住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。年明け2021年1月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

11月の後半からは、新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、経済正常化が早まるとの期待から日経平均株価は約30年ぶりの高値を記録し、安全資産とされる債券には売りが出ました。

しかし、割安感に注目したリスク回避型の投資家により即座に買いが入り、また新型コロナウイルス感染者が急増したこともあり長期金利は大きく上下しながらも、平均ではおおむね横ばいで推移しています。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

【フラット35】の金利推移を見てみると、11月から12月にかけて、横ばいで推移しています。では2021年1月の【フラット35】金利はどう変動しそうなのか動向を予想します。

バイデン氏勝利で長期金利は上昇傾向

10月1日から12月4日までの日米長期金利の動向をグラフにしました。

日本とアメリカの長期金利推移

データ参考:インベスティングドットコム 日本版

11月の米大統領選挙では、バイデン氏の獲得選挙人数が過半数に達したことで、政治面の不透明感が払しょくされ、リスクオン(株式を買う)の流れから債券を売却する投資家が増え、米長期金利が上がってきています。

その後、米国内で新型コロナウイルスの感染が再拡大して金利を下げたのですが、11月の後半からは、新型コロナウイルスのワクチン開発への期待からNYダウ平均株価はさらに高値を記録し、米長期金利は上昇しています。

これに対して、日本の長期金利はなだらかに横ばいに見えます。そこで同じ期間の日本の長期金利をクローズアップしてみました。

日本の長期金利の推移

11月の上旬までは米国と同じく上がっているように見えます。しかし、その後は上がったり下がったりもありますが、おおむね横ばい、むしろ下がってきているようにも見えます。

一般的な法則として、株価が上がるということは、株式を購入するために債券が売られ、長期金利が下がります。日経平均株価は米国と同じく高騰しているのですが、なぜこのような違いが見られるのでしょうか?

日本の長期金利が上がっていない(横ばいないし下がっている)ということは、日本国債を手放す投資家は少なかったということです。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大から安全資産の日本国債を買う動きも、株式の購入と同じくらいあったということを意味します。

安全資産としての日本国債への需要が根強く、債券価格が下がると即座に買いが入り、債券価格が高く維持されているのです(債券価格が上がると利回りは下がる)。そのため、今後も株価が高止まりしていくとしても、米国のように長期金利は上がらないだろうと予想しています。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の2021年1月金利動向の関係

日経平均株価は約30年ぶりの高値を記録していますが、月中の長期金利はそこまで上がらないだろうと予想しています。機構債の表面利率が発表される頃まで横ばいで推移するという前提に立てば、2021年1月の【フラット35】の金利は2020年12月からおおむね横ばいと予想できます。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表されるタイミングの長期金利の水準を予想することが大事になります。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

過去4ヶ月の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移(筆者作成)

ここ4ヶ月は16日~20日ごろの長期金利(オレンジの折れ線)の高さと、翌月に発表された【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の高さが合致しています。

これは直近4ヶ月の機構債の表面利率が発表される日が16日か21日となっていて、ちょうどその時の長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。9月から12月までの4か月間の長期金利は0.01%~0.04%で推移しており、ちょうど機構債の表面利率が決まるタイミングで0.02%または0.03%となっています。

今月の機構債発表のタイミングに長期金利がどのあたりになるのか予想することは難しいですが、前述の予想どおりにおおむね横ばいで推移していけば、9月から12月の金利をそう変わらない水準で決まりそうです。

まとめ~今の株高と今後の金利動向の考え方

この記事を執筆している時点で、日経平均株価は2万6千円台で高止まりしています。このまま株価が上昇していき、長期金利も上がってしまうかもと考える方もおられると思いますが、その可能性は低いと思っています。

現時点の株高はワクチンへの期待によるものですが、その効果が確実かどうか今月中に明らかになるものではありません。そして日本国債は過去マイナスの利回りでも買われていたのですから、感染者が増えている現段階でプラス利回りの日本国債には根強い需要があります。この仮定が成立するとすれば、機構債の表面利率が決まる20日ごろの長期金利は、前月と同水準で推移するでしょう。

もちろん、イレギュラーな事象によって短期間に高騰する可能性は否定できません。基本的にマーケットの金利動向は、必ずしも普通に生活しているわたし達の感覚と同じとは限らず、取引に参加をする投資家の集団的な感覚で決まることです。それは投資家ひとりひとりにとっても予測困難なものです。

複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておくことをお勧めします。シミュレーションを行うときには現時点の金利だけでなく、保守的に金利が上がったケースで返済継続ができるかを確認しておいてくださいね。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

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