住宅の4割を占める「鉄骨造」のメリット、デメリットとは? 他と何が違う?

家の購入は、一生に一度あるかないかの大きな買い物。これからずっと付き合っていく家だからこそ、デザインだけではなく家族を守ってくれる構造上の安心感も大切にしたいですよね。その要となるのが、住宅の工法です。住宅の工法にはいくつかの種類があります。鉄骨造もその一つ。今回は、鉄骨造について詳しく見ていきましょう。

鉄骨造とは?

鉄骨造とは、鉄骨を使い、柱や梁などの建物の骨組みを構成する工法のことをいいます。鉄骨造は「S造」とも呼ばれていて、これは鉄で造られた鋼(Steel)が語源となっています。日本では昔ながらの木を使った住宅も根強い人気がありますが、最近では鉄を使った頑丈な住まいにも注目が集まるようになりました。建物には鉄を使った工法がいくつかありますが、そのなかでも鉄骨造は用途が幅広いのが特徴です。戸建て住宅のみならず、より強度が求められるアパートやマンション、ビルなどにも使用されています。工場や倉庫など、大きな規模の建物にも採用されているため、信頼のおける工法だといえるでしょう。

鉄骨造以外の工法

住宅展示場やCMなどで、「鉄骨造」や「木造」などさまざまな工法を聞いたことがある人も多いはず。ほとんどの人が、鉄か木かで迷うと思いますが、実は種類はそれだけではありません。住宅に使われる工法には、鉄骨造以外にどんなものがあるのか、ご紹介します。

木造(W造)

木造の住宅

日本の伝統的な工法である木造は、その名のとおり木材が構造を担っている工法です。木の温もりを感じられ、自由度が高いのが特徴です。

鉄筋コンクリート造(RC造)

鉄筋コンクリート造の建物

鉄筋で組んだ枠組みにコンクリートを流し込み、柱や梁、床、壁を造る工法になります。約3〜10階建ての中高層ビルやマンションに使われることが多いです。

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

鉄骨鉄筋コンクリート造の大型施設

鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせた工法で、より強度の高い構造体になります。大型施設や超高層ビル、マンションなどに使われます。

それぞれの特徴を表にまとめました。

工法によって使われている材料が異なり、それぞれに特徴があります。家を建てるときには、何を重視するべきか考えながら工法を選びましょう。

軽量鉄骨造と重量鉄骨造

鉄骨造は使う鉄骨によって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分けられます。この線引きは、鉄骨の厚さ。軽量鉄骨造は、6ミリ未満の厚さの鉄骨を使用したものになります。対して、重量鉄骨造は、厚さ6ミリ以上の鉄骨を使ったものです。基本的には、「鉄骨造」というと重量鉄骨造のものを指します。

軽量鉄骨造

軽量鉄骨造の住宅(赤い部分が鉄骨)

軽量鉄骨造は、一般的に「鉄骨軸組工法(ブレース工法)」と呼ばれる、柱や梁をボルトで結合してブレースと呼ばれる筋交い(筋かい)を取り入れる方法が採用されます。地震が起きた際などに、ブレースが力を負担し、柱や梁が破断するのを防ぎます。ただし、ブレースの位置には構造体を支える耐力壁が位置することになるため、間取りの自由度はあまり高くありません。リフォームをするときには、壊すことのできない壁になります。とはいえ、ブレースの位置を工夫することで、空間を広くすることも十分可能なので、間取りを考えるときにはブレースの配置に注意しましょう。軽量鉄骨造は、戸建て住宅やアパートなどに多い工法です。重量鉄骨造ほどコストがかからないので、住宅でも比較的選ばれやすくなっています。

重量鉄骨造

重量鉄骨造のビル

重量鉄骨造で主に用いられるのが「鉄骨ラーメン工法」です。これは、柱や梁を溶接して枠を一体化する構造体になります。ラーメン工法のラーメンはドイツ語で「Rahmen」。額縁を意味する言葉です。枠を一体化することで強度が増すため、軽量鉄骨造のようなブレースは必要ありません。そのため、窓や開口部を自由に造れ、間取りの変更もしやすいという特徴があります。ただし、建物全体で地震による加重に耐えるので、耐え切れなくなった場合は断裂してしまうことがあるので、強い部材を採用することが求められます。強度の高さから、マンションやビルなどの大きな建物に多く見られます。

鉄骨造の法定耐用年数

鉄骨造の法定耐用年数は34年となっていますが、先にもご紹介したとおり、鉄骨造とは基本的には重量鉄骨(6mm以上)のことを指します。実際には、鉄骨の厚さによって法定耐用年数が細かく決められています。厚さが小さいものほど法定耐用年数は短く、厚いものほど法定耐用年数は長くなっています。鉄骨造の住宅を検討する際には、鉄骨の厚さにもぜひ注意を向けてみてください。

鉄骨造のメリット

鉄骨造は木造よりもコストが高いといわれています。それでも多くの住宅に選ばれているのには理由があります。ここでは、住宅を鉄骨造にするメリットを四つご紹介します。

品質が安定している
木造で使われる木材は天然のもので、木の種類や質が構造体に影響を及ぼします。使う木材によって住宅そのものの品質に違いが出てしまうのが難点です。しかし、鉄骨造はプレハブ工法なので品質が安定しています。

プレハブ工法とは、工場で構造体を生産して建築現場で組み立てる方法です。柱や梁、床、壁、屋根トラスなどの構造体を工場で作るので品質が一定に保たれます。そのため、現場の職人の腕によって出来栄えが異なるということもありません。施工ミスなども起こりにくいため、安心して住宅を購入できるのは大きなメリットです。

間取りに自由度がある
間取りの自由度が高いことも鉄骨造の住宅の特徴です。建物の主要部分は頑丈な鉄骨で造られています。そのため、木造住宅と比べて少ない柱や壁で住宅を構成することが可能です。空間を広く使えるので広いリビングなども造りやすくなります。特に重量鉄骨造は、ブレースがないのでさらに間取りの自由度が高くなります。将来、子どもが巣立った後にリフォームで間取りを変えて、夫婦の未来のための住まいをつくってみるのもいいでしょう。

シロアリの害が少ない
木造住宅のリスクの筆頭に挙げられるシロアリ被害。シロアリが木材を食べてしまうことで木が腐り、修復が必要になったり、構造体に影響を与えてしまう可能性があります。そのため、木造住宅にはシロアリ対策が必須になってきます。それに対して、鉄骨造は基本的に金属で造られているので、構造そのものの部材が腐ることやシロアリの被害に悩まされることはほとんどありません。シロアリ被害を気にせず、安心して住み続けられるのも一つのメリットです。

耐震性が高い
鉄骨造の住宅は木造住宅と比べて耐震性が高いのが大きなメリットです。鉄骨造の住宅は、地震が起きると鉄がしなることでエネルギーを吸収する仕組みになっています。さらに、重量鉄骨のように頑丈な部材を使用していれば、構造体が壊れる可能性は非常に低くなります。厚みの大きいものほど強固なので、耐震性を重視する場合は、鉄骨の厚みも確認しましょう。

鉄骨造のデメリット

鉄骨造の住宅にはたくさんのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。デメリットも理解したうえで、鉄骨造にすべきかどうか考えてみましょう。ここでは三つのデメリットをご紹介します。

断熱性が低い
鉄は木材と比べて熱が伝わりやすいという特徴があります。そのため、外気温の影響を受けやすくなります。夏は暑くなりやすく、冬は反対に寒くなりやすいのです。構造体が鉄でできているので、少なからず室内の気温に影響を及ぼします。

また、断熱性の低さがもたらす影響はそれだけではありません。結露の発生です。急激な温度変化によって内部結露が起こる可能性があります。鉄にとって水分はさびの原因となってしまう大敵です。それを防ぐために、断熱施工や防湿施工などが必要となります。

建築コストが高い
ハウスメーカーで比べてみても、木造住宅よりも鉄骨造の住宅のほうが価格は高い傾向にあります。ただ、価格が高いのには理由があります。それは、木材よりも鉄のほうが価格が高く、さらに鉄の市場価格が高騰すればその影響を受けるためです。加えて、鉄骨造の住宅は木造住宅よりも重いため、地盤の強度も必要になります。地盤調査をして、地盤が弱い土地の場合は地盤改良工事をしなければなりません。地盤改良工事の費用を加えると、さらに総額が木造よりも高くなります。

防音性・遮音性が低い
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造に比べて、鉄骨造は防音性・遮音性が低い点もデメリットの一つです。コンクリートには高い防音性があります。鉄骨造は鉄の骨組みで造られているので、コンクリートを使用した外壁の防音性には敵いません。そのため、隣の住宅との距離が近い狭小地に住宅を建てる場合は、鉄筋コンクリート造の住宅も視野に入れてみるといいでしょう。

とはいえ、鉄骨造でも防音性能を上げることが可能です。木造に比べて鉄骨造は強度が高いため、床や壁を厚くすることができます。壁が厚い分、外の音が聞こえにくくなり、防音性や遮音性を高めることができるのです。

まとめ

木造ばかりだった日本の住宅も様変わりし、今や、鉄骨造の住宅は全体の4割強を占め、今後も増える勢いです。今回ご紹介したように、品質の安定や間取りの自由度の高さ、耐震性の高さなど、鉄骨造の住宅にはたくさんのメリットがあります。そして、断熱性・防音性の低さへの対策も必要になります。家族で何を重視するべきか話し合い、メリット、デメリットを踏まえて賢い選択をしましょう。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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