすい町にするためには欠かせない組織です。より多くの住民が町内会(自治会)への加入に魅力やメリットを感じられるよう、時代に合った運営をしていくことが大切だといえるでしょう。

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