【フラット35】2020年8月の金利はどうなる? 長期化するコロナ禍

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年8月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

感染第2波への不安がくすぶる中で経済活動が再開されて2ヶ月がたちました。長期金利の指標となる10年国債の利回りは経済回復への期待から一時的に上昇したものの再び下がり、横ばいで推移しています。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

しかし一方で各国の経済活動が再開されたことにより、投資家心理が上向いたことで比較的安全な資産とされる債券には売りが出て、債券価格が下がり長期金利は上昇しています。長期化が見込まれるコロナ禍で8月の【フラット35】金利はどうなっていくのか、わかりやすく解説します。

コロナ前よりも景気が悪いのに少し割高で横ばいの長期金利

コロナショックから直近までの長期金利(日本の10年国債利回り)と日経平均株価の推移をグラフにしました。コロナショックで大きく乱高下していますが、結果としてコロナ後の金利の水準はコロナ前と同じくらいで推移しています。

2月までのコロナショック前は日経平均株価の青い折れ線に対して長期金利のオレンジの折れ線は約0.1%下で推移していました。

そして3月は「コロナショック」で日経平均株価の青い折れ線の下落とは逆方向に長期金利が急上昇しました。ここでいう住宅ローンのコロナショックとは投資家のリスク回避が行きすぎて安全資産まで売って現金化しようとする動きから、債券価格が下って長期金利が上がる現象をいいます。

5月末あたりから経済活動が徐々に開始されコロナショックが沈静化した後は、日経平均株価の青いグラフと長期金利のオレンジグラフが同じレベルで推移し今に至ります。

投資家の意識の中にはコロナショックの後遺症が残っていて、まだ債券を安全資産として購入する気になっていないということだと、私は分析しています。そのため、この不況下においても債券価格が上がらず、金利は下がりきらないのです。

日銀は7月のオペ計画で国債の1回あたり購入予定額を増やしましたが、新型コロナウイルス関連の緊急経済対策のための赤字国債の増発と比べれば小幅な増加であったため、市場関係者の間では日銀はある程度の金利上昇は容認しているという観方が強くなっています。

今の長期金利はコロナ前と変わらない水準ですが、景気は確実にコロナ前よりも悪くなっているのですから、コロナ前と比べると少し割高な金利になっていると思います。そして国債増発は金利上昇要素ですが、一方で感染第2波への懸念が根強くありますので両者が相殺され、もみ合いが続いて長期金利は横ばいで推移していくのではないかと予想しています。

8月の【フラット35】金利予想の前提は?

8月の【フラット35】金利を予想するにあたって、7月20日ごろまでの長期金利の動向を予想しています。

【フラット35】金利は毎月の20日ごろに住宅金融支援機構が発表する機構債の表面利率によって決まります。金利を予想する前提としてこの機構債の表面利率とは何かを理解しておく必要があります。

住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関なのですが、融資を申し込む窓口については、民間の銀行が代行して行う形をとっています。そして、住宅ローンとして借りるお金は、住宅金融支援機構が金融市場から調達して貸しているのです。

典型的な例として「買取型」という【フラット35】のスキームを図にすると以下のようになります。

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅金融支援機構が民間金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入するため、その表面利率は国の発行する10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。

実際の長期金利の推移と【フラット35】金利

コロナショック前後の長期金利と【フラット35】金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移

 

【フラット35】の金利は毎月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まるため、ちょうど20日ごろの長期金利の影響を強く受けます。なので、機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利がどのくらいの水準になるかが予想のポイントになります。

コロナショックの乱高下はありながら、コロナショック直後の4月から7月の【フラット35】の金利はおおむね1.3%前後で推移しています。

ちょうど機構債の表面利率が発表されるタイミングの長期金利が0%から0.02%であったということもありますが、今後の長期金利が横ばいで推移するならば、【フラット35】の金利もこのあたりで推移するということになります。

まとめ

この記事では執筆時点(7月上旬)に入手可能な公開情報を基礎として予想を立てていますので、その後の状況の変化によって金利動向が変化することは十分にあり得ます。

また最近では東京での感染者数が連日200人を超えており感染第2波に対する懸念は日に日に大きくなっています。市場の想定を超えるリスクが意識された場合に金利がどのように動くのか? その予想は極めて困難です。

ある程度複数の金利タイプで審査を出しておき、想定外の事態に対する保険としてください。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

(最終更新日:2020.11.17)
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