【空き家問題】田舎の実家を「空き家」放置すると税金が6倍になる場合も⁉ 解消法はある?

親が亡くなった後に実家を引き継ぐ子どもや孫がなく、実家が空き家になってしまうケースが問題となっています。特に、田舎の実家が空き家となってしまうと、管理するのも難しく、空き家のまま放置されてしまうケースもあります。実家を空き家のまま放置しておくとどんな問題があるのか、またその解消法はあるのかを考えてみましょう。

空き家放置で起きる問題

遠く離れている実家は空き家となっても自分の日常生活には特に関わりがなく、ついつい放置しがちですが、近隣の人たちにとっては大問題です。

空き家を放置することで起きる問題には以下のようなものがあります。

・防犯上のリスク
・防災上のリスク
・衛生上のリスク
・周辺風景や景観など周辺環境が悪化するリスク

空き家を風通しないで放置すると、湿気からカビが発生したり、雨水が浸入したりして、家自体が腐食していきます。通水せず排水が詰まれば悪臭や害虫も発生します。時間がたてばたつほど衛生上の問題は深刻になりますし、柱や屋根など構造材の腐食が進めば、家自体が倒壊する危険も出てきます。

また、庭木や草が生い茂れば景観が悪くなるだけでなく、侵入されやすくなり犯罪の温床になったり、ゴミの不法投棄など近隣へのさまざまな被害がニュースにもなったりしています。台風や豪雨などで屋根や壁、塀などが飛んだり崩れたりして他人の物や人を傷つければ、法的な損害賠償の責任を負うことも考えられます。

迷惑空き家は固定資産税が6倍?

こうした背景から、迷惑空き家対策として2015年に「空家対策特別措置法」が施行されました。
この法律により、近隣に大きな迷惑をかけたり、危険と判断された空き家について、自治体が「特定空家等」と認定して、是正を求めることができるようになりました。

もともと、住宅が建っている土地の固定資産税は、土地の評価額(課税標準)が6分の1となる特例があります。しかし、「特定空家等」と認定されると、6分の1の特例が使えなくなり、固定資産税が一気に6倍となってしまいます。さらに、行政からの改善命令に従わないと、助言、指導から始まり、勧告、命令とだんだんと厳しい措置が取られ、最終的には強制執行(行政代執行)で建物が解体され、その費用を請求されることになります。

そうならないためには、定期的に田舎の実家に帰り、窓を開けたり庭木の手入れや草取りなど手間をかけなくてはなりません。もし、遠方でこうした維持管理ができないのであれば、空き家管理を行う会社に毎月換気や清掃、見回りなどを代行してもらうことになります。費用は依頼する内容によりさまざまですが、1回100円の目視での管理から敷地内のゴミ処理や換気や通水など総合的な管理まであります。一般的には月数千円から1万円程度が多いようです。庭木の手入れなどオプションでもっと高額になることもありますが、実家に帰る交通費や時間を考えて依頼する人も増えているようです。

また、空き家でも火災保険への加入は検討しなくてはなりません。古家が火災や災害で被害を受けたときの片づけ費用や建物の一部が飛んで損害賠償責任を負った場合など、万が一にかかる費用を考えなくてはならないためです。管理が行き届いていない空き家は、住宅用の火災保険に加入できない場合もあり、保険料が高くなることもあります。

管理を怠ることで思わぬ費用がかかる場合もあることを覚えておきましょう。

親の死後3年以内売却で3,000万円特別控除

では、こうした空き家問題を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか。

まず、考えたいのは売却です。空き家となった実家を相続後売却した場合、一定の要件を満たすと売却益3,000万円までは税金がかからない「空き家の3,000万円控除」の特例があります。売却価格から購入価格や売買に係る諸費用を差し引いた利益が3,000万円以内であれば税金がかかりません。

しかし、先祖代々の土地など、売買契約書や購入時にかかった仲介手数料等購入のための費用の領収書等が残っておらず、いくらで買ったのかがよくわからないこともあります。この場合は、売却価格の5%を取得費として差し引くことができます。もし、実家の価値が高く5,000万円で売却できた場合、売買契約書がなければ取得費は250万円となってしまい、売却益4,750万円に対する約2割の税金がかかってしまいます。実家の片づけ時には、土地建物購入時の売買契約書や仲介手数料等諸費用の領収書を探してから、不用品の処分をしましょう。

また、「空き家の3,000万円控除」を使うには、相続した家が1981年5月31日以前の建築基準法で建てられた旧耐震の家であることや、相続から売却まで賃貸にしていないこと、相続直前親が1人暮らしまたは老人ホーム等介護施設にいたことなど、さまざまな要件を満たす必要があります。実家が特例の適用となるかどうかは自己判断せずに、税務署や税理士に確認しましょう。

出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

売却できない場合は古民家活用を考えてみる

実家の買い手がつかない、売却できないといった場合は、まずお隣の人や地縁や血縁のある人に声をかけてみることも一つの方法です。それでもなかなか買い手がつかない、といった場合に、自治体やNPO法人との協業で古民家として活用するといった事例も出てきています。

地域活動や交流の拠点、宿泊施設やレストランなど、一定の耐震性を確保して地域の交流に役立てることで、補助金を受けられる自治体もあります。また、クラウドファンディングを活用して資金を集め、カフェやゲストハウスを実現した事例も出てきました。

耐震リフォーム等は行う必要がありますが、思い出のある田舎の実家を地域の人たちや事業として生かせるのは、うれしいことでもあります。実家がある自治体にこうした古民家再生の支援事業がないか調べたり、自分のアイデアで資金を集めて実家を改修することで、故郷への貢献や自分自身の生きがいにつながるかもしれません。

参考サイト:内閣官房 「歴史的資源を活用した観光まちづくり
     国土交通省 「空き家・空き地バンク総合情報ページ

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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