「土間のある空間」が見直されている! 現代の活用法や注意点を解説

昔ながらの日本家屋の風景、「土間のある空間」が近年見直されています。利便性とともに、古き良き「和」の雰囲気を楽しめる新しいスペースとして注目される土間。土間の活用方法やメリット、デメリットについて紹介します。

土間の活用方法あれこれ

伝統的な日本家屋の内部空間は、「土間」、「板の間」、「座敷」で構成されています。

土間は家の中にありながら床材を張ることなく、家の外の地面に近い高さです。土間は、古くは農機具を置いたり、農作業をしたり、家畜を飼うスペースとしても使われていました。また、台所と一緒になっており、屋内では最も生活に密着しているスペースでした。

現代の家においても、さまざまな活用方法があります。土間の特長を活かした昔ながらの使い方、現代のライフスタイルに合わせたアレンジの方法や新たな活用方法などを紹介します。

土間の特徴

土間は家の中でありながら土足で歩ける場で、家の外と家の中の中間のような空間です。昔は文字通り地面の土をそのまま露出させた「土の間」でした。昔の土間は、炊事や洗濯、風呂焚きなどの家事全般を行う場であり、農機具や収穫した農作物を保管する場でもありました。また、作業をしたり、家畜などを飼育したりすることもあったため、ある程度の広さが必要でした。

現代の土間は、床をコンクリートやモルタル、タイルなどで仕上げるようになりました。これらの素材は水に強いため、汚れは水洗いすることができます。家の中に使われる床材と違い、固くて傷や破損に強い床材のため、家の中に入れると床を傷つけそうなもの、重量のあるものなどを置いておくこともできます。

活用法1:玄関土間

開放感のある玄関土間

日本では家の中で靴を脱ぐ習慣があります。現代の住宅でも玄関に「小さな土間」を設け、そこで靴を脱いで家に上がるのが一般的です。玄関土間は、靴を脱ぐ場所としてだけではなく、多目的な使い方ができます。

玄関は、人が出入りする場所です。毎日使う自転車やベビーカー、子どもの外遊びの道具やスポーツ用品など、泥汚れなどが気になる物の置き場に適しています。また、それらを玄関内に置くことで、盗難や雨風による汚れも避けられます。

玄関土間から一続きでクローゼットを設えると、靴を収納するだけでなく、コートやアウターの着脱や収納にも便利です。アウトドアグッズやゴルフバッグなどかさばるレジャー用品の収納場所にも良いでしょう。さらに、土間はペットのスペースや、植物を置く場にも使えます。

活用法2:通り土間

通り土間は、家の中を土足のまま通ることができる廊下のような空間です。京都の町家などが有名ですが、利便性が高く、現代の住宅でもライフスタイルに合わせた活用方法があります。京町家をはじめ、昔から通り土間は、玄関から台所の勝手口までをつなぐのが一般的でした。

現代の住宅においても玄関からキッチンまでを通り土間にすることで、食材をキッチンまで一直線に運び入れることができるようになります。ケース買いした水や米などの重い食材を、カートや台車で運ぶことも可能です。さらに、浴室や洗濯スペースを通り土間の動線に組み込むと、洗濯物を外干しする際、靴の履き替えが不要になります。梅雨時や冬場の洗濯物干し場として活用することもできるでしょう。

活用法3:土間キッチン

昔の台所は土間にありました。土間は水に強く、土や石など燃えにくい素材でできているため、水と火を使う台所を設えるにはふさわしい場所でした。現代でも、水や火に強いうえに掃除しやすく、また汚れの跡が残りにくいなどの理由から、キッチン土間を採用するケースが増えています。手軽に料理に使える野菜やハーブをプランターなどで栽培する場所として使用するのも良いでしょう。

活用法4:土間ダイニング、土間リビング

縁側のような土間リビング

ダイニングやリビングを土間にする活用法もあります。土間ダイニングは掃除がしやすく、小さい子どもが食べこぼしをしても気になりません。油はねが気になるホットプレートやフライヤーも気兼ねなく使用できそうです。土間は、掃除がしやすいだけでなく、木の床に比べて傷がつきにくいため、子どもやペットが走り回っても傷みにくいという安心感もあります。家具や家電を置いた跡も残りにくいでしょう

また、リビングを土間にして、庭や玄関とつなぐと、ホームパーティや来客時に靴を脱がずに入ってもらうことができます。庭に面して土間ダイニングを設えると、天気の良い日などは庭と一体化したオープンスペースのように使えて、開放感が味わえます。

活用法5:土間の作業場所・ワークスペース

土間なら汚れを気にせず作業ができる

土間は仕事や趣味の作業場や、ワークスペースとしても幅広く活用できます。土間は外との段差がないため、工具や機材の出し入れがしやすく、コンクリートなどで仕上げていれば機械や作業台を置いて作業がしやすくなります。また、大工仕事や陶芸など、音や振動が気になる作業も、土間であれば家全体への影響が抑えられます。

土間のメリットとは?

近年、土間の良さが見直され、土間を取り入れた暮らしを望む人が増えています。土間ならではのメリットについて紹介します。

汚れが気にならない

土間の一番のメリットは、床にコンクリートやモルタル、タイルなどを使うため、耐水性があり、掃除が容易で汚れをあまり気にすることなく使えることです。現代でも、汚れたり濡れたりした靴でも入れるように、ほとんどの家の玄関が土間になっています。雪深い地方では、土間でコートやマフラーなどの防寒具の雪を払い、そのままかけておくこともできます。玄関だけでなく、キッチンやダイニングも土間であれば水を流してデッキブラシでゴシゴシ擦り洗いができます。油汚れや食べこぼし、色の濃い調味料などをこぼしたとしても、跡に残りにくいので安心です。

夏場は涼しい

土間の床に使うコンクリートやモルタル、タイルなどは木の床に比べて熱伝導率が高く、夏でも涼しく感じられます。また、戸建ての場合は、土の上に作られるので土のひんやり感が伝わります。通り土間にして玄関と勝手口、中庭などにつなげることで、風通しが良くなり、より涼しいスペースになります。

多目的に使える

自転車やベビーカーなどは雨やホコリ、盗難などを避けるためにもできるだけ家の中に置きたいものです。このほか、室内に入れるには抵抗があるものの、外には置きたくないというものは意外に少なくありません。土間はこうしたものの置き場所として最適です。ゴルフバッグをはじめ、子どものクラブ活動の道具やアウトドア用品、ペットの散歩用グッズなども同様です。災害時の避難袋なども玄関土間に置いておくと持ち出しやすくなります。

また、薪ストーブを設置したり、ワークスペースにしたりと多目的に使用できることも土間のメリットです。近所の付き合いや会合、自宅サロンなどを開く際も、居住スペースとは一線を画した土間であれば気軽に通しやすくなります。

土間の注意点とは?

家に土間を取り入れる際は注意点も把握しておく必要があります。

冬場は寒い

土間の床にはコンクリートやタイルなどの熱伝導率が高い素材が使われます。夏はひんやりとして涼しく感じられる反面、冬場は底冷えがし、冷たく感じます。戸建ての場合は、土の上に作られることになるので、土の冷たさがそのまま伝わります。リビングやキッチンを土間にする際、床暖房を設置することで寒さ対策ができます。

また、間仕切りなどで、土間とそのほかの空間を区切って冷気を広げないようにするのも効果的です。寒冷地など寒さが厳しい地域の場合は、何らかの対策を講じることをおすすめします。

動線が分断される

生活動線を考えないと使い勝手が悪いものに

通り土間や土間リビングなど、家の中の一部に土間を設えると、その部分では土足に履き替える必要が生じます。部屋から部屋への移動のたびに靴を脱いだり履いたりするのは億劫なため、使う部屋が限られたり、部屋間への移動が減ったりしがちです。ただし、この問題は、設計段階で適切な動線を考慮することで回避できます。土間を設置する際は、あらかじめ家全体の間取りと生活動線を照らし合わせて、適切な位置に設えると良いでしょう。

段差ができる

戸建ての場合、土間は土の上に作られるため、地面に近い高さになります。しかし、土間以外の床は基礎工事の上に作られるため、土間とそのほかの部屋や廊下との間に高低差が生じます。この高低差は室内に奥行きをもたらし、空間に変化やデザインを生み出す効果を生み出します。

しかし、バリアフリーの観点からはデメリットになります。高低差、段差がある家は、高齢者や身体が不自由な人にとっては住みにくくなります。小さい子どもが落ちてケガをするおそれもあります。また、床材によっては、滑りやすくなることも。濡れるとさらに滑りやすくなるので、タイルなどを床材にする場合は表面が滑りにくいものを選ぶことをおすすめします。

今は段差や滑りやすさが気にならないという住人も、やがては高齢化します。あらかじめバリアフリーへのリフォームを念頭においた設えにしておくと良いでしょう。

まとめ

日本家屋に古くから取り入れられ、生活に密着した空間であった土間。昔の土間は、仕事や生活のための実用的な空間であり、広いスペースが必要でした。現代の住宅における土間は、実用的な空間でありながら、生活にゆとりと潤いを生み出す場になっています。

取り入れ方次第でスタイリッシュな空間に生まれ変わったり、家の中の表情を一変させたりすることも可能です。土間のメリットや注意点を踏まえたうえで、個性的で使い勝手の良い、住みやすい家を手に入れましょう。

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