住まいの快適性に大きく関わる「断熱材」の種類と特徴、選び方

現代の住宅のほとんどが高気密・高断熱となっていて、快適な住まいづくりためには、断熱性能について考えることが欠かせません。なかでも、断熱性能の良し悪しを決める「断熱材」選びは大切です。今回は、断熱材の種類や選び方のポイントについてご紹介します。断熱材それぞれの特徴を理解して、最適な断熱材を選びましょう。

住まいの断熱が大切な理由

住宅展示場を訪れたり、住宅情報を検索したりしていると、必ずといっていいほど目にする「高断熱」という言葉。それだけ、多くの住宅メーカーが力を入れている性能だといえます。そもそも高断熱の住宅だとどんなメリットがあるのか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。

断熱とは?

断熱とは、文字通り外気の熱を遮断することです。通常、住宅は窓や壁を通じて外気の熱が室内に伝わったり、逆に室内の熱が外へ出ていき、外気温と同じように冬は寒く、夏は暑くなります。それを防ぐために、最近の住宅では断熱性の高い窓や断熱材を採用することで、住宅の断熱性能を高めているのです。つまり、断熱性能が高ければ高いほど外の寒さや暑さに影響されずに過ごせるということになります。

高断熱住宅のメリット

高断熱住宅の一番のメリットは一年中快適に過ごせることです。外の冷たい空気をシャットダウンするので冬はとても暖かく過ごせます。また、同じように夏の暑さも伝わりにくくなるので、涼しく過ごせて快適です。それにともなって、冷暖房もあまり使わなくなるため冷暖房費を抑えられ、お得になります。

最近では9月になっても猛暑が続くこともあり、室内でも冷房を使った熱中症対策が欠かせません。しかし、高断熱の効果で、夏でも室内が涼しくなりやすい環境であれば、エアコンを使う期間や時間を少なくすることができ、電気代の節約になります。さらに、外に冷気が逃げないので効率よく冷房をきかせることができます。エアコンの使用頻度を減らせれば、省エネルギーにもつながります。

断熱性能が高いと健康にも家にも良い

また、急な温度変化がないことは家族の健康を守ることにもつながります。冬場はとくに、年配の方のヒートショックによる事故が後を断ちません。ヒートショックは急激な「温度変化」によって血圧が変動し、血管や心臓に負担がかかってしまうことが原因です。浴室や脱衣所だけではなく、寒いトイレでもヒートショックが起こるといわれています。そのため、断熱性能に優れた「温度変化」の少ない住宅に住むことは、家族の健康と安心のために必要不可欠な要素でもあるのです。

結露を防ぐ断熱と防湿

室内の温度差は、家族の健康だけではなく、住宅そのものにも悪影響をもたらします。その原因は結露です。住宅内で温度差ができると壁の内部で結露が起こり、カビを発生させ、家を腐らせてしまうのです。これは「内部結露」と呼ばれるものですが、しっかりとした断熱施工と防湿施工で防げます。結露からくる家の構造体の腐食を防ぎ、住宅の耐久性を高めるためにも断熱性の高さは非常に需要なのです。

代表的な8つの断熱材を徹底比較

一年中快適な高断熱の住宅にするには、窓の断熱性を高めることや壁に断熱材を入れることが必要です。その断熱材にはたくさんの種類があり、それぞれに特徴があるのをご存知でしょうか。「とにかく断熱材を入れれば安心」というわけではありません。断熱材の性能によっては付帯工事や弱点を補う必要が出てくる場合があるので、種類ごとの特徴を把握しておく必要があります。

断熱材の強みと注意点について一覧表で見てみます。

断熱材の種類は大きく3つに分類

断熱材は大きく分けて、鉱物系・石油系・自然系の3種類があります。

断熱材の種類 内容
【1】鉱物系の断熱材 ガラスを繊維状にして空気を閉じ込めた断熱材
【2】石油系の断熱材 プラスチックを発泡させてその中に空気やガスを閉じ込めたもの
【3】自然系の断熱材の断熱材 環境に優しい自然素材を利用したものになります。ただ、自然系の断熱材はほかの断熱材に比べて価格が高いという特徴がある

断熱材について考える際は、それぞれの特徴をふまえた上で、住宅に適した断熱材を選択することが大切です。そこで、代表的な断熱材の特徴や性能をご紹介します。

【1】鉱物系の断熱材

・グラスウール

木材の間に敷かれている白いものがグラスウール(画像提供元:リショップナビ)

熔解したガラスを繊維状にし、接着材を吹き付けて成形する断熱剤です。断熱材としては最もポピュラーな種類で、多くの住宅に使われています。

・ロックウール

壁に敷き詰められるロックウール(画像提供元:リショップナビ)

ロックウールは玄武岩や鉄鋼スラグと呼ばれる製鉄時の副産物などを溶かし繊維状にして成形します。グラスウールよりも高価です。

【2】石油系の断熱材

・ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)

隙間なく敷き詰められるビーズ法ポリスチレンフォーム(画像提供元:リショップナビ)

一般的に発泡スチロールと呼ばれるもので、ポリスチレン樹脂に発泡剤や難燃剤を添加してビーズ状にしたものを発泡成形します。価格が安く、施行しやすいため広範囲の施工に適しています。

・押し出し法ポリスチレンフォーム

ビーズ法と同じような材料を使用し、原板を押し出し成形します。シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドをほとんど含まないため、安全性が高い断熱材です。

・硬質ウレタンフォーム

硬質ウレタンフォームを直接吹き付ける工法(画像提供元:リショップナビ)

ポリウレタン樹脂と発泡剤を混ぜて成形する断熱材。比較的価格が高いですが、断熱性能が高く、耐久性に優れています。

・フェノールフォーム

フェノール樹脂と発泡剤、硬化剤を混ぜて成形します。不燃・準不燃材料の認定を受けていて、有毒ガスがほとんどでません。

【3】自然系の断熱材

・セルロースファイバー

セルロースファイバー。これを直接吹き付けて充填する(画像提供元:リショップナビ)

新聞の古紙などを粉砕して綿状に成形します。防火性能や害虫予防の効果もあり、あらゆる場面で使われています。

・ウール(羊毛)

天然の羊毛を断熱材として使用(画像提供元:リショップナビ)

羊毛を原料とマット状かバラした綿のように成形します。調湿性があり、壁内の結露を防ぐことができます。天然素材でできた防虫剤を使っていて、その効果は半永久的です。

断熱材にはそれぞれ大きな性能の違いがあり、価格だけで選んでしまうと後悔してしまうかもしれません。鉱物系・石油系・自然系のくくりだけでも特徴に違いがあり、付帯工事の有無によって価格が高くなる可能性もあります。また、耐久性が高ければ、初期費用が高くても長い目で見るとお得になることも考えられます。種類ごとの特徴を確認したうえで断熱材を選ぶようにしましょう。

断熱材選びのポイント

断熱材を選ぶときに最も重要なのは、断熱性能の良さです。断熱性能が高ければ、その分熱を通しにくく、室内を快適な温度に保つことができます。

その指標となるのが、断熱材の熱伝導率です。熱伝導率とは、熱の伝わりやすさを示す数値のこと。熱は高温から低温へと運ばれます。その伝わりやすさをわかりやすく数値化したものです。この数値が大きければ大きいほど、熱伝導率が高くなり、温度変化が起こりやすい物質ということになります。反対に、数値が小さいものほど熱を通しにくく、断熱性能に優れている物質になります。主な断熱材の熱伝導率をご紹介します。

(※)低炭素建築物認定に係る技術的審査マニュアル(住宅編)を基に作成。ウール(羊毛)のみ財団法人建材試験センターの数値

表を見ると最も熱伝導率が低いのは、フェノールフォールで、このなかでは1番断熱性能が高いといえます。次いで、硬質ウレタンフォーム、押し出し法ポリスチレンフォームです。最も熱伝導率が高いのはセルロースファイバーとなっていますが、決して熱を通しやすいわけではありません。一般的に熱を通しやすいアルミホイルの熱伝導率は、235W/m・kとなっています。さらに、水は0.582W/m・kなので、セルロースファイバーの0.040W/m・kは非常に断熱性が高いといえます。

熱伝導率比較 断熱材の種類 熱伝導率
最も熱伝導率が高い セルロースファイバー 0.040W/m・k
最も熱伝導率が低い フェノールフォール 0.022W/m・k

また、上記「素材別の熱伝導率」画像内の一番右側の「熱伝導率区分」とは何でしょうか。断熱材の性能をやわかりやすくするために、住宅金融支援機構が「格付」をしています。それがこの熱伝導率区分です。Aが一番ランクが低く、Fが一番ランクが高くなります。

熱伝導率区分は断熱材を選ぶとき大きな目安になりますが、選ぶ基準はそれだけではありません。湿気に強いかどうか、燃えにくいかどうか、燃えたときに有毒ガスを発生しないかどうかも重要です。湿気に弱い素材の場合は、防湿工事が必須となります。これらを確認して最適な断熱材を選びましょう。

<断熱材選びのポイント>
・断熱性能が良いかどうか(熱伝導率区分が目安)
・湿気に強いかどうか
・燃えにくいかどうか
・燃えたときに有毒ガスを発生しないかどうか

断熱の施工方法(内断熱と外断熱)

断熱材を選ぶと同時に着目したいのが施工方法です。いくら断熱性能のよい断熱材を選んでも効果を発揮できるように施工できなければ意味がありません。断熱材は隙間なくしっかり敷き詰めることで、初めてその恩恵を受けられます。隙間ばかりだと熱を通りやすくしてしまうのです。しっかりと断熱するには2つの方法があります。

1.「充填断熱工法」

充填断熱とは、柱など構造材の間に断熱材を充填する方法です。主に柱と柱の間などに使われます。比較的安価に施工でき、あらゆる断熱材を使用することができます。いわゆる「内断熱」と呼ばれる工法です。また、柱と柱の間に断熱材を充填するため、壁が厚くならず、狭小住宅でも空間を効果的に活用することができます。

2.「外張り断熱工法」

柱の間に断熱材を充填する内断熱と違い、柱の外に断熱材を張り付ける工法になります。大きな利点として、柱を外側から覆うため、内断熱と違って柱部分からの熱で出入りが少なくなります。その分、外気の影響を受けず、断熱性と同時に機密性も高くなります。気密性が高いということは、建物の内外の温度差が小さくなり、結露も発生しにくいという利点も生まれます。また、外張り断熱のメリットとして、柱の外から躯体を覆うため、構造体の保護にも役立ちます。デメリットとしては、充填断熱工法と比べてコストが高くなることが挙げられます。充填断熱を内断熱と呼ぶのに対し、外張り断熱は「外断熱」と呼ばれています。

 

断熱の施工方法 内容 特徴
充填断熱工法(内断熱) 柱など構造材の間に断熱材を充填する方法 ・比較的安価
・壁が厚くならず、狭小住宅でも空間を効果的に活用できる
外張り断熱工法(外断熱) 柱の外に断熱材を張り付ける方法 ・断熱性と同時に機密性も高い
・結露が発生しにくい
・構造体の保護にも役立つ
・内断熱に比べ高コスト

内断熱にも外断熱にもそれぞれメリット・デメリットがあります。その両方を補う方法が、「付加断熱工法」という施工方法です。簡単にいうと、内断熱と外断熱の両方を施工する方法で、断熱性や気密性に優れています

ただし、両方を施工するためコストが増えてしまうのが難点。また、断熱材の種類によっては外断熱に向いているものや内断熱に向いているものがあるため、断熱材によって適した施工方法を選ぶことも重要です。

まとめ

断熱材はたくさんの種類があるので迷ってしますよね。その特徴や性能のさまざまでそれぞれにメリット・デメリットがあります。比較検討するのは大変ですが、住宅の購入は一生に一度の大きな買い物。断熱材の特徴を知って賢く選びたいものです。注文設計、建売、中古であっても、断熱材は何を使用してどの施工方法を採用しているのか、ぜひメーカーに尋ねてみてください。理想の住まいづくりのために、断熱性にこだわった快適な住宅を検討してみましょう。

【画像提供】リショップナビ

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア