コロナ禍で、これまでのマンション選びの考え方が変わりつつあります。在宅勤務が定着して、通勤時間の制約から解放され、会社などから多少遠くても、時間がかかっても広くて、安全な住まいを求める傾向が強まっているのです。そこで、注目しておきたいのが新築マンション「PER」という指標です。

PERは「年間賃料の何倍で買えるか」を意味する

PERというのは、証券取引などの参考とされる指標で、株価収益率(Price Earnings Ratio)のことです。

株価が1株当たりの当期利益の何倍になっているのかを示しています。PERの数字が大きければ、利益に比べて株価が高く割高であることを意味し、PERが小さければ、利益に比べて株価が低く割安であるということになります。

不動産調査機関の東京カンテイが、この考え方を新築マンションに適用して、調査を行っています。

新築マンションの場合、そのマンションが生み出す利益、すなわち年間の賃料に対して、そのマンションの価格が何倍になっているのかを表します。たとえば、年間の賃料収入200万円を得られる物件で、価格が5,000万円とすれば、5,000万円÷200万円で、PERは25。同じく年間賃料収入200万円のマンションでも、価格が4,000万円ならPERは4000万円÷200万円で20になる計算。言うまでもなく、PER20のほうが割安であり、お買い得ということになります。

2019年の首都圏の平均PERは24.36に

この新築マンションPER、都心部の価格の高い物件は、どうしても賃料との見合いで割高になります。それに対して、郊外部にあって比較的リーズナブルな価格帯であるにもかかわらず、交通アクセスの良さ、利便性の高さなどから、一定の賃料収入を得られるエリアではPERの数値が小さくなって、割安感、お買い得感があります。コロナ禍で郊外や地方が見直されている現在、これからのマンション選びにとっては、たいへん参考になる指標といっていいでしょう。

まず、三大都市圏を比較すると、2019年のPERは図表1にあるように首都圏が24.36で、近畿圏は22.53、中部圏は22.26という結果でした。価格は首都圏が一番高く、近畿圏や中部圏に比べると大きな差があります。もちろん、その分首都圏の家賃は高いのですが、家賃には価格ほどの差はありません。そのため、近畿圏、中部圏に対して首都圏のPERが高くなり、三大都市圏のなかでは首都圏が一番割高で、あまりお買い得ではないということになります。

出典:東京カンテイ「2019年新築マンションPERの概況(首都圏)」「2019年 新築マンションPERの概況(近畿圏)」「2019年新築マンションPERの概況(中部圏)」

首都圏で賃料水準に対して価格が割安なのは京王多摩センター駅

テレワークが定着していますから、いっそ東京の会社に勤めながら、PERの数値が小さくて、お買い得感のある地方のマンションを求めるというのも一つの選択ですが、そこまで決断できる人は少ないでしょう。

そこで、首都圏で調査可能な184駅のうち、どこが一番お買い得かを見ると、PERが低いお買い得の場所は図表2のようになっています。

トップは京王相模原線の京王多摩センター駅で、PERは15.96でした。反対に首都圏で最もPERの数値が大きかったのは都営地下鉄浅草線の泉岳寺駅の38.56です。両者には2.4倍の差があります。70平方メートル換算の価格も京王多摩センター駅は3,622万円に対して、泉岳寺駅は1億2,173万円ですから、こちらは3.4倍の格差です。京王多摩センター駅は、首都圏で新築マンションが3,000万円台というリーズナブルな価格帯で手に入り、かつ賃貸運用する場合には、約16年で購入資金を回収できるのですから、コロナ禍で先行き不透明感が強い現在、注目しておいていいエリアではないでしょうか。

出典:東京カンテイ「2019年 新築マンションPERの概況(首都圏)」

多摩センターは若者が多い活気のあるエリアに

京王多摩センター駅は、PERから見て割安感があって、お買い得であると同時に、エリア的にも魅力のある場所です。

第一には、交通アクセスに恵まれている点が挙げられます。京王相模原線の京王多摩センター駅のほか、小田急多摩線の小田急多摩センター駅、多摩都市モノレール線の多摩センター駅のあるターミナル駅です。京王相模原線なら、新宿駅まで30分強でつながっていますから、テレワークでたまに出勤するには、悪くない距離感ではないでしょうか。

多摩ニュータウンの中心として各種の都市機能も整備されています。買い物施設としては「マグレブ」など複数の大規模商業施設、シネコンがそろい、周辺には世界的にも知られるテーマパークの「サンリオピューロランド」があるほか、「パルテノン多摩」などの複合文化施設もあります。さらに中央大学、帝京大学などの多くの大学があって、郊外ではありますが、若者が多く、活気のあるエリアが形成されています。

新築マンションPERの低さだけではなく、たいへん住みやすい魅力あるエリアといっていいでしょう。

八王子エリアは4,045万円を17年弱で回収できる

京王多摩センター駅だけではなく、図表2を見ると、比較的リーズナブルな価格で手に入る、PERの数値が小さいエリアがいくつかあります。

たとえば、2位のJR中央線の八王子駅は、PERが16.67で、70平方メートル換算価格は4,045万円です。この八王子市、最近は東京都心に近い立川市にやや押され気味ですが、それでも東京都内の市町村ではナンバーワンの人口を誇り、閉店したそごう八王子店がJR東日本のショッピングセンター「セレオ八王子」に生まれ変わるなど、大規模商業施設のリニューアルなどによって活気が戻りつつあります。

また八王子市には、世界一登山客が多いといわれる高尾山もあり、多摩地域唯一の花街もあって、観光資源も豊富です。

そのほか、JR常磐線の柏駅もPERが17.00と割安感があり、かつ70平方メートル換算価格は3,972万円と比較的手に入れやすい価格帯になっています。

八王子駅はPERが低下した駅の上位にも挙がる

調査にあたって東京カンテイでは、前年に比べてPERが低下した、つまり割安感が高まったエリアのランキングも作成しています。そのトップは図表3にあるように、東京メトロ千代田線の乃木坂駅、2位は東京メトロ日比谷線の神谷町駅で、いずれも価格は1億円を超えており、簡単には手を出せそうもありません。

そのなかで、注目しておきたいのが、先のPER水準が低く、割安感のあるランキングの2位に挙がったJR中央線の八王子駅が、ここでも4位に挙がっている点です。ベスト10のなかでは最も70平方メートル換算価格が安く、お買い得エリアということができそうです。

PER数値が低くなる要因としては、新築価格の低下か、家賃の上昇があげられますが、八王子駅の場合には新築の家賃が、前年に比べて10%以上上がったため、PER数値が小さくなって割安感が高まったようです。

出典:東京カンテイ「2019年 新築マンションPERの概況(首都圏)」

PERを使ってコロナ禍でも有望なエリアを見つける

コロナ禍で、私たちの住まい選びの考え方が変わり、立地の希望についても変化が起こっています。それだけに、資産価値の維持や向上が期待できるエリアも変わってくる可能性があり、新たな指針が求められます。

今回紹介した新築マンションPERはその一つの手がかりになるかもしれません。PERに注目すれば、コロナ禍でも割安感があって、将来性のあるエリアを見つけることができるのではないでしょうか。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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