大手住宅メーカーを中心とする業界団体の住宅生産団体連合会(住団連)が、2021年度予算概算要求、税制改正に向けての要望を公表しています。19年10月の消費税引上げと、20年に入っての新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、住宅業界は深刻な打撃を受けており、そこから立ち直り、日本経済を再生させるためにも、「かつてない規模・内容の施策」が不可欠であるとして、最大200万円相当のポイント制度の創設などを要望しています。

9月末の政府予算概算要求、税制改正要望に向けて

例年8月末に翌年度の政府予算への各省庁の概算要求・税制改正要望案がまとめられますが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、9月末に延期されています。

ここで、各省庁の概算要求・税制改正案に採用されれば、12月中旬の与党の予算案、税制改正大綱に盛り込まれ、3月末の国会で予算、税制改正が成立し、4月から実行という流れになります。その出発点として、9月末の概算要求・税制改正案に採用されるかどうかはたいへん重要な意味を持ちます。
その9月末に向けて、住宅生産団体連合会(住団連)では例年にない大規模な予算、税制改正に対する要望を提出しています。

現在の厳しい局面を打開するためには、「かつてない規模・内容の施策」が必要として、大胆な施策を求めています。その主な項目は次の通りです。

・住団連が求める6つの対策
1.(仮称)新しい生活様式ポイント制度の創設
2.住宅ローン減税の拡充
3.ZEH補助制度の拡充
4.住宅取得資金等に係る贈与税非課税枠の拡大
5.中小事業者の経営力強化に対する支援の拡充
6.行政手続きのオンライン化・ワンストップ化の徹底

目玉は最大200万円相当のポイント制度の創設

目玉は、最大200万円相当のポイントが付与される「(仮称)新しい生活様式ポイント制度の創設」です。ウィズコロナ時代の「新しい生活様式」に対応した住宅の取得、リフォームなどにポイントを付与するというものです。

これまでも、景気刺激のために何度か住宅に関するポイント制度が実施されましたが、その額は最大30万ポイント、50万ポイント程度でしたから、今回の要望はそれをはるかに上回るものになっています。消費者としても、これが実施されれば、住宅取得などに向けての大きなインセンティブになるはずです。

ここまで大胆な要望を行うには、理由があります。

図1にあるように、住宅業界は未曾有の厳しい局面にさらされています。

図1:消費税8%、10%への引き上げ時の受注状況の比較(住宅生産団体連合会資料より)

前回、2014年4月から消費税が8%に引き上げられたときには、注文住宅は契約から引き渡しまで一定期間がかかるため、増税の半年前までに契約すれば、増税前の税率が適用されるという経過措置が実施され、実質的に5%で取得できるのは半年前の2013年9月まででした。ですから、9月までは駆け込み需要で受注が増加し、10月から反動減が発生しましたが、そこから1年後の2014年10月には、反動減で落ち込んだ2013年10月が比較対象になるため、前年に比べて、グリーンの折れ線グラフでも分かるようにV字回復しました。

それに対して、2019年10月から消費税10%への引き上げ時には、経過措置によって8%が適用されたのは半年前の2019年3月まででした。ですから、2019年4月から反動減が発生、本来ならその1年後の2020年4月にはV字カーブで回復しなければならないのが、実際にはオレンジの折れ線グラフにあるように、多少回復してはいるものの、依然として水面下に沈んだままになっています。これを水面上に引き上げるためには、思い切った施策が必要ということです。

波及効果の大きい住宅投資拡大が日本経済回復に

しかも、住宅投資は図2にあるように、経済的な波及効果が大きいことで知られています。木材や鉄骨、鉄筋、セメントなどの建設資材から、ガラス、住宅設備機器、家電製品、物流までその裾野は広く、年間16.4万戸の住宅建設は5兆5,000億円の生産誘発効果をもたらし、52.3万人の雇用を生み出します。

図2:住宅建設16.4万戸の経済効果(住宅生産団体連合会資料より)

新型コロナウイルス感染症で国境がほぼ閉ざされた状態で、輸出や輸入にはあまり期待できず、インバウンド需要は当面ゼロに近い状態が続くでしょう。そうなると、内需の柱である住宅投資の役割が極めて大きくなります。

住団連が、「かつてない規模・内容の施策」を求めるのも理由がないことではありません。国も、財政規律に目をつぶっても新型コロナウイルス感染症の抑え込み、経済再生が不可欠という不退転の決意で臨んでいますから、「かつてない規模・内容の施策」の実現性も現実味がないわけではないでしょう。

オーストラリアでは400万円から450万円の補助

7月から8月にかけて、住団連ではこの要望を持って、国会議員の間を回ってきました。住団連の専務理事・副会長の小田広昭氏は、そのときの感触についてこう語っています。
「最大200万ポイントというと、非現実的と笑われるかと思いましたが、実際には200万ポイントという数字にギョッとされる先生はいらっしゃいませんでした。むしろ『それぐらい必要だよね』と強い危機感を持っていらっしゃる先生方が大半で、『外需に依存できないいま、やはり住宅投資が柱だよね』と上々の感触でした」

その際、小田氏としてはオーストラリアの施策を例に挙げているそうです。連邦政府が200万円の補助金を出し、それに州政府の施策が加わり、州によっては400万円から450万円の補助金になり、住宅投資が動き始めているそうです。

日本でも、この「(仮称)新しい生活様式ポイント制度」が創設され、住宅ローン減税制度が拡充されれば、オーストラリアに匹敵するような補助制度になります。

貸家も対象で即時交換も可能な制度を目指す

住団連が要望している制度では、1戸当たりのポイントの上限が200万ポイントで、即時交換や電子ポイント、商品券に交換できる仕組みを想定しています。

特に、影響が大きいと期待されるのが即時交換。これは、消費者がウィズコロナ時代に対応する設備などを追加注文する場合、それに関するポイントを住宅メーカー、販売会社などが消費者に代わって直接受け取れる制度です。消費者は実質的な負担なしで設備などを追加できますし、住宅メーカーなどにとっては売上高の拡大につながるので、積極的に活用し、消費者への働きかけも活発になり、住宅投資の活性化につながる効果が期待できます。

また、持ち家だけではなく貸家、賃貸住宅も対象としている点にも注目です。このところ、空家率の上昇、賃料低下や、業者とオーナーのトラブルの増加、銀行の融資縮小などで、賃貸住宅市場は縮小が続いています。それに歯止めをかけ、市場の活性化につながるのではないかと期待されます。賃貸住宅での不動産投資を考えている人にとっては目を離せない動きです。

住宅ローン控除は控除期間「13年超」を要望

そのほか、住宅ローン減税制度については、現在の控除期間10年を「13年超」とすることを求めています。周知のように、19年10月の消費税引き上げにあわせて、暫定的に控除期間は13年に延長されていますが、それを暫定措置ではなく、当面の間継続すると同時に、できれば15年程度に延長することを希望しています。

かつて、バブル崩壊後には、最長15年、最大587.5万円のローン減税が実施されたことがあります。そこまで、できればかなりの刺激策になるはずです。

さらに、現在は最大1,500万円の「住宅取得資金等に係る贈与税非課税枠の拡大」も要望しています。最大3,000万円まで引き上げ、それを恒久制度として継続するように希望しています。図3にあるように、両親や祖父母からの贈与があると、購入価格が高くなることが明確です。

図3:贈与額と購入価格の関係(住宅生産団体連合会資料より)

贈与なしだと購入価格の平均は3,759万円ですが、3,000万円~5,000万円の贈与があれば、購入価格は4,561万円に、5,000万円以上の贈与があれば5,912万円に上がります。それだけ住宅業界の売上高が増加し、経済的な波及効果も大きくなると期待できます。

1月からの実施に向けて準備を始めてもいいかも

以上のような要望が実現すれば、予算の執行、税制改正は21年4月からになりますが、これまでの実績をみると、1月に遡って適用されるのがふつうです。つまり、来年1月から、最大200万円相当のポイント制度、13年超のローン減税、贈与税の3,000万円の非課税枠などが実施される可能性があるわけです。

現段階ではその実現性のほどは予断を許しませんが、予算や税制の動向などをにらみながら、マイホームの取得に向けて準備を始めてもいいかもしれません。

参考資料:住宅生産団体連合会 新型コロナウイルス感染症の住宅業界への影響と
景気の早期回復に向けた経済対策要望について

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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