共働き夫の育児・家事時間は妻の4分の1以下? その理由と分担のヒント

妻に比べて、夫が育児や家事に費やす時間が圧倒的に少ないと言われる日本。専業主婦だけでなく、共働き世帯でも状況はあまり変わらないようです。夫と妻の育児や家事にかける時間はどの程度なのか、負担を減らすためのヒントや、夫と妻の家事と育児の分担のコツなどを紹介します。

共働きでも、夫の育児時間が少ないのが実状

男女共同参画社会基本法が施行されてから20年あまりが経過しています。その後、家庭での育児や家事にかける夫婦の負担割合はどうなっているのでしょうか。内閣府男女共同参画局が行った「社会生活基本調査」の中から、男性の育児・家事関連時間の調査結果に基づき、子育て世帯の家庭のケースを紹介します。

夫の育児・家事時間は年々増えてきているものの…

総務省統計局の「平成28年社会生活基本調査」(2016年実施)によると、6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間は妻が1日あたり平均7時間34分(454分)であるのに対し、夫は平均1時間23分(83分)です。

データでは1996年から5年ごとの推移が示されていますが、1999年の男女共同参画社会基本法の制定前も施行後も、妻の家事関連時間は、ほぼ変わらず横ばいが続いています。夫の家事関連時間は1996年の38分から少しずつ増えてきてはいるものの、妻と比較すると5分の1以下であることがわかります。政府は、夫の育児や家事に費やす時間を1日あたり2時間30分(150分)とすることを当面の目標としています。

夫の育児・家事時間は先進国の中で最も少ない

夫の育児や家事に費やす時間は年々少しずつ増えているものの、6歳未満の子どもを持つ世帯ですから、比較的若い夫婦が対象の中心になるかと思われます。たしかに、昔よりも夫が育児や家事に積極的に関与して生活を楽しむ様子が、SNSの発信などからも感じられるのではないでしょうか。

ただし、日本人の男性の育児や家事関連時間は増えているとはいえ、世界の諸外国と比較するとまだ圧倒的に少ないことがわかります。最も育児・家事関連時間が長い国はスウェーデンで、1日あたり平均3時間21分(201分)です。それに比べ、日本は先進国の中でも最低の水準であり、1日あたり平均1時間23分(83分)という結果が出ています。

共働きでもあまり変わらないのが現実

先述の育児・家事関連時間の調査結果は、夫婦の就労状況は定かではありません。以下に、共働き世帯かそうでないかの比較グラフを示しています。共働きかそうでないかに絞って比較した場合でも、夫の育児・家事関連時間はあまり変わらない結果になっていることがわかるでしょう。

つまり、共働き世帯では妻が家事や育児の大半を担っていることになります。妻の就労時間にもよりますが、フルタイムや長時間勤務では自分の時間や睡眠時間を削るなどして、時間をやり繰りしていることになり、かなりの負担となっていることが推測されます。

出典:「平成28年社会生活基本調査」の結果から~男性の育児・家事関連時間~|内閣府男女共同参画局

夫の育児・家事の時間が少ない理由

育児や家事を夫婦共同で行なうのではなく、「手伝う」というスタンスの夫に対して不満を持つ妻も多いようです。これには、労働事情や家庭環境などが起因しているケースもあります。以下に、夫の育児・家事の時間が少ない原因について考えてみましょう。

夫の労働時間が長い

なぜ、日本人男性は諸外国と比べて育児・家事の時間が少ないのでしょうか。そこには古くからの日本の慣習や現代社会の労働環境が背景にあります。日本人は勤勉な国民性で知られていますが、子育ての時期とも重なる30~40代男性の労働時間は、ほかの年代に比べて最も長く、横ばいの状態が続いています。

この年代の男性は、重要なポストを与えられ企業の中心的役割を担うことも多いものです。家計を支えるために家庭を顧みず、長時間ハードに働かなければならないこともあるでしょう。労働時間が減らない限り、育児や家事をする時間が増えることはありません。その分、妻に育児や家事のしわ寄せがきてしまうのです。

「夫は仕事」「妻は家事」という考え方が根強い

内閣府が2016年に行った統計調査の中で、男女労働者の意識について調査した興味深いデータがあります。 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に関する調査では、全世代の44.6%の男女が「賛成、どちらかといえば賛成」と答えています。60歳以上の男女は賛成派が多い傾向にありますが、それ以外の世代では反対派が過半数を占めています。30~40代の男女も反対派が賛成派を上回るものの、それでも40%以上が賛成と答えているのです。

1990年頃までは専業主婦の割合が多く、そのような家庭で過ごしてきた子どもにとっては母親が家で育児や家事をすることが当然という考え方もあるのかもしれません。20代の若い世代においても約4割の男女が「夫は仕事」「妻は家庭」という考え方が根強いのです。

共働きの夫婦が育児や家事を分担するコツ

子どもが小さいうちの共働きは、育児や家事の分担が不可欠です。分担がうまくいかないと「自分だけが損をしている」という不満が生まれてしまいます。そこで、どうすれば育児と家事の役割を分担できるかのコツを紹介します。

やってほしいことを具体的に伝える

家事を頼んでも思ったとおりにやってくれないため、結局はあとから自分がやり直す羽目になる…そんな話を聞きます。お互いに家事に関するこだわりや守ってほしいルールがあるなら、明確に伝えることが大切です。具体的に何をどうやってほしいのか、一つ一つ説明して伝えるようにしましょう。

たとえば、「洗濯物を取り込んで、タオルを畳んで、2段目の棚に戻してほしい」まで具体的に言うことがコツです。さらに、「3つに折ると棚にピッタリ収まる」「今置いてあるものは上に、洗濯したものは下に」など付け加えると、より伝わりやすくなります。

タスク管理をする

家事は炊事、洗濯、掃除に限ったことではなく、「名もなき家事」が意外に多いものです。男性は、それらのタスクを把握していないこともあるでしょう。一度、どのような育児や家事のタスクがあるか、書き出して可視化してみることをおすすめします。子どもの着替えや送り迎え、歯磨きなど細かく分けてリストアップしましょう。タスク管理アプリを使えば、簡単にやることリストが作成できます。

妻でなければできないこと、夫が得意なことなどから優先的に配分して、残りのタスクをうまく分担するのがコツです。「見える化」しておくことで管理しやすくなり、タスクを効率よく進められるでしょう。

完璧を目指さない

タスクを可視化するとわかりますが、毎日必ずやらなければならないタスクは限られています。共働きでもそうでなくても、子育てで忙しいときは完璧を目指す必要はありません。特に、子どもが小さいうちは不意に体調を崩すことがよくあります。仕事をしていれば、急な残業ということもあるでしょう。タスクをあらかじめ分担していても、必ずしもそのとおりに進められないことも起こりがちです。

忙しいときは手を抜いたり、タスクを後回しにしたりして臨機応変に対応しましょう。食事は時短メニューや総菜、レトルトや冷凍食品などを活用したり、時には家事代行サービスや自治体のファミリーサポートを依頼したりして乗り切ることも検討してみてください。

まとめ

共働き世帯でも、一般的に育児や家事の負担は妻に偏りがちな家庭が多いのが現状です。ただでさえ育児や家事で忙しいのに、仕事までこなすのは並大抵のことではありません。

妻の負担が大きくなっているのであれば、その負担を減らすためにも、家事や育児をなるべく夫婦で分担して行いましょう。「手伝う」ではなく、「協働」という意識を持って取り組むことが大切です。

また、時間的に夫の協力を得るのが難しい場合は、必要に応じて家事サービスや自治体のファミリーサポートなどを活用することも検討してみてはいかがでしょうか。

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