大学入学金が払えない場合の対処法は? 奨学金や教育ローンは使える?

大学の合格が決まったら、まず入学金を納入期限までに支払う必要があります。しかし、入学金は数十万円と高額になるため、すぐに用意できないという人も多いのではないでしょうか。大学入試では、入学金を期限までに納入しないと合格を取り消されてしまうため、いろいろな方法を活用して期日までに入金する必要があります。この記事では、大学の入学金が支払えない場合の対処法を解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも大学の入学金はいくらかかる?

そもそも大学の入学金はどれくらいかかるのでしょうか。大学入学金は合格後すぐに必要になるため、あらかじめ金額を把握しておくことが大切です。それでは、国公立大学と私立大学の入学金について解説していきます。

国公立大学の入学金
文部科学省の省令によると、国立大学の入学金の標準額は28万2,000円、年間授業料は53万5,800円、初年度の年間納入金額の合計は約81万7,800円となっています。

ただ、2004年以降に行われた国立大学の法人化以降、大学が独自に「標準額の120%を超えない範囲」で学費を自由に決められるようになっています。そのため、国立大学だからといって一律の金額であるとは限りません。実際に授業料を引き上げる大学も出てきていることから、受験したい大学の入学金や授業料を事前に調べておくことが大切です。

公立大学の場合、入学金の平均は地域内で22万8,404円、地域外の場合は39万2,111円となっており、地域外から入学するときの入学金が2倍近くかかることが特徴です。年間授業料の平均額は53万6,382円となっています。

国立大学も公立大学も、入学金と年間授業料のほかに施設費や実習費、諸会費などを徴収されることがあります。これらの費用が加わると初年度の納入金はますます高額になり、用意しづらくなります。合格後にあわてないためにも、施設費や実習費を含めた金額を事前に把握しておくようにしましょう。

出典:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

私立大学の入学金
文部科学省の学生納付金等調査結果によると、私立大学入学金の平均額は24万9,985円、年間授業料90万4,146円、施設設備費18万1,902円となっており、初年度納入金の平均額は133万6,033円となっています。

ただし、私立大学のなかでも、以下の表のように文系、理系、医学歯学系、その他学部では大学入学金や授業料が大きく異なります。

出典:文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」

理科系の大学では文科系の約1.3倍、家政や芸術、体育などを含む「その他学部」は文科系の約1.2倍の初年度納入金がかかります。また、医歯系では非常に高額な入学金や授業料が必要となります。

入学金を納めた後も、授業料の前期分や施設設備費を納入しなければならないため、初年度には多くのお金が必要となります。授業料は前期・後期の分納が主流ですが、大学によっては年間授業料を一括払いしなければならないところもあります。

特に、11月中に進学先が決まる「AO入試」の場合は、年内に入学金と前期授業料を一括で納入しなければならないことが多いので、事前にしっかりとお金を準備しておく必要があります。

このように、大学入学金や授業料の支払いについては学校や受験の方法ごとに違いがあります。合格通知をもらってからあわてないためにも、事前にしっかりと調べておくようにしましょう。

出典:文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について

大学入学金を支払えない場合はどうなる?

大学の入学金はまとまった金額であること、一般的な納入期日が合格から5~10日以内と短期間であることから、期日までにお金を用意できないこともあります。そのような場合はどうなってしまうのでしょうか。

入学金を支払えないと合格取り消しになる
大学が指定する期日までに入学金を支払えない場合は、合格が取り消しとなってしまいます。そのため、滑り止めの大学であっても「入学する権利」を確保するために、入学金を期日までに入金しなければならないケースも出てきます。複数の大学を滑り止めにしている場合は、学校ごとに入学金を支払わなければならないこともあり、費用がかさんでしまいます。

たとえば、滑り止めの大学の入学金の納入期日が、本命の大学の合格発表の前になっていた場合は、滑り止めの大学へ入学金を納入しておく必要があります。納入が1日でも遅れると合格が取り消されてしまうので、複数の大学を受けるときにはそれぞれの合格発表日と入学金の納入期日をしっかりと把握しておくようにしましょう。

入学金は返還されない点に注意
入学金は、入学を辞退した場合でも返還されることはありません。滑り止めの大学へ入学金を納入し、その後本命の大学に合格した場合は、滑り止めの大学の入学金は戻ってこないので注意しましょう。

ただし、滑り止めの大学に入学金と同時に前期授業料、施設設備費などを納めていた場合は、入学金以外の費用は返還されることとなっています。入学を辞退する場合は期限までに申し出て、入学金以外のお金を返してもらうようにしましょう。ただし、AO入試など特別な方法で合格した場合は、入学金だけでなく授業料も返還されない可能性が高いので注意しましょう。

奨学金で入学金は払えない?

入学金の準備は事前に

大学進学のための費用を奨学金で賄おうと考えている人も多いと思いますが、奨学金の給付は入学金納入の期日には間に合いません。そのため、入学金は別途、用意しておく必要があります。

多くの学生が利用する「日本学生支援機構」の場合、奨学金の申し込みは高校3年生の春ごろから3回に分けて行われます。第1回に申し込みをした場合の決定通知は10月下旬となっているため、大学の合格がわかるときには、奨学金がもらえるかどうかが決まっています。

また、奨学金には毎月振り込まれるもののほかに、入学時の費用として10万~50万円を1回だけ借りることができる「入学時特別増額」の仕組みもあるため、初回にまとまった金額を受け取ることも可能です。

しかし、通常分・増額分ともに奨学金が振り込まれるのは大学入学後となっており、大学入学金の納入期日には間に合いません。また、奨学金の第1回の振り込みも4月と決まっているわけではなく6月になる場合もあることから、前期授業料納入期日に間に合わない場合もあります。

減免措置を受けられる場合であっても、いったん納入してから返還という手続きになるため、やはり最初はお金を用意しなければなりません。

このように、入学金の支払いに奨学金を活用することはできないため、別の方法を使ってお金を用意する必要があります。

労働金庫の入学時必要資金融資も検討しよう
入学金を奨学金で支払うことはできませんが、労働金庫、通称「ろうきん」の「入学時必要資金融資制度」を使うと、入学金納入期日までにお金を借りることができます。この制度は、日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」を担保にして、入学前にお金を借りられる仕組みです。この奨学金は貸与される金額が最大50万円とまとまった金額であるため、入学金や授業料の納入に活用することができます。

返済は、入学後に特別増額の奨学金が振り込まれたときに一括でろうきんに返済する仕組みです。このろうきんの融資制度は、お金を借りる期間が短期間であることに加え、学生自身が借り手となることも特徴となっています。

ただ、この制度は「入学時特別増額貸与奨学金」の受給者しか使えない制度です。第一種奨学金または第二種奨学金の申込者で、一定の条件を満たす人が「入学時特別増額貸与奨学金」の申し込みをすることができます。ろうきんの融資制度を使いたい人は、奨学金を申し込む際に「入学時特別増額貸与奨学金」も同時に申し込んでおくようにしましょう。

大学生の奨学金や減免制度については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:大学生・専門学生など対象の「給付型奨学金+授業料減免」新制度を解説

入学金を用意できない場合の対処法

入学金を用意できない場合、どのような方法を使ってお金を工面したらよいのでしょうか。入学金を納入できないと合格取り消しになってしまうため、必ず期日までにお金を用意する必要があります。それでは、入学金が用意できない場合の対処法を詳しく見ていきましょう。

教育ローンを借りる
入学金をすぐに用意できない場合は、教育ローンを借りるという方法があります。教育ローンは公的な金融機関や民間の金融機関で借りられます。どちらも入学前に申し込みと貸付金の受け取りができるため、入学金の支払いに使うことが可能です。

公的な教育ローンは日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」のみとなっており、無担保・固定金利で最大350万円まで借りることができます。ただし、世帯年収の制限があり、所定の条件を満たす必要があります。

一方、銀行や信用金庫などの民間の教育ローンは、年収制限がなく借り入れ上限額が高めであることが特徴です。金利は金融機関や条件によって異なります。無担保や有担保、固定金利や変動金利など、自分に合った組み方が可能です。

そのほか、在学中は金利返済のみにできる「元金据置期間」を設定できるタイプ、親子リレー返済ができるタイプ、繰り上げ返済ができるタイプなどもあります。ローンを検討するときには、複数の金融機関を比較して、メリットが大きい教育ローンを選ぶようにしましょう。

母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用する
20歳未満の児童を扶養している母子家庭や父子家庭などは、必要資金を無担保で貸し付ける「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」を利用できる場合があります。この制度では進学資金のほか、「結婚資金」や「住宅資金」など合計12種類の資金を借りることができます。

入学金や授業料などに利用できるものとしては、「就学支度資金」や「修学資金」があります。「就学支度資金」では、国公立大学では最大38万円、私立大学では最大59万円までを借りることができます。「修学資金」で借りられるお金は月額で最大9万6,000円となっています。どちらも無利子で返済期間は20年以内となっています。

ただし、これらの貸付金は地方公共団体を通して行われるため、審査から給付まで一定の時間がかかります。余裕を持って、資金が必要になる約3ヶ月前から相談をするようにしましょう。

地方自治体が実施している奨学金制度
国だけではなく、地方自治体が実施している奨学金制度もあります。入学金の用意が難しい場合は、居住している都道府県や市町村の奨学金についても調べてみましょう。

地方自治体の奨学金の受給条件は、ほとんどの場合「本人またはその保護者が、その地方自治体に住んでいること、もしくは出身者であること」となっています。募集時期や貸付条件、貸付金の限度額などは地方自治体によって異なるため、早めに情報収集をすることが大切です。

たとえば、都道府県の社会福祉協議会による「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」では、就学支度費や教育支援費の貸し付けが無利子で行われています。奨学支度費の限度額は50万円、教育支援費の限度額は大学で月6万5,000円、短期大学で月6万円以内となっており、まとまったお金を借りることができます。返済期限は据置期間後20年以内となっています。

ただし、この奨学金制度は低所得者世帯向けになっているため、所得制限があります。障害者世帯、高齢者世帯は所得制限なしで借りることが可能です。このように、いろいろな条件がありますので、この奨学金を検討するときには、利用条件をしっかりと確認するようにしましょう。

子どもの教育費については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:子どもの教育費には“奨学金”と“教育ローン”どっちがいい? 理解しておきたい違い

まとめ

大学に合格したときには、大学が定めた日にちまでに入学金を納入しなければなりません。納入期日までに入金できないと、合格が取り消しになってしまうので注意が必要です。

入学金をすぐに用意できない場合は、奨学金制度や公的支援、民間の教育ローンなどを活用することができます。ただし、公的支援や奨学金の場合は申請から支給までに時間がかかり、入学金納入の期日までに間に合わないこともあります。入学金を用意できないときには、お金を工面する方法を早めに検討するようにしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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