長らく人口の東京一極集中が続いているため、このままでは地方の活力が乏しくなり、国土のバランスが損なわれ、社会・経済発展の阻害要因になりかねないといわれてきましたが、なかなかそれに歯止めがかかりませんでした。それが、コロナ禍によって奇しくも東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の一都三県を指す)への人口流入にストップがかかりました。なぜなのでしょうか、コロナ禍による一時的な動きにとどまるのでしょうか。あるいは人口構造が変わっていくキッカケになるのでしょうか。

東京圏の人口は2020年まで増加の予測

早くから、人口の東京圏への一極集中是正の必要性が叫ばれてきました。東京圏への人口流入は東京圏の発展につながるにしても、人口密集による弊害も少なくありません。

しかも、東京圏以外の地方の活力が削がれ、国土のバランスのとれた発展を阻害、ひいては日本全体の成長の妨げになりかねません。

そのため、国を挙げた取り組みが進められてきましたが、なかなか成果を挙げるには至りませんでした。

たとえば、国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、南関東(東京圏の一都三県)の人口は2015年の3,613.1万人が、2020年には3,635.2万人に増え、そこをピークに減少に転じますが、それでも2025年は3,623.7万人と微減にとどまります。それに対して、他のエリアの多くは2015年段階からすでに減少に転じています。

その先の2035年~2040年の人口増加率予測をみると、東京圏は-1.9%ですが、北海道は-5.8%、東北が-7.0%などと予測されています。東京圏の人口増加が止まっても、その他の地方の減少率が高くなるので、東京圏の一極集中状態は改善されず、さらに深刻化するとみられているのです。

東京都は2030年まで増加の見通しだった

なかでも、東京都だけでみると、図表1にあるようになんと2030年まで増加するとみられているのです。

(資料:国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018年)推計)』)

2015年の1,351.5万人に対して、2020年は1,373.3万人、2025年が1,384.6万人、2030年は1,388.3万人と増えて、2035年に至ってようやく1,385.2万人とマイナスに転じます。以降も減少が続きますが、それでも2045年でも1,360.7万人と、2015年よりは多い状態が続きます。

それに対して、周辺各県は神奈川県と埼玉県では2025年から、千葉県では2020年から減少が始まると予測されています。

人口でみる限り、東京圏のなかでも、東京都だけが一人勝ちの状態であり、全国的にみれば東京圏への一極集中、東京圏でみれば東京都への一極集中が依然として進むとみられているのです。

いや、そうみられていたのです。

7月に東京圏への転入超過が初のマイナスに

それが、コロナ禍で大きく予測がはずれそうな事態が発生しています。東京圏への人口流入に歯止めがかかったのです。図表2をご覧ください。

(資料:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」)

総務省統計局では毎月、住民基本台帳をもとに、地域間の人口移動に関する統計を発表していますが、それによると、2020年7月の東京圏への転入者数は2万9,103人で、転出者数は3万562人と、転入超過数が-1,459人になりました。1年前の2019年7月は2,275人の転入超過でしたから、たいへんな様変わりです。外国人も対象とすることになった2013年の調査開始以来、東京圏の転入超過数がマイナスになるのは初めてのことだそうです。

もちろん、転入超過数がマイナスになったからといって、即人口の減少につながるわけではありませんが、近年の出生数の減少などを考えると、人口減につながる可能性が高いのではないでしょうか。

それにしても、なぜ、2020年7月から東京圏への人口流入が減少に転じたのでしょうか。最大の要因が新型コロナウイルス感染症拡大の影響にある点は間違いありませんが、東京圏の一都三県の動きをみると、都県によって動きが異なることが分かります。

東京都への転入は5月にはマイナスになっていた!

実は、東京圏でも東京都だけに限ると、2020年5月には転入超過数がマイナスに転じていたのです。月間1,069人のマイナスですが、それでも埼玉県、千葉県、神奈川県がプラスだったので、東京圏全体としてはプラスを維持しました。

(資料:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」)

6月には東京都もプラスに転じたので、東京圏全体の増加が続きましたが、7月には東京都が-2,522人と大幅なマイナスに転じ、合わせて神奈川県もマイナスになったため、東京圏全体でマイナスになってしまいました。

東京都が5月にマイナスになった背景には、大学進学や就職、転勤などで本来なら東京都に転入してくるべき人たちの多くが、新型コロナウイルス感染症の拡大を懸念して一時的に引っ越しを見送ったため、転入が減少したとみられています。その一方で、転勤などで東京都から出ていく人はさほど変わらなかった、あるいはむしろ感染の少ないエリアに出ていこうとする動きが強まって増加、結果的にマイナスに至ったとみられます。

東京圏から大阪圏への人口の流れが始まっている?

それが、緊急事態宣言の解除などによって、2020年6月には一時的に東京都への転入が増えたものの、その後は感染者が再び増加したことを受けて、転出の動きが強まり、2020年7月には大幅な転出超過となり、東京圏全体でも転入超過数がマイナスになったものとみられます。

そんななかで、注目すべきは大阪圏の転入超過数がプラスに転じている点です。図表2の②➂をみると、名古屋圏は、2019年7月は-826人で、2020年7月も-846人と大きな変化はなかったものの、大阪圏は2019年7月が-384人であるのに対して、2020年7月は+137人となっているのです。

この大阪圏の増加は、東京圏からの人口流入の受け皿になっている面があるのでしょうが、コロナ禍の一時的なものだけではなく、2025年の大阪・関西万博やIR(統合型リゾート)計画なども影響しているのではないかとみられます。このところの大阪圏の成長要因となってきたインバウンド需要は一時的にストップしていますが、ポストコロナとなれば、再び増加することは間違いないでしょう。

若い人たちを中心に地方への移住の流れも

関西の潜在的な成長力を評価して、大阪圏へのシフトを強める大手企業もみられるようになってきました。人材派遣大手のパソナグループが兵庫県・淡路島への本社移転計画を公表したのも、そうした流れに沿ったものとみられます。

コロナ禍で在宅勤務が定着した結果、若い人たちを中心に地方への移住の動きが始まっているのも流れに拍車をかけそうです。

内閣府が2020年6月に実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、地方移住への関心について質問項目を設けています。

それによると、図表4にあるように、全体では「関心が高くなった」「関心がやや高くなった」とする割合の合計は15.0%ですが、20歳代では22.1%、30歳代では20.0%と、若い世代ほど関心が高くなっています。

なかでも、東京圏に住む20歳代の若者では27.7%、とりわけ東京都23区に住む20歳代だけに限るとその割合は35.4%に増加します。3人に1人以上が、地方移住への関心を高めているのです。

(資料:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」)

マンションなど住宅価格への影響もあるのか?

こうした地方移住への流れが定着してくれば、いずれはマンションなどの住宅価格への影響が出てくる可能性もあります。

住宅選びに当たっては、在宅勤務の定着で都心への時間距離をさほど気にしなくてもよくなった人たちが増えて、都心の狭い物件よりは、多少遠くても広い物件、なかでもマンションに比べて新型コロナウイルス感染症対策がとりやすい、一戸建ての人気が高まりつつあります。

そうした変化によって住宅に関する需給構造が変化してくれば、当然価格への影響があるでしょうし、それに加えて地方移住の流れが定着すれば、さらなる変化も想定されます。住まい選びに当たっては十分に留意しておきたい点といえるでしょう。

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