【フラット35金利予想】2021年2月の金利動向、アメリカ新大統領就任でも影響は小?

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。年明け2021年2月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

注目されたアメリカ上院選挙は民主党が過半数を獲得し、NYダウは3万ドルを超え米長期金利も1%を超える水準まで上がってきています。その影響で日本国債も売られ始めました。

2020年の12月までは、株価が上がって日本国債の価格が下がると、その割安感に注目したリスク回避型の投資家により即座に買いが入り、日本の長期金利は逆に下がって推移してきました。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

【フラット35】の金利推移は2020年12月から2021年1月にかけて、0.02ポイント下がったのです。ではこの金利上昇局面で2021年2月の【フラット35】金利はどうなるのか、動向を予想します。

バイデン氏の大統領就任で長期金利はどうなるか

11月1日から1月8日までの日米長期金利の動向をグラフにしました。

日本とアメリカの長期金利推移

データ参考:インベスティングドットコム 日本版

アメリカ長期金利は11月のアメリカ大統領選挙の後、おおむね横ばいで推移してきましたが、2021年1月6日の上院選挙でバイデン氏の民主党が過半数を獲得したことで、目に見えて上昇、1%を越えました。1%を超えたのは2020年3月のコロナショック以来です。

民主党が上院下院ともに過半数を獲得したことで議会のねじれが解消し、バイデン氏による大型の経済政策実現が可能になる、という期待が先行したものです。実際にバイデン氏が大統領に就任するのは20日で【フラット35】の金利が決まる機構債の表面利率の発表時期と近い日程となっています。よほどのことが無い限り、バイデン氏の大統領就任までの米長期金利は上昇を続けるトレンドにあります。

これに対して、日本の長期金利はそれほど上がっていないように見えます。そこで同じ期間の日本の長期金利をクローズアップしてみました。

日本の長期金利の推移

12月が0.01%~0.02%で推移していたことからすると、一気に0.03%台に上がったのは目立った動きと言えそうです。しかしアメリカ大統領選挙の投開票があった11月の方がまだ高い水準だったとも言えます。

アメリカ長期金利が目に見えて上がっているのに、日本の長期金利がそれほど上がっていない背景には、日本国内の新型コロナウイルスの感染第3波によって東京の感染者数が2千人の大台に乗ったことがあると思います。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大から安全資産の日本国債を買う動きもあり、債券価格が米国ほどには下がらず長期金利が低く維持されているのです。

安全資産としての日本国債への需要が根強く、債券価格が下がると即座に買いが入り、債券価格が高く維持されているのです(債券価格が上がると利回りは下がる)。そのため、米国ほどには日本の長期金利は上がらないだろうと予想しています。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の2021年2月金利動向の関係

日経平均株価は約30年ぶりの高値を記録していますが、月中の長期金利はそこまで上がらないだろうと予想しています。機構債の表面利率が発表される頃まで横ばいで推移するという前提に立てば、2021年1月の【フラット35】の金利は2020年12月からおおむね横ばいと予想できます。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表されるタイミングの長期金利の水準を予想することが大事になります。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

過去4ヶ月の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移(筆者作成)

ここ4ヶ月は16日~28日ごろの長期金利(オレンジの折れ線)の高さと、翌月に発表された【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の高さが合致しています。

これは直近4ヶ月の機構債の表面利率が発表される日が16日か18日となっていて、ちょうどその時の長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。

2020年10月から2021年1月までの4ヶ月間の長期金利は0.01%~0.04%で推移しており、ちょうど機構債の表面利率が決まるタイミングで0.02%または0.03%となっています。

今月の機構債発表のタイミングに長期金利がどのあたりになるのかピタリと予想することは難しいですが、前述の予想どおりにおおむね横ばいの0.03%あたりで推移していけば、11月12月の金利とそう変わらない水準で決まりそうです。

まとめ~コロナ感染拡大と今後の金利動向の考え方

この記事を執筆している時点で、東京都の感染者は連日2千人を超える水準となっており、このまま増えていくとなると医療崩壊が起きかねません。しかしその一方で日経平均株価は30年ぶりの2万8千円台に突入し、日々最高記録を更新しています。明らかに実体経済と乖離した株高であり、市場はこの非常時にあってもまだ、コロナ収束後を見越した投資行動を行っているのです。

長期金利については金融市場で取引される債券価格によって決まります。投資家にとっての安全資産として国債が買われている前提がある限りは金利が高騰することは無いと考えています。

もちろん、イレギュラーな事象によって短期間に高騰する可能性は否定できません。基本的にマーケットの金利動向は、必ずしも普通に生活しているわたし達の感覚と同じとは限らず、取引に参加をする投資家の集団的な感覚で決まることです。

複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておくことをお勧めします。シミュレーションを行うときには現時点の金利だけでなく、保守的に金利が上がったケースで返済継続ができるかを確認しておいてください。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

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