ウィズコロナで注目の「宅配ボックス」 今後の新築マンションは全戸に設置する時代に!?

コロナ禍で宅配ボックスの役割が改めて注目されるようになってきました。これまでは、再配達削減による働き方改革やCO2排出量削減効果などが期待されていたのですが、加えてコロナ禍では人との接触を防ぐ効果が評価されるようになってきました。それもあって、大手マンション分譲会社を中心に、全戸に宅配ボックスをつけようとする動きが広がっています。

宅配ボックス設置で再配達は明らかに減少する

電子取引の急増を受けて宅配便の件数が増加していますが、共働きなどによって留守がちの家庭が増加、1回では受け取れず、再配達が増えて、宅配便ドライバーの人手不足やCO2排出量の増加に拍車をかけています。

そのため、マンションには宅配ボックス設置が当たり前になり、一戸建ても玄関脇などに宅配ボックスを設置するケースが増えてきました。


確かに、宅配ボックスにはかなりの効果があります。

(資料:LIXILホームページ)

図表1は、LIXILが2020年2月から3月にかけて、宅配ボックス設置によって再配達を減らすことができるかどうか、社会実験を行った結果を示しています。

それによると、宅配ボックス設置前には再配達率が41.7%だったのが、設置後には14.9%と、3分の1近くに減少しています。それによって、宅配事業者の労働時間が178時間減少し、CO2排出量も大幅に削減できたとしています。

共働き増加などで宅配ボックスも満杯状態に

ただし、問題はマンションの場合には全戸に宅配ボックスが設置されているわけではないという点です。小規模マンションなら宅配ボックスは5個から10個程度で、大規模マンションでも20個、30個などにとどまっています。

これでは、共働きが増えて留守勝ちな家庭が多い中、すぐに宅配ボックスが満杯になって、なかなか再配達を根絶することはできません。

そんななか、2020年3月には新型コロナウイルス感染症が拡大し、4月には緊急事態宣言が発出されることになりました。新型コロナウイルス感染症は人と人との接触によって伝染するため、あらゆる場面で接触機会を減らす必要があります。

そこで、改めて注目されるようになったのが宅配ボックスです。コロナ禍で電子取引の利用が増えて、宅配便が急増していますが、最大の問題はその受け取り。

電子取引によって、店頭での買い物による接触機会をなくすことできても、受け取りで接触機会が発生します。それを防いでくれるのが宅配ボックスです。

コロナ禍で最も利用意向が高まったのは宅配ボックス

三井不動産レジデンシャルでは、ウィズコロナのニューノーマル時代に、どんなサービスなどが求められるのかを調査していますが、その結果、マンションの共用部や設備面における利用意向については、図表2のような結果になりました。

(資料:三井不動産「ニューノーマル時代に求められる暮らしのサービスニーズ調査」)

最も利用意向が高かったのは、「宅配ボックス」で、「利用意向は非常に高まった」「利用意向はやや高まった」の合計は56.7%に達しています。2位以下の「共用部Wi-Fi」「スタディルーム」などに大きく水を開けています。

人との接触機会を減らし、新型コロナウイルス感染症の伝染のリスクを小さくしてくれる決め手として、宅配ボックスが改めて注目されるようになっているといっていいでしょう。

しかし、実はもともと、宅配ボックスへのニーズが強いことはマンションの分譲会社も認識していて、その強化に取り組み始めていたのです。

大京では2017年には全戸に宅配ボックス設置

最も早かったのは、ライオンズマンションの大京です。宅配ボックスメーカーのフルタイムシステムと共同で開発を進め、各戸宅配ボックス「ライオンズマイボックス」を開発、東京都足立区で2017年に分譲を開始した「ライオンズ東綾瀬公園グランフォート」で、初めて導入しました。

資料:株式会社大京

最大の特徴は、メールボックスとの一体化によって、郵便と宅配便を一緒に受け取れるようにした点です。写真にあるように、メールボックスの下に宅配ボックスを設けています。スペースに余裕がある限り、ひとつのボックスに宅配便を複数入れることも可能です。

「ライオンズ東綾瀬公園グランフォート」は2018年3月に竣工しましたが、現在ではライオンズマンションだけではなく、大京グループである穴吹工務店のサーパスマンションシリーズでの導入も始まっています。さらに,既存物件のリニューアル工事を提案し、全戸宅配ボックスがあるマンションの拡充を進めています。

参考:次世代の住戸専用宅配ボックスとは?

三菱地所レジデンスは住戸の玄関前に設置

大京に続いて、三菱地所レジデンスは2018年9月から分譲を始めた「ザ・パークハウス文京千石一丁目」で、玄関前に宅配ボックスを設置しました。マンションのエントランスではなく、各住戸の玄関前への宅配ボックスの設置は業界初のことでした。

写真にあるような大きなサイズで、ゴルフバックなども収納可能で、マンションエントランスまで荷物を取りに下りる必要がないのは大きなメリットです。宅配ボックスに預けられた水などの重いものを自分の部屋まで持ち運ぶ必要がなくなります。

また、同じ住戸への届けものであれば、指定業者が何度も扉を開けて荷物の追加が可能です。
もちろん、コロナ禍では人の接触機会を最大限抑制できるので安心感があります。

 

三井不動産レジデンシャルでも玄関横に設置

先に触れたように、三井不動産レジデンシャルの調査では、コロナ禍で一番利用意向が高まったのが宅配ボックスでした。それを受けて、三井不動産レジデンシャルでも、全戸宅配ボックスの設置に動き始めています。

2020年11月下旬から販売予定の「パークホームズ市ヶ谷ヒルトップレジデンス」では、全戸玄関前宅配ボックスの設置を行います。大きなサイズなので、トランクルームとしての利用も可能で、宅配ボックスとしての役割はもちろんのこと、クリーニングの集配、ウォターサーバーの宅配、靴磨き集配など様々な用途に活用できるのがポイントです。

資料:三菱地所レジデンス『「各住戸玄関前宅配ボックス」を利用した集合住宅における新しい宅配システム』

このようにますます便利になる宅配ボックスですが、当面の課題としては生鮮食品、冷凍食品の取り扱いでしょう。電子取引では、冷凍食品などの販売も増えており、それを宅配ボックスで受け取れるようになれば、いっそう宅配ボックスの役割が高まり、一段と設置や利用が高まる可能性があります。

生鮮食品専用の宅配ボックスの実験も始まる

その生鮮食品にいち早く取り組み始めているのが三井不動産レジデンシャルです。「パークホームズ豊洲ザ レジデンス」においては、クックパッドが運営する生鮮食品電子取引の「クックパッドマート」専用の宅配ボックスを設置し、2019年10月から運用を始めています。

生鮮食品を1品から送料無料で購入できる仕組みで、宅配ボックスから好きな時間に受け取れます。マンションではわが国初の導入で、外部の人が取り出せないようにセキュリティ機能を付加し、安全性を高めているそうです。

三井不動産レジデンシャルでは、冷蔵の宅配ボックスや食配ステーションを設けた新築分譲マンションの商品企画を進める一方、既存マンションにも設置できるようにサービスの検討を進めています。

宅配ボックス設置部分を容積率の対象外に

このような、宅配ボックスの重要性の高まりを受けて、国土交通省では2017年に、宅配ボックス設置部分の面積を容積率規則から除外していいことを、自治体などの担当部門に通知しています。

(資料:国土交通省ホームページ)

図版にあるように、宅配ボックスのある共用廊下の面積を容積率から除外できるようになったので、分譲会社としては、宅配ボックスを格段に設置しやすくなりまた。
これによって、宅配ボックスを格段に設置しやすくなり、個数が増えたり、また大きくなったりして、使い勝手が格段に向上する可能性があります。

しかも、先に触れたように、ウィズコロナ時代では、非接触の決め手になる宅配ボックスへの期待は一段と大きくなりそうですから、注目しておきたいところです。

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