中古マンションは築30年超が狙い目? 築年数が経った物件の見極めポイント

中古マンションを探すとき、物件数の多さ、価格の安さなど購入のしやすさからすれば、築30年超が狙い目ですが、築年数が経つほど建物の老朽化が進み、管理面での影響が出ている物件もあります。今回は「築年数」という要素を中心に様々な視点から解説します。中古マンションを検討される方々が物件を見極める参考になればと思います。

築30年超なら首都圏でも1,000万円台で手に入る

中古マンションは、いうまでもなく建築後の経過年数が長くなるほど価格は安くなります。公益財団法人の東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏の中古マンションの築0~5年の成約価格の平均は5,619万円。民間調査機関の不動産経済研究所の調査では、2019年の首都圏新築マンションの平均価格は5,980万円ですから、築浅物件の価格は新築価格とほとんど変わりがないほどに高いことが分かります。

それが、図表1にあるように、築年数が長くなるほど成約価格は低下し、築16~20年で4,000万円を切り、築21~25年で3,000万円を割り込み、築26~30年では1,000万円台まで下がります。築31年超~も1,000万円台ですから、築30年前後から築30年超が価格的には一番の狙い目になります。

参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」

築深マンションは価格交渉などの余地が大きい

図表1には、成約価格とともに築年帯別の新規登録時の価格もグラフ化しています。築6年~築15年までは、成約価格と新規登録価格にはほとんど差がないか、むしろ成約価格のほうが高くなっています。つまり、この築年数帯のマンションであれば、かなり強気の値付けでもそのまま売れる可能性が高いわけで、住宅購入を検討している人からすれば値引き交渉などの余地が小さいことになります。

しかし、築16年を超えると新規登録価格が成約価格より10%前後高くなっています。築年数が長くなると、新規登録価格では売れないことが多いと推察され、住宅購入を検討している人からすれば条件によって指し値交渉が可能になりそうです。特に、築31年~については20%以上の差があるので、買い手有利の環境で交渉できるのではないでしょうか。

築年数の長いマンションはお客が付きにくい

中古マンションの売りやすさを示す指標のひとつとして、「新規登録成約率」というものがあります。これは、新規に仲介市場に登録された物件のうち、何%が成約するかを示す数字です。

首都圏の実績は図表2のようになっています。

参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)

2019年の中古マンション市場で最も新規登録成約率が高かったのは、築6~10年の31.9%で、次いで築11~15年の26.1%、築16~20年の25.8%でした。築21~25年になると新規登録成約率は20%を切り、築26~30年は13.5%、築31年~は12.6%という結果でした。

築6~10年の築浅物件だと、3件に1件近くは成約するのが、築年数が31年以上になると、成約するのは8物件に1つ程度に減ってしまいます。なかなか売れずに市場に滞留し、大幅に値下げするか、いったん取り下げて、値引きして再登録などしないと、簡単には売れない現実を想像させます。

築31年超が新規売り出し物件の4割近くを占めている

この数字は値引き交渉の余地が大きいことを意味します。しかも、築31年超の物件は仲介市場における物件数が多く、家を探す人にとっては候補が豊富といえそうです。

図表3は、首都圏の中古マンションの築年帯別のシェアを示しています。

参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)

新規登録においては、築31年~の割合は39.8%とほぼ4割に達しています。それに対して、実際に成約した物件の構成をみると、築31年~のシェアは26.6%にとどまっています。多くの物件が売りに出されている割には成約する物件は少なく、住宅を購入しようとする人は、多数の物件の中から、ジックリと腰を据えて探すことができます。

反対に、築年数の浅い物件は人気が高く、あまり時間をかけていると、希望の物件に売れてしまうことが多いのですが、築年数の長い物件ならその心配はさほどありません。

築年数が長くなるほど物件の見極めが大切に

ここまで築深物件の良いところを様々な視点から説明してきましたが、検討にあたっては注意も必要です。なぜその価格なのかを確認し、それでも自分たちの条件からみれば問題はないと、納得した上で購入しなければなりません。

建築後の経過年数が長くなれば、まず建物の老朽化が気になります。外観や設備など目に見えるものだけではなく、耐震性など見えない部分のチェックが欠かせません。この点は、素人ではなかなか判断できませんから、最近増加しているインスペクション(建物状況調査)を利用して、専門家に検査してもらうのが安心です。依頼先によって数万円から10万円ほどかかることがありますが、何千万円の買い物ですから、決して高くはないでしょう。

同時に、本人も可能な範囲で物件を見て回って、建物を見る目を養っておきましょう。外見上の傷み具合、修繕工事の実施状況、共用部分の維持管理状況などは、何件も見比べてみれば、ある程度判断できるようになるものです。

目には見えない管理状況もデータを確認する

「マンションは管理で買え」といわれるほど、マンションにとっては管理がキチンと機能しているかどうかが重要なポイント。特に、築年数が長いほど、管理力が問われます。

管理業務は大きくは、(1)管理組合の運営、(2)管理組合の会計、(3)建物の維持管理状況の三つからなります。(3)の建物維持管理状況については、先に触れたように実際に物件を何件か見て回れば、善し悪しを比較検討できるようになります。たとえば、ゴミ置き場や駐輪場などがキチンと清掃されているか、自転車が整然と並んでいるかなどを見てください。

問題は、外部からは見えにくい(1)(2)に関する部分です。築年数の長いマンションだと、賃貸化が進んだり、空室が増えて、相続などの結果、所有者が分からなくなったりするケースもあります。図表4にあるように、築年数の長いマンションほど空室率が高く、管理不全に陥っている可能性があります。

参考:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」

管理組合が機能しなくなっているマンションも

築年数の長いマンションだと、所有者の高齢化が進み、空室が増えたり、管理費や修繕積立金の滞納が多くなったりします。図表5でも分かるように、築年数の長い物件ほど、滞納している住戸があるマンションの割合が高まります。

参考:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」

と同時に、人件費や工事費などの高騰によって、管理費、大規模修繕の工事費などは年々高くなっているのですが、所有者の高齢化が進んで、年金暮らしの所有者が増加、管理費や修繕積立金の増額決議が行えなくなっているマンションも少なくありません。

そのため、より低料金で管理を請け負ってくれる管理会社へのリプレース(管理会社変更)を実施する管理組合が多いのですが、管理会社にとっても採算が悪化して、リプレースに応じる会社が減少し、場合によっては管理委託の契約を解消する動きすら出ています。

そうなると、いよいよ管理不全に陥って、管理業務が行き届かなくなり、住む上での不都合が生じると同時に、資産価値の低下にもつながるケースが増えます。

まとめ

見てきたように、中古マンションは、築30年超の築深物件ほど価格が安く、たくさんの物件の中から、より有利な条件で取得できる可能性が高いのですが、その分、建物や管理面でのリスクが小さくありません。

物件選択を失敗しないためには、何件も物件を見て回るなど、中古マンションを見極める目を養うようにしていただきたいところです。

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