埼玉県は待機児童数が急増している県の一つです。待機児童ゼロに向けた取り組みが各地で進むなか、なぜ埼玉県では待機児童が増えてしまっているのでしょうか? 市区町村別の待機児童数や、市の取り組みなどから、埼玉県で待機児童が減らない理由を探ります。

埼玉の待機児童数は1,000人以上

埼玉県は47都道府県の中で人口が5番目に多く、東京へのアクセスも良いことから、現在も人口が増加している県の一つです。東京からの引っ越し先としても検討されることも多い埼玉県ですが、子育てと仕事の両立は可能なのでしょうか。待機児童数のデータから埼玉県の現状を考察していきます。

まず、埼玉県の過去5年の待機児童数推移は下記のとおりです。

※「埼玉県保育所等の待機児童数について」:埼玉県(令和2年4月1日現在)

埼玉県の待機児童数は2009年時点で1,500人を超え、待機児童対策が推し進められてきました。
その後、いったんは減少したあと、再び増え始めて2018年に1,500人台に達しますが、2019年からは減少傾向となり、2020年には1,083人となりました。

0歳児〜2歳児の待機児童割合が93.9%
待機児童の年齢は、2020年の最新調査では下記のような内訳となっています。

※埼玉県「埼玉県の待機児童数、年齢別待機児童の割合、保育所等入所申込者数と待機児童数等の状況」(令和2年4月1日現在)

この表からわかるように、1歳児の待機児童が75.8%と他年齢に比べて圧倒的に多く、0歳児〜2歳児の構成比は、全体の93.9%に上りました。
出産を機に育児休業を取得したものの、預ける先が見つからず育児休業を延長した母親が多そうです。

待機児童以外にも「隠れ待機児童」が6,000人以上?
埼玉県では待機児童対策として、保育サービス受け入れ枠を拡大するよう施策を行っていますが、待機児童は1,000人をなかなか下回りません。
さらに、実質的には待機しているのに待機児童には含まれない「隠れ待機児童」も6,000人以上と、かなりの数に上る可能性があります。

下記は入所を希望しているものの入所していない児童の数を理由別にまとめたものです。

※埼玉県「埼玉県の待機児童数、年齢別待機児童の割合、保育所等入所申込者数と待機児童数等の状況」(令和2年4月1日現在)

上記の理由に該当する場合、待機児童に当てはまらないものとして、待機児童からは外されてしまいます。
しかし、保育所に預けられないためにやむなく育休を延長している場合や、求職を断念した場合なども多く、「隠れ待機児童」と見なされるケースが少なくありません。
埼玉県にはこうした潜在的な待機児童が多いと考えられます。

埼玉県内の市町村別待機児童数ランキング

待機児童が多い市町村にはどんな特徴がある?

では、埼玉県内の市町村の待機児童数を見ていくと、どのような傾向がわかるのでしょうか? 待機児童数が多い市町村を順に並べると、以下のようになります。

※埼玉県「市町村別保育所等待機児童数(令和2年4月1日現在)より

待機児童数がダントツで多いのは、1位のさいたま市です。埼玉県内の人口は132万3,995人。県内で最も人口の多い都市であることから、待機児童問題も深刻化していると考えられます。

2位の朝霞市 の待機児童数は68人と数自体は大きくない印象ですが、人口は14万3,153人とさいたま市の10分の1近くであることを考えると、決して軽視できません。

3位の三郷市の待機児童数も、2019年に比べて半数近くになっていますが、人口は14万2,855人。人口比ではさいたま市を上回る水準です。問題を解消するための施策が急務といえるでしょう。
※人口はいずれも2020年12月現在

県内での待機児童数の差と路線との関連性
一方、埼玉県内で待機児童ゼロを実現しているのは、行田市や秩父市、飯能市、加須市など34市区町村で、前年よりも増加しています。なぜ県内でここまで大きな差があるのでしょうか?

待機児童数の多いエリアとして上位のさいたま市、朝霞市、三郷市の共通点は、複数の路線や大型道路の通過点に位置しています。
さいたま市は京浜東北線や高崎線を利用できる大宮駅を中心に、武蔵野線を利用できる浦和周辺エリアが含まれ、東北自動車道や首都高速埼玉大宮線も通っています。
朝霞市も東武東上線と武蔵野線、三郷市もつくばエクスプレス線と武蔵野線が利用可能です。

こうした地理的な状況から、県内の他駅や東京都内へのアクセス、双方が可能な道路や路線を有するエリアに、子育て世帯が集中している可能性が考えられます。

待機児童数が少なく、子育てしやすいエリアは?

待機児童が少ない穴場エリアはどこ?

では、アクセスの良さと待機児童数の少なさ、この双方が叶うエリアはあるのでしょうか。

たとえば、県内で東京に近い市の一つである草加市は、待機児童数34人とそこまで多くはありません。東京方面の路線は東武伊勢崎線のみなので、通勤ラッシュの混雑度合いは厳しくなりますが、周辺に大型ショッピングモールなどが充実していて、生活しやすいのが魅力的です。

また、ふじみ野市(待機児童数5人、東武東上線利用可)や所沢市(待機児童数2人、所沢駅:西武池袋線・新宿線利用可、東所沢駅:武蔵野線利用可)も同じ理由で、子育て世帯におすすめのエリアと言えるかもしれません。

さいたま市の待機児童が増えてしまう理由は?
待機児童数が少なく、東京へのアクセスが便利なエリアがほかにもあるにも関わらず、さいたま市で特に待機児童が多いのはなぜなのでしょうか。
その理由を、さいたま市の特徴から考察してみましょう。

・0歳~中学卒業まで医療費負担など、子育てへの手厚いケア
さいたま市は子育てに関わる魅力的な制度をいくつか設けていますが、そのなかでも家庭に大きな影響を与える制度が「子育て支援医療費助成制度 」です。
これは、子ども(0歳から中学校卒業前まで)の医療費の一部負担金(保険診療分)の全額を助成するというもので、簡易な登録申請を経て利用することが可能です。

子育ての負担となる医療費を軽減することを目的とした本制度は高い評価を得ており、子育て世帯がさいたま市を選ぶ理由として挙げることもめずらしくありません。

そのほか、「自転車安全推進サポーター」に認定された子育て世帯を対象に、電動アシスト付き3人乗り自転車の購入資金を補助し、子ども用ヘルメットを進呈する「パパ・ママ自転車安全推進サポーター事業制度 」など、住民のニーズに密着した独自の取り組みが多いのも特徴。
市の制度を活用することで子育てがスムーズになることが人気の理由のようです。

・多様な働き方を実現する市の取り組みが積極的
子育てだけでなく、多様な働き方を推進しているのもさいたま市の特徴です。
さいたま市にある企業に対して「多様な働き方実践企業認定制度」を設け、男性社員の子育て支援に積極的な企業や、時短制度などを取り入れる企業をランク分けし、可視化する取り組みを進めています。

こうした市の取り組みは、子育てをしながら仕事を両立しようと試みる人の数を増やすことにつながっているでしょうし、同時に子どもを預かってほしいニーズを高めている側面もあるのでしょう。

育てやすさを重視する埼玉、預けやすさの向上が今後の課題

埼玉県には、さいたま市に人口と待機児童が一極集中する特徴と、東京へのアクセスが良いエリアに待機児童が増えやすい傾向があることがわかりました。その背景には、市の子育てに対する取り組みや、働きやすさや復職しやすさなどへの改善があります。

住民が子どもを育てながら働くことを実現させるためには、0~2歳児を預けられる場所の充実が求められます。今後、入所申込数に見合う形で改革が進むことを期待しましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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