住宅ローンは80歳まで借りられる? 年齢別の返済プランや注意点を確認

住宅ローンを利用するためには、金融機関の審査基準を満たす必要があります。審査基準には必ず年齢が設定されており、申し込みが可能な年齢とともに完済時の年齢要件も明記されています。

最近では申し込み可能な年齢を引き上げている金融機関もありますが、80歳まで申し込める住宅ローンはあるのでしょうか。

今回は住宅ローンを利用できる上限年齢を紹介するとともに、年代別の注意点についても解説します。

住宅ローンは何歳まで申し込みが可能?

 住宅ローンに申し込める年齢は、その住宅ローンを提供する金融機関によって異なります。例えば、住信SBIネット銀行では、借入時年齢について「仮審査申込時満20歳以上、借入時満65歳以下」と定めています。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する【フラット35】では、借入時年齢は申込時現在で70歳未満ですが、親子リレー返済を利用すれば70歳以上でも申し込めます。ただし、完済時の年齢は80歳とされている点に注意しておきましょう。

申し込み条件を満たしていたとしても、完済時年齢が要件として設定されている場合、返済期間が短くなってしまうことがあります。借入金額によっては毎月の返済額が高額になり、家計に負担を与えることになるのです。

申し込み時の年齢に合った返済プランを考えよう

住宅ローンは、申し込み時の年齢に合わせて無理のない返済のしかたを考えることが大切です。ここでは、住宅ローン返済の注意点について、20代から70代までの各年代別に解説します。

【20代】勤続年数を重ねる

20代で住宅ローンを組むと、返済期間を長期間確保することができます。返済期間が長くなれば、毎月の返済額を無理のない範囲に抑えることもできるでしょう。

ただ、金融機関によっては審査基準に勤続年数を設けているところもあり、勤続年数が3年以上なければ申し込めないケースもみられます。

そのため、新卒で入社直後の場合や転職した直後なら、審査基準を満たすまで勤続年数を重ね、その後に申し込むほうがいいでしょう。

自営業者の場合、営業年度が3年以上必要なことが一般的ですので、条件を満たしてから申し込むようにします。

【30代】毎月の返済に余裕を持って

 30代なら、完済時の年齢制限に該当せず、最長の借入期間で住宅ローンが組めるケースが多いです。ただし、子どもがいる場合は、今後の教育費についても考えておかなくてはなりません。子どもが高校・大学と進むにつれて、教育費の負担は増していきます。将来のことを考えたら、教育費の積み立ても始めておく必要があります。住宅ローンの返済と教育費の積み立てとが家計を圧迫することがないよう、ライフプランや返済計画を立てていくことが大切です。

【40代】定年後の返済に気をつけて

 40代で住宅ローンを利用する場合には、定年後まで返済が続く可能性があります。定年退職して毎月の給料がなくなったときに、どのように返済をしていくかを考える必要があるでしょう。また、子どもの教育費が増える年代でもあるため、毎月の返済には余裕を持ちたいところです。

自己資金に余裕がある人は、頭金を多めに入れて借入金額そのものを少なくするといった工夫もできます。定年後に備えて、こまめな繰り上げ返済で早めに完済することも検討してみてください。

【50代】頭金を多めに用意する

 住宅ローンを申し込むときの年齢が50代の場合は、返済期間が短くなってしまいます。返済期間が短くなると借り入れできる金額が少なくなるため、十分な頭金を用意しておく必要があります。頭金を多く入れて借入金額を抑えることは、月々の返済負担の軽減にも有効です。

また、50代からは、定年後のローン返済をどのようにするかをしっかりと考えておくことも大切です。退職金で完済が可能か、退職金を繰り上げ返済にあてた場合には定年後の生活資金に支障が出ないかなど、丁寧にシミュレーションをしておきましょう。

【60代】親子リレーも検討

60代で住宅ローンを組む場合は、定年退職後の資金計画をしっかりと練る必要があります。返済期間が短い分、毎月の返済負担は重くなります。年金から住宅ローンを返済していく場合は、受け取れる年金額を把握して、無理のない借り入れをするようにしてください。

もし、子世帯との同居が可能ならば、親子リレー方式で返済できるローンも検討してみましょう。親子リレーローンは子どもの年齢を基準にして返済期間が決められるため、最長35年の利用が可能となり、毎月の負担を軽減できる可能性があります。

【70代】保有資産を金融資産に示す

 70代でも金融機関によっては住宅ローンを申し込むことが可能です。ただ、完済時の年齢を考えると、返済期間が10年未満になる可能性が高いため、出来るだけ借入金額を少なくするために頭金を多く準備するか、毎月の返済額を増やす努力が必要です。

70代だと収入が年金のみのケースが多く、金融機関に現在どのくらいの資産を保有しているのかを示す必要もあります。

借入金額や返済期間を考慮し、毎月の返済額が負担になることが想定されるなら、できるだけ親子リレー返済の利用も考えてみましょう。

住宅ローンの審査は年齢以外もポイントになる

住宅ローンの利用には年齢以外の条件もあり、審査に通らなければお金を借りることはできません。

安定した収入があること

審査で特に重視されるのが、安定した収入があるかどうかという点です。住宅ローンを申し込む際には、源泉徴収票や給与証明書、確定申告書など、所得を証明できる公的書類の提出が求められます。毎月安定した収入がある公務員や会社員は、給料の多い少ないにかかわらず金融機関から信用され、審査に通る可能性が高いとされています。

また、勤続年数も審査の対象になることがあります。転職したばかりで勤続年数が短い場合など、収入の安定性が判断しづらく、金融機関から評価されにくいようです。

健康状態が良好であること

ほとんどの金融機関では、「団体信用生命保険」へ加入することを住宅ローン利用の条件にしています。団体信用生命保険とは、住宅ローン返済中に契約者に万が一のことがあった場合、保険金により住宅ローンの残債が支払われる制度です。

生命保険なので、健康状態によっては加入を断られることもあります。年齢を重ねるにつれて生活習慣病などの疾病リスクが高まるため、申し込み時の年齢が高くなるほど審査も厳しくなりがちです。団体信用生命保険に加入できない場合には、その時点で融資対象から外されてしまうことに注意してください。

ちなみに、【フラット35】は、団体信用生命保険へ加入しなくても利用できる住宅ローンです。加入する・しないを任意で選べますし、加入する場合も2017年のリニューアルで保障内容がより充実しています。ぜひチェックしてみてください。

購入物件の担保評価

住宅ローンを利用して物件を購入する際、融資をする金融機関は購入物件に抵当権を設定します。住宅ローンの返済が難しくなり将来的にも返済が見込めない場合には、任意売却あるいは競売することになります。そのため、物件に担保価値があるかどうかも審査の基準となるのが一般的です。つまり、物件の価値が高いほど、審査に通る可能性も高まるということになります。

定年後も住宅ローンの返済が続く場合の注意点

定年退職後は、住宅ローンの返済が負担になることも多いため、返済計画はシビアに考えておくことが大切です。ここでは、定年後まで住宅ローンの返済が続く場合の注意点を解説します。

退職金一括払いに注意する

住宅ローンの残高を退職金で一括支払う予定の人もいますが、退職金が当初の想定どおりに支給されるのかは確定できません。また、支給されるとしても想定していた額よりも低い金額になる可能性もあります。

退職金で住宅ローンを完済しようと考えているなら、まずその点をしっかりと確認しておきましょう。

また、現在では一つの会社にずっと勤めるスタイルが少なくなり、自分のスキルアップのために転職を考える人も増えています。転職した場合、在職年数によっては退職金が少ない、もしくは支給されない可能性もありますので、退職金だけを頼りにしていると、目論見が外れ、思わぬ負担を強いられる点に注意しておきましょう。

退職金を取り崩したあとの生活資金を考える

 予定どおり退職金で住宅ローン残債を一括支払ったとしても、その後の生活資金が不足しないかを考慮しておかなければなりません。

退職金を住宅ローンの返済にあてるなら、それを除いた資金で生活できるかどうかシミュレーションし、どのくらいの資産が必要なのかを早めに把握することが大切です。必要な資産額は自分たちがどのような老後生活を送りたいかによっても異なります。必要な金額を把握したうえで、計画的な資産形成に取り組むようにしましょう。

定年後も住宅ローン返済が続く場合

 退職金などで住宅ローンを完済せず、リタイア後も住宅ローンの返済が続く場合、収入に対する返済額が適正な返済負担率になるかをシミュレーションすることも大切です。

退職後の収入が年金のみの場合、返済負担率が30%を超えてしまうことも珍しくありません。返済負担率が30%を超えると住宅ローン破綻を引き起こす可能性が高くなるともいわれているため、何らかの手段で収入を増やすか、預貯金を切り崩すなどの対処法を事前に考えておきましょう。ただ、預貯金を切り崩す場合は、その後の老後生活に影響のない範囲に収めることが大切です。

住宅ローンは何歳までに組むのがいいの?

前述のとおり、住宅ローンの申し込みは70歳くらいまで可能ですが、ほとんどの金融機関は80歳くらいまでに完済することを条件にしています。最長返済期間である35年の利用を予定するなら、遅くても45歳までには申し込まなくてはなりません。

しかしながら、団体信用生命保険への加入や定年退職後の返済のことを考えると、なるべくなら若く健康な時期に申し込んだほうがよいでしょう。たとえば、65歳定年だとすると、住宅ローンを借りるのにおすすめの年齢は30~35歳くらいです。定年時には住宅ローンを完済できるため、退職金や年金は老後の生活資金に確保できます。いずれはマイホームをと考えている20代や30代の方は、できるだけ早いうちに行動しましょう。

まとめ

 一般的に住宅ローンは80歳までに完済することが条件となっています。50代でも60代でも申し込みはできますが、申し込み可能な年齢は70歳くらいまでとされています。ただし、年齢以外にも年収や職業などの審査基準があり、年齢の条件をクリアしているからといって必ずしも融資が受けられるとは限りません。

また、申し込み時の年齢によっては定年退職後にも住宅ローンが残る可能性があります。退職時にどのくらいの残債があるかをあらかじめ把握しましょう。同時に、年金で住宅ローンを返済していけるか、再雇用や再就職は必要かなど、定年後の返済についてもしっかり考えておくことが大切です。

(最終更新日:2024.04.24)
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