住宅手当や家賃補助の支給額の相場はどれくらいなのか、何歳までもらうことができるのか、住宅の購入を検討するときにも、住宅手当の有無が大きなポイントとなります。

自分の勤務先・会社からの支給額が、一般的な相場とどれくらい差があるかなど、実態をしっかりと把握しておきたいですね。

また東京都など、自治体が独自で実施している家賃補助・助成制度をご存じでしょうか。新婚世帯や子育て世帯が転居する際に、利用できる制度で、家賃などの負担が軽減できます。

この記事では人事院の調査結果などを2015年と2019年で比較しながら住宅手当の支給状況、実態の解説と、自治体独自の家賃補助・助成制度をご紹介します。

住宅手当とは?

「住宅手当」は従業員の住宅費用を会社が補助するための手当のことをいいます。住居手当や家賃補助とも呼ばれています。

住宅手当は福利厚生のひとつとして考えられており、手当を支給することで社員が働きやすい環境を整えたり、社員の生活をサポートしたりすることが目的です。

この住宅手当はおもに「従業員の賃貸物件の家賃を補助するケース」と、「従業員の住宅ローン支払いを補助するケース」のふたつに分けられます。

どちらも支給条件が細かく決められていることが多く、「雇用形態」や「世帯主であるかどうか」「扶養家族の有無」というような条件を満たした場合に手当を受け取ることができます。

会社によって対応はさまざま

住宅手当の支給は法律上の会社の義務ではないため、住宅手当を支給していない会社も多くあります。また、制度の導入だけでなく廃止も会社が自由に決めることができるため、将来的に住宅手当の制度自体がなくなってしまう可能性もあります。

住宅手当は会社によって支給条件や金額が違うこと、会社の方針変更があった場合は住宅手当がなくなる可能性があるということをしっかりと理解しておきましょう。

住宅手当の支給実態

住宅手当についての調査である人事院の「職種別民間給与実態調査結果の住宅手当支給・非支給状況」の2015年調査結果と2019年調査結果を比較すると、住宅手当の支給は全体で49.3%→52.2%と+2.9%増加しています。近年は福利厚生費を減らして経費を削減しようとする会社が増えているといわれていますが、調査結果からは、住宅手当を支給する会社は多くなっていると読み取れます。

では、どれくらいの会社が住宅手当を支給しているのでしょうか。住宅手当の実態を詳しくみていきましょう。

住宅関連の手当支給は全体の約5割?!

 


人事院の2019年調査結果では、住宅手当が支給されている企業は全体の約5割にとどまっており、約半数の会社では住宅手当が支給されていないことがわかります。

住宅手当を支給している企業の2019年内訳では、500人以上の会社が56.4%、100人以上500人未満の会社は54.9%となっており、規模が大きい会社ほど支給率が高くなっています。
逆に、50人以上100人未満の中小企業では45.6%と低く、規模が小さい会社では住宅手当を支給されにくいことがわかります。

ただ、500人以上の大規模な会社であっても、住宅手当の支給率は6割に達していません。このようなことから、住宅手当をもらえる会社はそれほど多くないと考えることができます。

自宅(持家)に対する支給は減少傾向


住宅手当を「支給している」という回答は全体で微増していましたが、借家・借間と自宅(持ち家)それぞれの調査データをみると双方ともに減少していることがわかります。

借家・借間への支給は、2015年93.2%、2019年92.9%となっており、マイナス0.3%減少しています。また、自宅(持ち家)に対する支給の減少幅は大きく、2015年67.1%に対して2019年58.8%と、マイナス8.3%まで減っています。

全体的に住宅手当を支給する企業が2015年と2019年で微増していても、自宅(持家)に対する住宅手当の支給は減少傾向にあると考えられます。

福利厚生費の中でも住宅関連コストは非常に大きく、約半分を占めるとされています。この大きな費用を少しでも圧縮したいと考える企業が増えていることから、住宅手当の支給実態が変化していく流れは、今後も続いていくと考えられます。

住宅手当はいくらもらっているの?

住宅手当をもらえる会社は約半分ということがわかりましたが、実際の住宅手当の支給額はどれくらいなのでしょうか。

ベースメントアップス株式会社の「住宅手当についての調査」によると、1万円程度の支給が約16.0%ともっとも多く、3万円程度の支給額が15.0%、5万円以上の支給額が15.0%となっています。

国家公務員の場合は「令和元年 人事院勧告」によると「月額16,000円を超える家賃を支払っている場合、最高28,000円まで支給される」と定められています。

このようなことを考え合わせると、1万円から3万円の住宅手当をもらっている人がもっとも多いと考えられるでしょう。

何歳まで住宅手当はもらえる?

住宅手当は何歳までもらえるのかということも、おさえておきたいポイントです。

住宅手当が一定の年齢からもらえなくなるのであれば、そのタイミングで住宅の購入を検討した方が良い場合もあります。

会社員の住宅手当は、支給方法や支給条件は会社によってまちまちのため、「何歳までもらえる」と一律に判断することはできません。自分が働いている会社の支給条件をしっかりと確認しておくことが大切です。

住宅手当の年齢制限がある場合は、ある時期から家賃負担が増えることになります。住宅購入を含めた生活設計をしっかりと考えるためにも、住宅手当の支給額と、何歳までもらえるのかということをしっかりと調べておくようにしましょう。

参考までに、教職員、公務員の支給状況をご説明します。

東京都教育委員会職員の場合は年齢制限があり「35歳まで」です。また、国家公務員に支給される住宅手当の場合は「国家公務員関係法令等一覧」によって「定年まで支給される」と決められています。 地方公務員、地方自治体に勤務される方の家賃補助は、国家公務員の住宅手当・条件をベースに、各自治体ごとに条例で決められ支給されます。

参考:「住居手当の取扱いについて」東京都教育委員会

自治体の家賃補助・助成制度を活用する

住宅手当支給は「住宅手当・住居手当・家賃補助とは」の節でもご説明しましたが、法律上会社の義務ではありません。そのため、企業は住宅手当の制度を廃止することもできます。突然、お勤め先からの家賃補助がなくなったら、家賃負担が家計に大きく響くことになるでしょう。

そんな心配が少なくなる方法として、国や自治体の家賃補助・助成制度をご紹介します。

自治体の家賃補助・助成制度は、各自治体によって補助・助成の条件が異なります。それぞれの地域に定住してもらいやすくなるような制度で、新婚世帯や子育て世帯が主な対象です。

他にも、家賃補助が付いた優良賃貸物件を賃貸する制度もあります。

千代田区の子育て世帯や新婚世帯が対象の家賃補助・助成制度

自治体によって家賃補助・助成制度を受けられる世帯が異なりますが、ここでは、子育て世帯や新婚世帯を対象にした制度をご紹介します。事例として、東京都千代田区の「次世代育成住宅助成」の内容をみてみましょう。

東京都千代田区の「次世代育成住宅助成」は、千代田区独自の住宅助成制度で、目的とする、「子どもの成長等に伴いより広い住宅に住むために区内転居する子育て世帯」や「親世帯との近居のために住み替える新婚世帯・子育て世帯」が主な対象です。

千代田区内で住み替えをする「区内転居助成」と、千代田区内に居住の親がいる新婚世帯・子育て世帯が区内への住み替え、または区内での住み替えをする場合の「親元近居助成」の2つの制度があります。

千代田区「次世代育成住宅助成」の対象世帯

「次世代育成住宅助成」の対象条件は下記になります。

助成制度の対象となる世帯

1. 区内転居助成の対象世帯
 ・区内に引き続き1年以上居住している子育て世帯である。
 ・区内での住み替えをする。

2. 親元近居助成の対象世帯
 ・区内に引き続き5年以上居住する親がいる新婚世帯・子育て世帯である。
 ・区外から区内への住み替え、または区内での住み替えをする。

対象条件にある新婚世帯、子育て世帯は、具体的に下記のような要件が決められています。

助成制度の対象世帯にある新婚世帯、子育て世帯

1.新婚世帯
・申請日現在、婚姻届出日から2年以内の夫婦のみで構成される世帯

2.子育て世帯
・申請日現在、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子が属する世帯

補助金の支給期間は、申請が受理された翌月からはじまり、最長8年間か、末子が18歳に達する年度まで。支給金額は、世帯人数などによって違ってきますが、1年目で2万円から8万円の範囲で、支給されます。

参考:「次世代育成住宅助成」千代田区

自治体の家賃補助・助成制度については、各自治体のホームページで募集中の制度を調べて、条件にあっている制度に応募してください。

家賃補助付の「特定優良賃貸住宅」

家賃補助・助成制度には「特定優良賃貸住宅」という、家賃補助付の賃貸住宅を地方自治体が供給する制度もあります。

都営住宅をはじめ、土地オーナーが地方自治体や国の補助金、住宅金融支援機構などの資金で建てた、良質な賃貸住宅があります。土地オーナーが建てた「特定優良賃貸住宅」は、地方自治体と国から家賃補助されます。

参考:「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」

特定優良賃貸住宅のメリットとデメリット

「特定優良賃貸住宅」には、入居費用を抑えられる、保証人が不要、家賃が安いなどのメリットが挙げられます。デメリットとしては入居条件が厳しいことと、物件によっては住宅設備が古いことが挙げられます。

都営住宅の入居資格

参考までに、東京都住宅公社が供給している都営住宅の入居資格をみてみましょう。

1.申込者が東京都内に継続して3年以上居住していること
2.同居親族がいること
3.入居する世帯が次のいずれかにあてはまること
 ・ひとり親世帯
 ・高齢者世帯
 ・心身障害者世帯
 ・多子世帯
 ・特に所得の低い一般世帯
4.所得が定められた基準内であること
5.住宅に困っていること
6.暴力団員でないこと

基準となる所得は、家族人数ごとに年収の範囲が設定されています。

参考:「令和2年8月 都営住宅 定期募集」東京都住宅供給公社

「特定優良賃貸住宅」は、住宅供給公社や各自治体のホームページで募集状況を確認してください。不動産物件を紹介するWebサイトなどでも募集している物件もあります。

まとめ

住宅手当が支給される会社は約半数しかなく、持ち家に対する住宅手当の支給は、年々減少傾向にあるといえます。また、法律上の義務ではないため、住宅手当が今後なくなるかもしれないというリスクがあることは変わりません。

自治体が各地域への転居、定住を目的に制定した家賃補助・助成制度や特定優良賃貸住宅についてご紹介しました。新婚世帯、子育て世帯の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

「住宅を購入するのか、賃貸住宅でいくのか」という生活設計を立てることは、とても大切です。住宅手当の支給額によって頭金を貯めること、住宅を購入しローンを組みはじめるタイミングなど、さまざまな場合を想定して計画を立てるようにしましょう。

また住宅手当以外にも自治体が各地域に転居、定住を目的にした家賃補助・助成制度や特定優良賃貸住宅を提供している場合もあるため、新婚世帯、子育て世帯の皆さんは、ぜひ参考にしてください。

(最終更新日:2020.11.19)
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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