子育て世代が「地方移住」で失敗しないライフプランをFPが解説

2020年5月に内閣官房が発表した、東京圏在住者10,000人を対象とした調査結果によると、約半数が「地方暮らし」に関心を持っていることがわかりました。特に30代、40代の子育て世代の地方移住への関心は高く、新型コロナウイルス感染症の拡大が、若い世代の地方移住を促進する可能性も秘めています。

今回はこのような背景から、子育て世代が地方移住で失敗しないライフプランのポイントを考えてみたいと思います。

地方移住の魅力は?

なんといっても地方移住の魅力は、豊かな自然と、恵まれた住宅の間取りのなかでのびのびと子育てができることでしょう。地価が安ければ、広々とした土地に注文建築も夢ではありません。都心では20坪前後の土地に3階建ての建売住宅でも7,000万円、8,000万円といった価格になりかねないところ、地方では3,000万円以内で30坪以上の土地に、4LDKの家が買える地域もあります。
 
いきなり家を買うのは心配ということであれば、10万円以下の家賃で家族4人が十分に暮らせる賃貸住宅もあり、その街の暮らしを体験してみることも可能です。

また、職場も車通勤で職住接近なら家族との時間も増やせ、ワンオペ育児からも解放されます。人生のなかの大事な一時である子どもの成長を夫婦でゆったりと見守っていくこともできます。子育て世代にとって気になる保育園も、大都市圏より待機児童が少なく入りやすい場合や、認定こども園が充実している自治体もあります。

気になる仕事と住まいは自治体の支援策を知る

前述の内閣官房のアンケート調査では、地方移住で最も気になるのは「仕事」と「住まい」という結果になっています。テレワークが進んで場所を問わずできる仕事は増えたものの、時々は通勤しなくてはならないという場合は、地方では仕事を続けられないこともあります。その場合は移住先で仕事を探さなくてはなりません。

仕事探しにおいては、現在の仕事を辞める前に移住先の仕事を決めておくのが鉄則です。地方での仕事を探す方法としては、たとえば内閣官房・内閣府の地方創生の総合サイト(※1)があります。サイト内に「ふるさと求人」「移住支援金」「起業支援金」についての情報があります。地域の課題に取り組む起業に最大200万円、地域の重要な中小企業等に就業する場合等に単身者で最大60万円の支援金があります。

※1 内閣官房・内閣府地方創生総合サイト ふるさと求人・移住支援金・起業支援金

「住まい」についても自治体の財政支援があると【フラット35】の金利が当初10年間年利0.3%引き下げになる制度(※2)や、今の家を売却しなくても国の基金が設定された移住・住みかえ支援機構のマイホーム借り上げ制度(※3)で安心して自宅を賃貸に出す方法など、さまざまな情報を見ることができます。

ほかにも移住先の自治体のホームページなど、信頼できるサイトで確実な情報を収集しておきましょう。

※2 首相官邸「【フラット35】地域活性化型(地方移住支援)の概要
※3 一般社団法人移住・住みかえ支援機構「マイホーム借り上げ制度

東京と地方の家計費の違い

仕事も決まって今までより収入は少なくなっても、住まいや生活にかかるお金も少なくなるから大丈夫! と安心する前に、移住後の地方ならではの家計変化についても考えておきましょう。

以下の事例では地方移住で世帯の手取り収入が、月35万円から27万円になった場合の家計変化を想定してみました。減るお金と増えるお金を比べてみてください。

一般的に地方暮らしで減る家計費としては、住居費や食費、レジャー費などが挙げられます。食費やレジャー費は家庭のライフスタイルの変化によりますが、住まいが広くなれば週末ごとに出かけなくても、家の近隣で子供と十分に満足して遊べ、その結果外食費やレジャー費が減ることも考えられます。

たとえばご近所の農家さんからお野菜などを分けていただくこともあるかもしれません。ご近所づきあいが回りまわって食費を支えあうというのも、都市部にはない、地方移住で考えられるライフスタイルです。

逆に増える可能性が大きい家計費もあります。一番の出費は車です。大都市暮らしでは必要なかった車も、地方では買い物など日常生活のためには必須です。夫婦とも車通勤なら一家に2台の車が必要です。細かい話ですが、自動車保険も通勤に使うとなると保険料が若干上がります。ガソリン代だけでなく、税金や保険、車検代などを入れた車の予算を考えておく必要があります。また、車は使う頻度が高ければ7~8年に1回は買い替えなくてはならないでしょう。毎月の家計費以外に購入費用を積み立てる必要もあります。

ほかにも、日常の生活費のなかで増える可能性が高いのが光熱費です。自治体によって異なるものの、都市ガスより高いプロパンガスしか選べない場合もあります。地域によっては都市ガス自体が大都市圏に比べて料金が高い地域もあります。自治体によって料金が異なる水道代や電気代とともに、移住前に今の生活といくらくらいの差があるか、移住先で生活している人に聞いておくとよいでしょう。

そして、もう一つ考えておかなくてはいけないのが将来の子どもの教育費です。もし大学に進学する場合は下宿をする可能性が高くなります。大都市圏のように小さいときから高額な塾に通うことは少ないかもしれませんが、その分大学進学に向けた積み立ては必須です。積み立てが難しければ、早めに日本学生支援機構や自治体、大学独自の奨学金制度を調べておき、子どもが自分の好きな道に進めるようにしてあげることも大切です。

地方を楽しむことが移住成功のカギ

若い世代が移住に興味を持つのは、旅行で訪れたことがきっかけ、という人が一番多いそうです。確かに旅行は日常の喧噪から離れて心が解放されますね。

ただ、移住するとなると旅行客のようなお客さまではいられません。その土地に慣れ、人に慣れ、暮らし方に慣れなくてはなりません。たとえば自治会の活動やお祭りのお囃子の練習、学校の運動会も地域中の人が集まり、お弁当を持って飲み食いをする一大イベントという土地柄だってあります。運動会のお昼ご飯は、子どもは教室で、親は家に帰って食べるといった大都市圏の運動会と比べると驚くこともあると思います。

お金のことはもちろんですが、こうした地域の特性を受け入れ、人とのつながりを楽しむことも、地方移住を成功させるポイントです。

参照サイト
内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業報告書
内閣官房・内閣府地方創生総合サイト

 

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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