住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年11月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

アフターコロナの8月までは0.01ポイントずつ上がってきたフラット35の金利ですが、9月から10月にかけては一気に0.02ポイント下げました。

多くの主要銀行でも9月から10月にかけて住宅ローンの金利を下げました。

米長期金利は米大統領選の最中にトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染し、わずか2日で退院するという一連の流れに端を発して上昇しています。

国内では安倍氏が任期途中で辞任し2021年9月までは菅首相が続投する予定となっていますが、これによる目立った動きはありません。国内に材料が乏しくむしろ米国市場に連動する傾向が強くなっています。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

9月まではコロナ不況下にもかかわらず金利が上がるという、ちょっと異常な流れとなっていたのですが、10月に下がって少し正常化してきたように思います。こうした状況を踏まえて11月の【フラット35】金利動向を予想します。

大統領の新型コロナ報道で米長期金利は上昇傾向

10月1日から直近までの日米長期金利の動向をグラフにしました。

10月2日にトランプ大統領の新型コロナウイルス陽性が明らかとなったことで投資家の間で運用リスクを回避する動きが広がり、安全資産とされる債券が買われました。債券が買われると債券価格は上昇し長期金利は下がるのですが、わずか2日でトランプ大統領が退院したことによって債券に売りが入り、米長期金利は大きく上昇してその後横ばいとなっています。

長期金利は債券価格によって決まります。投資家は今後のマーケットの先を読んで売買を行いますので、潜在リスクに対してはより過敏に反応し、それが顕在化した時点ではすでに価格(金利)に反映されているのです。

同じ期間の日本の長期金利をクローズアップしてみました。

特にトランプ大統領の退院直後から急上昇していますが、米長期金利と同様に、その後は横ばいになっています。冒頭にも書きましたが、最近は国内に取引材料が乏しく、米国の長期金利と連動する傾向が強くなっています。

長期金利の上昇が大統領選中にトランプ大統領のコロナ陽性というタイムリーな事件に端を発した一過性のものであるとすれば、再びそれ以前の水準に戻る可能性があります。

ここ数ヶ月のコロナ不況下では、一時的に長期金利が上がってもその債券の割安感に着目した投資家が再び買いに転じることで債券価格が上がり、利回りが下がるということを繰り返しています。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の11月金利動向の関係

一時的に上昇した長期金利が機構債の表面利率が発表される頃には元の水準にもどるという前提に立てば、11月の【フラット35】の金利もまた、10月からおおむね横ばいとなるでしょう。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組みからすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表される20日ごろのタイミングの長期金利の水準を予想することが大事になります。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

実際に過去の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移

毎月20日ごろの時点の長期金利(オレンジの折れ線)の高さと、翌月に発表された【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の高さが合致しています。

これは20日ごろに発表される機構債の表面利率が、ちょうど20日ごろの長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。7月から10月までの4ヶ月間の長期金利は0.01%~0.04%で推移しており、ちょうど機構債の表面利率が決まるタイミングで0.02%または0.03%となっています。

長期金利が0.02%のときのフラット35買取型は1.3%又は1.31%であり、長期金利が0.03%のときのフラット35買取型は1.32%でした

20日ごろの長期金利がここ最近の最頻値である0.02%となれば、【フラット35】買取型の金利は概ね横ばいとなるでしょう。ただし、もともと取引材料に乏しい中での小幅な動きであるため、20日までの状況変化によっては再び上昇する可能性もあります。

まとめ

最近の長期金利の動向としては国内にこれといった取引材料がなく、主として米国の長期金利の上昇が波及して上がっている状態です。

米国の金利上昇が前述のように一過性のものであるならば、今後何もなければ、再びもとの水準にまで下がっていくのではないかと考えています。

しかしこれはあくまでこの記事の執筆時点で個人が予想していることにすぎません。実際の金利動向はその通りにならない可能性は大いにあり得ます。

大きな変化は、それが市場のルールを変えるようなセンセーショナルなものであればあるほどに、唐突にやってきます。引き続き、日々の金利動向に目を配っておくことをお勧めします。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア

おすすめ記事