マンションはいま買い時? 様子見? 専門家が分析するコロナ禍の住宅トレンド

首都圏の新築マンション価格は高止まりしたままですが、着実に売れています。中古マンションもコロナ禍前の価格水準を回復し、成約は過去最高を記録するほどです。一戸建ても比較的順調に推移しています。コロナ禍でも、住宅の購入や買い替えを考える人が少なくないわけですが、先行きが見通しにくいなかにもかかわらず、なぜ好調さが続いているのでしょうか。

「買い時ではない」と考える人のほうが多い

まずは、図表1をご覧ください。マンション情報サイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトの調査によると、マイホームの買い時感は低下しています。最新の2020年10月調査では、「買い時である」「やや買い時である」の合計は17.9%に対して、「買い時ではない」「あまり買い時ではない」の合計は35.4%に達しています。買い時ではないと考える人のほうが17.5ポイントも多くなっているのです。

(資料:スタイルアクト「第51回マンション購入に対する意識調査」)



前回、7月の調査に比べると、買い時とする人は2.1ポイント減少し、買い時ではないとする人も3.5ポイント減っています。代わって「どちらともいえない」と判断を留保する人が増えています。

新型コロナウイルス感染症の拡大で景気は後退、収入などに関しても先行きが見通しにくくなっていますから、住宅に関していまは「買い時ではない」と考える人や、判断を留保する人が多いようです。

コロナ禍で逆に購入意欲を高めた人が多い

にもかかわらず、図表2にあるように、コロナ禍でマンションの「購入意欲が増した」「購入意欲がやや増した」とする人の割合が26.3%に達し、「購入意欲は減った」「購入意欲はやや減った」の合計18.8%を7.5ポイントも上回っています。

(資料:スタイルアクト「第51回マンション購入に対する意識調査」)

買い時ではないのに、購入意欲が上昇するという、ねじれ現象が起こっているわけですが、その理由として考えられるのは、コロナ禍によって住まいのあり方が変化しているという点です。在宅勤務が増えて、会社や都心からの時間距離にあまりこだわらなくてよくなった一方で、在宅ワークをするスペースが必要になるなど、現在の住まいの問題点も明らかになってきました。

そのため、価格や賃料の高い都心近くの狭い家に住む必要はない、多少遠くても、安くて広い家のほうがいいのではないか、在宅勤務しやすい住まいに移ったほうがいいのではないか、などと考える人が増えているのです。そうした変化が、新たな住まいを求めるニーズにつながっているのかもしれません。

首都圏新築マンション価格は6,000万円前後で推移

そうした事情もあってか、コロナ禍にもかかわらず、マンションや一戸建ては順調に売れているのです。

首都圏の新築マンションは、図表3のブルーの棒グラフにあるように、20年4月、5月には新規発売戸数が大幅に減少したものの、その後はしだいに回復し、ほぼコロナ禍以前の水準に戻しています。
オレンジの折れ線グラフの価格は、20年9月には若干下がっていますが、それでも6,000万円前後の水準で高止まりした観は拭えません。

(資料:不動産経済研究所「首都圏のマンション市場動向」)



それでいて、その月に発売された物件のうち何%が売れたかを示す月間契約率は、20年9月は73.4%でした。業界では、70%が好不況のボーダーラインといわれますから、コロナ禍にもかかわらず、新築マンション市場は順調に推移しているといっていいでしょう。

近畿圏についても、発売戸数は前年並みを維持する水準で、価格も4,000万円を挟んだ動きになっていて、コロナ前とさほど変わりません。契約率は一時的に50.0%に下がったことがありますが、その後は70%を挟んだ動きが続いています。

 

売り物件不足を嘆く営業担当者が増えている

それ以上に好調なのが、中古市場です。首都圏の中古マンションは、図表4のブルーの棒グラフにあるように、20年4月、5月は一時的に成約件数がダウンしたものの、20年6月以降はほぼ前年並みの水準に戻しています。

(資料:東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」)

このデータは東日本不動産流通機構の調査をもとにしていますが、20年8月の成約件数は、1990年5月の東日本不動産流通機構発足以降では、8月としては過去最高の数値だそうです。

しかも、成約価格はオレンジの折れ線グラフにあるように、20年4月を底にジワジワとした右肩上がりになっています。前年同月比の数値は、20年6月から4ヶ月連続して5%以上の上昇率です。その結果、20年9月の成約価格の平均は3,693万円で、コロナ禍以前の20年1月の3,672万円を上回っているほどです。

こうした傾向から先高感が高まっているためか、売り惜しみが増加、新規登録件数が急減しており、仲介会社の担当者からは、「売り物件が出てこなくて困っている」という悲鳴が聞こえるようになっています。

 

新築一戸建ては新築マンションより2,000万円以上安い

これは、マンションに限りません。一戸建ても売れています。

東日本不動産流通機構によると、首都圏の新築一戸建ては、やはりコロナ禍が深刻化した20年4月、5月には成約件数が激減しましたが、図表5のブルーの棒グラフにあるように、6月以降は4ヶ月連続して前年同月比で二桁台の増加が続いています。コロナ以前の水準を上回っているほどです。

(資料:東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」)



成約価格の平均もオレンジの折れ線グラフにあるように4月、5月にはダウンして、3,200万円台まで落ち込みましたが、6月には3,400万円台を回復し、7月には3,600万円台まで上がりました。9月の成約価格は3,560万円ですが、先にみた新築マンションの平均価格の5,812万円より2,000万円以上安くなっています。この価格面のメリットから、一戸建てに目を向ける人が増えて、成約件数の増加につながっているのではないでしょうか。

 

中古一戸建ても8月には過去最高の成約件数に

中古一戸建ても順調です。やはり東日本不動産流通機構の調査によると、図表6のブルーの棒グラフにあるように、首都圏の中古一戸建ての成約件数は、20年3月から6月までは減少したものの、その後回復、8月には前年同月比で21.8%増加して1,175件を記録しました。

(資料:東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」)



この1,175件という数字は、中古マンションと同様に、東日本不動産流通機構設立以来、8月としての過去最高だったそうです。9月も前年同月比で3.9%の増加でした。

成約価格の平均は、オレンジの折れ線グラフにあるように、一時期3,000万円台を割り込みましたが、20年7月には、3,000万円台を回復、コロナ禍以前の水準に回復しています。

 

マンションや一戸建て価格の微上昇が続くのか

以上のように、コロナ禍で先行きを見通しにくいという課題があるのは事実ですが、それでもコロナ禍ならではの事情から、住宅購入、買い替え意欲が高まった結果、マンション・一戸建て、新築・中古にかかわらず市場は好調に推移しているといっていいでしょう。

いずれウィズコロナからポストコロナ時代に入ったとしても、在宅勤務の定着などによって、こうしたトレンドが当面は続くことになるでしょう。

そう考えると、これからもマイホームの購入や買い替えに動く人が一定数いて、しばらくはマンションや一戸建てが順調に売れ、価格も微上昇が続くことになるのではないでしょうか。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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